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元素の種類が分かるエックス線元素分析器

レンテックインサイト編集部

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本記事では、エックス線元素分析器を使用する上で必要な、エックス線元素分析器の仕組みや測定方法、使用時に気を付ける点などについて解説します。

ヘリウムよりも重い元素に高エネルギーのエックス線を照射すると、光電効果により元素特有のエネルギーを持つ特性エックス線が放出されます。この特性エックス線のエネルギーを調べることで、測定対象にどのような元素が含まれているかを知ることができます。エックス線元素分析器は元素分析や組成分析を行うことができ、研究開発のみではなく、現場作業でも重宝されています。

エックス線を用いるとなぜ元素が分かる?

試料にエックス線を照射すると元素が分かる理由は、エックス線照射に伴い試料から特性エックス線と呼ばれる元素特有のエックス線が出るためです。この特性エックス線のエネルギーもしくは波長を調べることで試料を構成する元素が特定できます。このような測定器は蛍光X線分析器(XRF)と呼ばれています。蛍光とは物質が吸収した電磁波をより小さなエネルギーを持つ電磁波として放出することを言います。

特性エックス線が放出される理由は、エックス線照射に伴い試料中の原子の内殻電子が電子軌道から弾き飛ばされることでできた空孔に外殻電子が遷移する際に、軌道間のエネルギー差が電磁波として放出されるためです。照射する電磁波のエネルギーが小さいと電子は軌道から弾き飛ばされることはなく励起されるにとどまりますので紫外線や可視光が蛍光として放出されますが、エネルギーが大きいエックス線を照射すると電子が弾き飛ばされるために放出される蛍光もエックス線になります。このとき試料中の原子から放出されるエックス線は元素固有のエックス線波長となります。

特性エックス線を放出させるためには、入射エックス線のエネルギーは特性エックス線よりも大きくなければなりません。また、水素とヘリウムのように特性エックス線を放出しない元素は測定できない、という特徴もあります。エックス線を出す元素でも、リチウムや炭素など原子番号がマグネシウムよりも小さな元素は特性エックス線の強度が弱く、検出は可能ですが正確な測定は難しいので軽元素の定量測定は苦手としています。

エックス線元素分析器の概要

エックス線元素分析器は測定したい試料にエックス線を照射し、光電効果により試料を構成する元素が放出する特性エックス線を検出器で検出し、元素の種類や組成比を調べます。

この測定で用いられるエックス線は、陰極から空間へと放出された電子を電界により加速することで運動エネルギーを与え、この高エネルギーの電子を陽極となる金属に衝突させることにより発生させます。陽極に使用されるエックス線発生源の金属はロジウムやモリブデンなどがありますが、例えばロジウムを測定したい場合は試料に入射するエックス線の中にロジウムの特性エックス線が含まれているために、測定対象がロジウムの場合のエックス線発生源はロジウムではなく、別の金属を選択する必要があります。

試料から放出された特性エックス線は検出器で検出され、スペクトルとして出力されます。このとき、試料に含まれる元素のピークが表示されますが、ソフトウエアにより自動的にピークが解析されて元素特定がなされるとともに、元素ごとのピーク強度とエネルギーを比較することで元素の定量分析も自動的に行われ、試料を構成する元素の組成比も合わせて知ることができます。

エックス線元素分析器の特徴や気を付けること

試料から放出された特性エックス線は検出器で検出されますが、検出システムにはエネルギー分散型と波長分散型の2種類があります。エネルギー分散型はシリコン単結晶にリチウムをドーピングした半導体素子でエックス線のエネルギーを計測します。一方の波長分散型は特性エックス線を分光結晶で結晶回折を行うことで分光し、波長ごとに測定します。

エネルギー分散型と波長分散型にはそれぞれ長所と短所があり、装置導入段階でどちらの検出システムを選択するか検討する必要があります。

エネルギー分散型は素子に入射されたエックス線のエネルギーを測定するため、検出システムが小型化でき、一度の測定で多元素を同時測定できるため短時間での測定が可能になります。一方の波長分散型は分光結晶で回折するため検出システムが大型化され、一度の測定で一つの元素しか測定できないため測定時間が長くなります。しかし、波長分散型はエネルギー分散型と比較して分解能が一桁近く高いため、精密な分析が可能です。また、測定下限濃度も低く、100ppmという微量な不純物でも測定可能になるため厳密性が求められる研究分野では波長分散型が好まれる場合が多いです。

エックス線元素分析器を用いると試料の組成分析が可能ですが、一方で結合状態など化学的な構造は分析できません。特に水素が検出できないため、例えば炭化水素を測定すると炭素しか検出されないことになり、構造解析には向いていません。

また、エックス線は透過力が強いので、物質をよく透過します。このため、試料が薄いと試料を貫通して試料を乗せているステージにまで到達してしまい、ステージの元素が検出される場合もあります。ステージにはアルミニウムがよく使用されているので、アルミニウムが検出された場合には注意が必要です。

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なお、近年では技術の進歩により、持ち運び可能なハンディタイプのエックス線元素分析器が販売されているので、現場で副生成物や配管の詰まりなどを確認しながら仕事ができるようになっています。

構成元素を特定しながら行う研究開発

エックス線元素分析器を使うことで元素の特定が可能になるため、「恐らくこの原料から作られているからこの元素が含まれているだろう」といった推測がなくなります。また、不純物も高精度でわかるので不良の原因などを特定しやすく、特にハンディタイプを使用すると作業現場でも手軽に元素分析が可能になるので、使いこなせると仕事の幅が広がります。

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