信頼性試験は、製品開発を行う上で重要なプロセスの一つです。設計者や品質管理担当者だけでなく、ものづくりに関わる人であれば、信頼性試験についての最低限の知識を持っておくのがよいでしょう。
そこで本記事では、製品開発に欠かせない信頼性試験について解説します。
信頼性試験は、開発した製品が要求品質を満たしているかを確認する試験です。ここでの信頼性という言葉は、JIS Z 8115において「アイテムが与えられた条件の下で、与えられた期間、要求機能を遂行できる能力」と定義されています。具体的には、性能・耐久性・安全性・故障率などを基に製品の信頼性が評価されます。
信頼性試験を行う目的は、主に次の二つです。
信頼性試験は、設計時・量産試作時・量産開始後のタイミングでよく実施されています。その中でも、設計時の信頼性試験は後工程に大きく影響するため、極めて重要です。
設計時には、試作品に対して信頼性試験を実施することになります。信頼性試験によって要求品質を満たしていないことが発覚すれば、その結果を解析して原因を追求し、設計の見直しを行わなくてはなりません。設計・試作・信頼性試験のサイクルを正しく回すことで、信頼性が保証された高品質な製品を開発できます。
信頼性試験の実施内容は、試験の目的や要求品質、製品の特性に応じて異なります。試験方法・試験時間・サンプル数・ストレスのかけ方・評価基準などを都度検討し、立案した試験計画に沿って実施しなければなりません。
また、一口に信頼性試験といってもさまざまな種類があります。信頼性試験にも当然ながらコストがかかるので、適切な試験を選択し、最小限の手間とコストから十分な評価結果を得られるように意識すべきです。
ここでは、信頼性試験の種類を4つに分け、各試験の概要や実施する際のポイントを簡単にご紹介します。
環境試験は、製品を実際に使用する環境を擬似的に再現する試験です。製品を輸送したり、保管したりする環境を再現することもあります。
製品は周辺環境からさまざまなストレスを受けます。なるべく実際の使用環境に近い条件を想定し、その環境下におけるストレスの影響を調査することで、製品の信頼性を評価します。環境試験においては、温度・湿度・気圧・水圧・振動・ノイズといった各種環境を再現できる専用の試験装置を使用することになります。
環境試験は、環境を単独で再現するだけでなく、複合的に再現することも視野に入れなくてはなりません。例えば、電子部品の環境試験では温度と湿度を組み合わせた温湿度試験がよく実施されており、熱膨張・熱収縮によるクラックの発生や吸湿による脆化などを評価できます。
寿命試験は、あえて過酷な条件で試験を行うことで、短期間のうちに製品の寿命を確認したり、故障の起こりやすい箇所や欠陥を見つけたりすることが可能です。高温・高電圧といった厳しい環境下で製品を動作させ、故障するまでの時間や故障箇所を分析することで、通常の使用環境下で故障する可能性を予測します。
寿命試験の条件が厳しすぎると、実際の使用環境とは違う原因で製品が故障する可能性があります。また、その条件をクリアするために余計な設計工数や製造コストがかかってしまったり、過剰品質になったりする恐れもあります。反対に、条件が緩すぎると顧客の使用方法によっては思わぬ事故を引き起こす恐れがあるので、いかに適切な試験条件を設定するかがポイントです。
安全性試験は、顧客が製品を安全に使用できるかを確認する試験です。製品の使用中にどのような事故が発生しうるかを事前に想定し、それらの事故を防げる設計になっているかを確認していきます。
例えば、電子機器の場合は感電や火傷などの危険に配慮したり、もし故障しても火災などの被害が拡大したりしないように設計をしなければなりません。電子機器の安全性試験では、漏れ電流の測定や温度上昇試験などを行って安全性を評価しています。
上述した寿命試験と同様に、安全性試験においても適切な試験条件の設定がポイントになります。過剰品質にならないようにしつつ、顧客に危険が及ばない十分な安全性を担保するように意識しなければなりません。
非破壊試験は、製品を壊したり傷つけたりせずに品質を評価する試験です。放射線透過・超音波探傷・過電流探傷などの試験方法があり、製品のキズや劣化状況、材料の組成などを調べられます。
非破壊試験のメリットは試験後の製品をそのまま使えることであり、貴重な試作品などを失うことなく信頼性を評価できます。また、同じ試作品を流用して複数の試験を行える点もメリットです。
非破壊試験の多くは得意領域が決まっており、その範囲外の評価は実施できないケースが多いです。例えば、上述した過電流探傷は電流を扱うため、導体の製品のみが対象になります。それぞれの試験方法の仕組みや特徴を理解した上で、最適な方法を選びましょう。
昨今では、顧客の求める品質水準が高まっており、信頼性試験が今まで以上に重視されています。信頼性試験についての正しい知識を改めて身につけ、自社製品の品質向上を目指していくことがより求められています。