本記事では、SoCとSiPがそれぞれどういったものかをご紹介した上で、両者の違いや使い分ける方法を整理して解説します。
半導体チップでは、SoCとSiPの二つの方式がよく比較されます。これらは状況に応じて使い分けられているため、両者の違いを正しく理解しておかなくてはなりません。
SoCは「System on a chip」の略称であり、一つの半導体チップの中に必要とされるすべての機能を集約したものです。例えば、スマートフォン向けのSoCの場合は次のような機能が集約されています。
SoCのような方式は最初から存在していたわけではありません。当初は機能ごとにバラバラになっており、プリント基板上で組み合わせることによって電子機器の制御システムを作っていました。その後、半導体製造技術の急速な進歩に伴って多くの機能が一つの半導体チップ内に取り込まれるようになり、現在に至ります。
SoCの主なメリットとしては、次の3点が挙げられます。
SiPは「System in Package」の略称であり、一つのパッケージ内に必要とされるすべての機能を集約したものです。SoCでは一つの半導体チップ内に機能を集約しますが、SiPでは機能が異なる複数の半導体チップを一つのパッケージ内にまとめて、電子機器の制御システムを構築します。
もともとSiPは、SoCを補完するものとして開発されました。しかし、SiPにはSoCにはない多くのメリットがあり、使用される事例が増えています。SiPの主なメリットとしては、次の2点が挙げられます。
SoCもSiPも、さまざまな機能を一つに集約するという点は共通しています。では、実際の現場では両者をどのように使い分けているのでしょうか。
SoCが採用される例としては、量産品で1個当たりの製造コストを重視する場合が挙げられます。SoCのメリットとして紹介した通り、SoCは部品点数が少ないので製造コストを削減できます。開発期間や開発コストを十分に確保でき、多くの需要が見込めるのであれば、トータルで安くなるSoCを採用するのが得策です。
一方、SiPが採用される例としては、開発期間や開発コストを十分に確保できない場合が挙げられます。SiPはSoCに比べて短期間で開発できるので、激しく変化する市場ニーズに追従していきたいのであれば、SiPの方が適しているといえます。ただし、製造コスト面を見るとSoCには劣る可能性が高いです。
SoCとSiPはどちらが優れているというものではなく、状況に応じて使い分けられています。SiPのパッケージ内にSoCを採用するなど、両者を組み合わせるケースも多いです。
今後はSoCでもSiPでもない新たな方式が生まれる可能性もありますが、しばらくの間はこの二つをうまく使い分けていくことになるでしょう。
本記事でご紹介した通り、SoCとSiPはそれぞれ設計思想が異なり、双方にメリット・デメリットがあります。SoCとSiPの違いを正しく理解した上で、適切に使い分けることが重要です。
スマートフォンなどのスペック表では、SoCやSiPの表記を見ることがあります。どちらが使われているのかに注目してみるのも面白いでしょう。