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膜厚測定器の種類と測れる膜厚

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 膜厚測定器の種類と測れる膜厚

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本記事では膜厚測定器の種類について解説します。

物の厚さを測る測定器にはさまざまな種類があります。身近な測定器では定規やノギス、マイクロメーターなどが思い浮かびます。しかし、これらの馴染みのある測定器を用いて測定できる膜厚は10ミクロン程度が限界です。これよりもさらに薄い膜厚を測定するためには専用の膜厚測定器が必要となります。この膜厚測定器は大きく分けて非接触式と接触式に分かれており、用途に合わせて使い分けられます。

さまざまな膜厚測定

産業界で使用される膜には、膜厚も多様である上に、金属など光を反射する膜や数ナノメートルの原子層数層からなる膜までさまざまな種類があるため、それぞれの膜に最適な膜厚測定器により膜厚測定が行われています。

厚い膜になるとノギスやマイクロメーターなどでも測定可能ですが、数ミクロンの膜厚になると精度の高いマイクロメーターでも測定できなくなります。また、厚い膜でも母材の表面に成膜された膜の場合はマイクロメーターやノギスでは挟めないので測定できません。さらに、この表面に成膜された膜全体の均一性を測定したい場合には手動での測定は非常に困難であるため、膜厚の面内分布を機械的に測定する必要があります。

膜厚測定器には大きく分けて非接触式と接触式があります。非接触式はプローブなどを用いず、物理的に試料に触れずに測定します。この測定の際には主に光が用いられます。非接触式は膜を剥がさず、さらには破壊させずに膜厚を測定できるために非常に便利ですが、光を反射する素材には使用できない場合が多いです。また、表面に凹凸があっても光が当たる領域で膜厚は平均化されてしまいますので、表面の粗さの程度は分かっても形状までは分からない測定器もあります。

一方の接触式は電気や音波、プローブによる物理的な接触で厚さを測定します。このため、プローブが試料に接触して試料を破壊したり、真空引きや前処理が必要であったりします。しかし、光学式が苦手な金属膜の厚さを測定できたり表面の凹凸の形状を測定できたりするため、非接触式では測定が難しい膜の測定に重宝されます。

非接触光学式測定法

非接触光学式の膜厚測定は光が干渉する性質を利用します。光が膜中に侵入し、界面で反射するとその光学的距離によって強め合ったり弱め合ったりします。この時、膜中の干渉を起こす波長とその時の屈折率が分かれば膜厚が計算できます。

特に円偏光を用いた分光エリプソメーターは1ナノメートル以下でも感度を持ち、精度良い測定が可能なため広く用いられている膜厚測定器です。

分光エリプソメーターは高精度な膜厚測定器ですが、光が当たった領域の膜厚を平均化してしまうので、表面形状までは分かりません。一方で、白色光干渉法は光が当たった部分の干渉縞の形状を測定できるために、膜厚のみではなく干渉縞に応じた表面形状も測定できます。膜厚が数百ナノメートル以下と薄く、表面粗さが小さい場合は分光エリプソメトリー測定法が選ばれる場合が多いですが、表面粗さが重要な指標である場合には白色光干渉計が使用されます。

一方で、光は金属など自由電子が多いと表面で反射されて内部に侵入せず、干渉光を作りにくくなるため厚くなるにつれて精度が下がります。しかし、膜厚が数十ナノメートル程度だと金属内部に光が侵入できるため、この膜厚以下であれば分光エリプソメーターでも膜厚測定が可能になります。また、測定により得られたスペクトルはソフトウエアで自動的にフィッティングされて、膜厚などのデータが得られます。

接触式測定法

接触式測定法は光を使用せず、プローブを膜に直接触れて測定するために測定精度は光学式に劣りますが、表面の形状や光を反射しやすい金属でも測定可能です。

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代表的な接触式膜厚測定器はAFM (原子間力顕微鏡)や段差計で、試料表面をプローブでなぞることで段差や表面形状を測定します。測定はプローブを直線的に移動させるので、線上の結果が得られますが、面内を等間隔で測定することで表面形状の面内分布が得られます。しかし、膜厚を測定する際には下地と膜の段差を測定する必要があるため、段差がない場合には測定できません。

金属の膜厚測定には電気を流し、発生する渦電流を測定する渦電流式膜厚計が用いられます。磁性体の膜厚測定には磁石を近づけて磁束密度の変化を観測する電磁式膜厚計などが用いられます。これらの測定で気を付けなければならない点は下地の素材です。渦電流式膜厚計の場合は下地が絶縁体でないと下地にまで電流が流れてしまい、同様に電磁式膜厚計の場合は下地が磁性体の場合は正確な値が得られません。

一方、非接触式測定法は数ナノメートルから数十ミクロン程度までの膜厚測定が可能ですが、プローブなどが接触することで膜を傷つけてしまうため、柔らかい膜の測定には不向きである上に、光学式に比べて分解能は劣ります。

膜の種類と厚み、表面状態に応じた測定器の選択が重要

非接触式は膜を壊さずに測定できますが光を反射しやすい膜や厚い膜の測定には不向きであり、接触式は膜厚だけではなく表面の形状まで測定できますが柔らかい膜や薄い膜の測定には不向きです。どの膜厚測定も一長一短があり、正確な膜厚を測定するためには膜厚や膜の種類、表面状態、下地の素材に応じて適切な膜厚計を選択する必要があるため、膜厚測定を検討している場合は参考にしてください。

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