本記事では、半導体製造装置の種類と主要メーカーについてご紹介します。
半導体工場では、さまざまな半導体製造装置が稼働しています。どのような装置が稼働しているのか、そして、どのメーカーのシェアが高いのかを知っておくと、半導体市場への理解が深まるでしょう。
一般社団法人日本半導体装置協会は、半導体製造装置を7つの大分類と35の小分類に分けた「半導体製造装置分類表」| 一般社団法人日本半導体装置協会 2012年1月31日作成)を公表しています。
このように、多くの半導体製造装置が半導体製造プロセスの一端を担っています。μmやnm単位の極めて微細な加工が施される半導体を人の手で製造するのは困難であり、専用の装置が必要不可欠であることがよく分かるのではないでしょうか。
半導体製造装置には最先端のテクノロジーが詰め込まれており、半導体の製造を通じて私たちの暮らしを支えてくれています。
半導体製造装置は日本メーカーの存在感が強い領域であり、世界トップクラスのシェアを持つ企業も少なくありません。半導体自体の製造ではアメリカ・中国・韓国・台湾などに遅れを取ってしまった日本ですが、半導体製造装置や半導体材料に関しては、高い技術力などを生かして上位に食い込んでいる状況です。
ここでは、代表的な半導体製造装置をいくつかピックアップし、用途や主要なメーカーをご紹介します。
コータ・デベロッパは、ウエハーへの感光剤(フォトレジスト)の塗布と現像を行う装置です。コータでは、ウエハーを回転させながら感光剤を均一に塗布します。感光剤の塗布されたウエハーに回路パターンを描いたマスクを合わせて露光装置にかけると、回路パターンが転写されます。その後、デベロッパで現像液をウエハーにかけると、回路パターンが形成されるという流れです。
コータ・デベロッパの市場では、日本メーカーの東京エレクトロンが90%近いシェアを握っています。残りの数%のシェアは同じく日本メーカーのSCREENホールディングスと韓国メーカーのSEMESが握っており、東京エレクトロンの独占状態となっています。
半導体の製造工程ではウエハーに対してさまざまな熱処理を行いますが、そこで熱処理装置が活躍しています。熱処理を行う目的の一つが、ドーピング後の活性化です。ウエハーは純度の高いシリコンが材料ですが、半導体として使用するためには不純物を注入するドーピングを行って結晶構造を変化させる必要があります。ドーピングによって壊れたシリコンの結晶構造を回復させて半導体として正しく動作させるためには、熱処理装置による高精度な温度管理が不可欠です。
熱処理装置の市場では、日本メーカーの東京エレクトロンとKOKUSAI ELECTRICがシェアをほぼ二分しており、この2社で約93%を占めています。残りわずかなシェアをオランダのメーカーであるASMIなどが握っており、日本メーカーの存在感が強い状況です。
洗浄装置は、材料の表面に付着している不要なものを取り除き、材料表面を清浄な状態に保つための装置です。μmレベルの小さなゴミや金属原子、薬液、油脂、自然酸化膜などを洗浄で取り除きます。ウエハーに異物が付着したまま加工を行うと半導体チップの性能や品質に大きな影響を与えてしまうため、半導体製造プロセスの随所で洗浄が行われています。
洗浄装置は、ウエハーを一枚ずつ洗浄する「枝葉式洗浄装置」と、多数のウエハーをまとめて洗浄する「バッチ式洗浄装置」の2種類に分けられます。その両方で高いシェアを握っているのが、日本メーカーのSCREENホールディングスです。同社は枝葉式洗浄装置では約40%、バッチ式洗浄装置では約70%のシェアを握っています。また、東京エレクトロンもそれぞれ20%前後のシェアを握っており、ほかのメーカーとしてはアメリカのLam Researchや韓国のSEMESの名前が挙げられます。
ダイシング装置は、ウエハー上に形成された電子回路を一つ一つ切り出してチップ化する装置です。現在は一枚のウエハーで数百個から数千個もの半導体チップが同時に作られているため、それらを狂いなく切断できるように高い加工精度が求められます。ダイシング装置は、切断にダイヤモンドブレードなどの砥石を利用する「ダイシングソー」と、レーザーを利用する「レーザーソー」の2種類に大きく分けられます。
ダイシング装置の市場では、日本メーカーのディスコが70%~80%と高いシェアを握っています。同社はダイシング装置だけでなくウエハーを薄く削る研削装置や表面を磨く研磨装置でも高いシェアを握っており、「切る」「削る」「磨く」の三つの領域で強い存在感を放っています。
極めて微細な加工が施され、高い生産能力も求められる半導体製造プロセスは自動化が基本となっており、半導体製造装置が活躍しています。半導体製造装置の技術革新によって、昨今のIT社会が実現したといえるでしょう。
半導体市場の中で、半導体製造装置は半導体材料と並んで日本メーカーの存在感が強い領域でもあります。今後も注目していきながら、日本メーカーの躍進を期待したいところです。