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コンデンサに流れるリップル電流について

レンテックインサイト編集部

コンデンサの寿命に影響する要素の一つにリップル電流があります。本記事ではコンデンサに流れるリップル電流についての概要と、測定方法についてご紹介します。リップル電流が規定値を超えた状態で使用を続けると故障の要因になるため、製品の評価時には確認すべきポイントです。

リップル電流とは何か

電源回路の電圧変動を安定化させる目的で、電源とGND(グランド)間にコンデンサを入れることがあります。特に容量が必要になる場合はアルミ電解コンデンサを用いることが多いでしょう。電圧変動時にはコンデンサの充放電が発生しますが、このとき流れる電流をリップル電流またはリプル電流と呼びます。リップル電流が流れるとコンデンサが持つ抵抗成分により熱が生じます。

リップル電流がコンデンサの許容値を超えた状態で使用すると、絶縁破壊による電極間のショート故障や、電解液のドライアップによるオープン故障が発生するリスクがあります。リップル電流の許容値は主に実効値で定義されていますが、リップル電流に起因する自己発熱温度が定義されている場合もあり、いずれも限度値以下に抑えなければなりません。なお温度については、自己発熱と周囲温度を合計した値が使用温度範囲内に収まっている必要があります。

リップル電流が発生しやすい回路は、AC100Vなどの交流電圧をDC24Vなどの直流電圧に変換するスイッチング電源です。交流を直流に変換する際にスイッチング用の半導体を高速でオンオフさせるため、その際に電圧変動が発生しリップル電流が現れます。同様にモーターを動かすインバータ回路も、スイッチング素子を高速でオンオフさせることからリップル電流が発生します。

リップル電流実効値の測定

計測方法の一つとしてあるのが、オシロスコープと電流プローブを用いてコンデンサに流れるリップル電流を測定し、実効値を算出する方法です。一度コンデンサを基板から取り外し、電流プローブを挟めるようジャンパー線で基板に接続します。基板を搭載した機器を実際の動作条件で動かしながら、電流測定を行います。

コンデンサのESR(直流抵抗成分)は周波数特性を持ち、電流の周波数に応じて抵抗値が変わるため、コンデンサで発生する熱量も変化します。そのためコンデンサのデータシートに記載されている許容リップル電流は、特定の周波数に換算した値として定義されています。また実際のところ、電源回路のスイッチング素子などの影響で、測定するリップル電流は複数の周波数成分を持つことがあります。

そのため測定した電流波形は、オシロスコープのFFT解析機能を用いて特定の周波数に換算し、データシートの規定値と比較する必要があります。測定したリップル電流の周波数成分が複雑だと、上記の換算処理で誤差が生じやすいことが難点です。

リップル電流に起因する上昇温度の測定

二つ目の計測方法としては、リップル電流が問題となる原因のコンデンサの上昇温度からリップル電流を算出することもできます。
リップル電流に起因する発熱温度の上昇値にもメーカー規定値があれば、電流値と温度の両方の基準を満たしていることを確認するのが確実といえます。

温度測定の際には、実際に使用されるのと同じ条件になるように、基板を機器に組み込んで規定の動作条件で動かしながら測定を行います。温度測定では熱電対をコンデンサのケースに貼り付ける方法がおすすめです。熱電類であればスペースの狭い場所でもピンポイントに温度が測定できます。

このとき注意すべきは、リップル電流に起因する温度上昇のみを測定することです。基板上にあるFETなどのスイッチング素子やCPUは発熱源となりますし、基板外にもモーターなどの発熱源があるかもしれません。断熱材を使用するなど、コンデンサ以外から発生する熱の影響を受けないような測定環境を構築する必要があります。

リップル電流による発熱が故障の原因になる

コンデンサの充放電時に流れるリップル電流はコンデンサの自己発熱を引き起こし、ショート故障やオープン故障を引き起こす要因となります。特にスイッチング電源やインバータ回路など、スイッチング素子が高速でオンオフする回路ではリップル電流が発生しやすいです。コンデンサに流れるリップル電流の実効値や、リップル電流に起因する温度上昇がメーカー規定値の範囲内であることを確認しておく必要があります。

本記事では、リップル電流を直接測って周波数換算する方法、故障の要因となる温度を直接測定する方法をご紹介しました。どちらの方法にも測定時に困難となる点があるため注意が必要です。所持している測定器や測定対象の機器に応じて、どちらの方法が測定しやすいか検討すると良いでしょう。

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