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別売の差動プローブでより良い波形測定

レンテックインサイト編集部

オシロスコープにはチャンネル分のプローブ(10:1パッシブ・プローブ)が付属します。
しかし製品カタログには、付属品以外のさまざまなオプションのプローブが記載されています。
高電圧プローブや電流プローブは付属のプローブとは測定対象が異なるので分かりますが、アクティブ・プローブ、特に差動プローブについては活用イメージが分かりづらいと思います。
差動信号を観測するのでなければ、差動プローブは必要ないのでしょうか?実は差動プローブは多くの点でメリットがある優れたプローブです。
本記事ではそれらの活用方法やメリットをお伝えします。

オシロスコープ付属のプローブの実力は?

高速オシロスコープは別として、オシロスコープにはチャンネル分のパッシブ・プローブが付属してきます。
スペック上の性能である周波数帯域は本体の性能にマッチしているのが一般的です。

例えばテクトロニクスのMDO4104C(周波数帯域1GHz)には1GHzのパッシブ・プローブTPP1000が付属します。
一方で、同じ1GHz周波数帯域のアクティブ・プローブ(差動プローブ)TDP1000が別売されています。

価格は大きく違います。
TPP1000 22,300円/月
TDP1000 110,000円/月
(※2022年8月現在 オリックス・レンテック基準レンタル料)

周波数帯域は同じですが値段は約5倍の差がありますが、はたしてどのような価値があるのでしょうか?

プローブの周波数帯域とは何か?

「基準(直流または低周波) に比べてレスポンスが-3dB(約70%に低下する周波数)」
確かに正解です。ただし、
「信号源の出力インピーダンスが25Ω」という条件があります。

図1のように出力インピーダンス50Ωのジェネレータを50Ωで終端(電圧源はインピーダンスがゼロなので並列25Ωになります)、プローブをダイレクトに接続できるBNCコネクタのアダプタを使い測定します。

周波数帯域を定義する条件ではどうなるか?
ところで二つのプローブの入力抵抗/容量は

  • パッシブ・プローブTPP1000 10MΩ/5.1pF(デフォルトのスプリング付き、付属のリジット・チップで3.9pF)
  • アクティブ・プローブTDP1000 1MΩ/1pF以下

となります。

そこで図2でプローブ自体の周波数帯域は別として入力容量による周波数応答をシミュレーションしました。

パッシブ・プローブTPP1000では周波数帯域は1.2GHzです。1GHzをわずかに上回り、プローブ本体含めて周波数帯域は1 GHzを満足していると思います。

アクティブ・プローブTDP1000は1pFの入力容量が効いて6.5GHzです。ただし、プローブ本体の周波数帯域があり、システムで1GHzになります。

実際のプロービング条件での周波数帯域は?

8mA電流出力のCMOSを前提にしたシミュレート結果が図3です。
想定として

  • CMOSの出力抵抗は33Ω
  • 浮遊容量(寄生容量)は5pF

としました。

するとパッシブ・プローブTPP1000では出力33Ωと5pF+浮遊容量5pFによるローパス・フィルタにより周波数帯域は1GHz⇒480MHzと半分に低下しました。

一方、アクティブ・プローブTDP1000も周波数帯域は低下しますが、1GHz⇒800MHzとわずかです。

このように実際の測定の場では周波数帯域が大きく低下することが起こり得ます。

プローブの容量が信号形状に与える影響

ドライバ/レシーバにCMOSを使った場合のプローブの影響を考えてみます。

想定として

  • 駆動能力のある24mAドライバの内部抵抗 11Ω
  • 寄生容量 5pF
  • 接続ケーブル(パターン) 50Ω,20cm(遅延時間 1ns)
  • CMOSの入力抵抗、プローブの入力抵抗は大きいので無視
  • レシーバの入力容量 10pF

プローブの入力容量は

  • プローブ無し
  • アクティブ・プローブTDP1000 1pF
  • パッシブ・プローブTPP1000 5pF
  • 一般のパッシブ・プローブ 10pF

と変えた場合の波形の変化を図5でシミュレーションしました。

図5のようにプローブを変えると入力容量によって波形に影響があることが認められます。

CMOSの入力インピーダンスは極めて高く、受信端で全反射を起こします。
逆にCMOSの出力抵抗は低く、特にドライブ能力の高いデバイスでは50Ωより大幅に低くなり、受信端で起きた反射波が送信端で逆反射し戻ってくることで、受信端では大きなうねりを生じます。

この波形歪を抑えるために直列にダンピング抵抗が挿入されます。22Ωを挿入した場合が図6です。
ここでもプローブの入力容量の影響が確認できます。

このプローブの影響を「プローブの負荷効果」と呼んでいます。

ダンピング抵抗の効果を確認するためにもオシロスコープによるチェックは大切ですが、プローブによって波形が影響されるのは問題です。

入力容量5pFのTPP1000は、従来の入力容量約10pFのパッシブ・プローブよりは確かに影響が減っていますが、さすがに1pFのTDP1000にはかなわないようです。

差動信号ラインは外部雑音(ノイズ)に強い

プラスマイナス逆の信号をペアで使う差動信号のメリットはなんと言ってもノイズに強いことです。
長くケーブルを引き回し、信号レベルも低いマイクケーブルは差動です。
差動はペアの信号を引き算するため、図7のように同じノイズは引き算でキャンセルされます。

差動プローブは本来、図8のような差動の信号をダイレクトに測定するものです。
一部の製品は動作モードを変えて、プラス、マイナスの信号の絶対レベルも測れます。

飛び込みノイズだけを観測したい

ラインに飛び込むノイズだけを観測するケースです。ラインにパッシブ・プローブを接続した場合、図9のようにプローブもアンテナとしてノイズを拾ってしまいます。これではうまく観測できません。

一方差動プローブのマイナス入力をグラウンドに接続すると、
プラス入力の信号―グラウンド・レベル
になり、シングルエンドのプローブとして使えます。
プローブに飛び込んだノイズはプローブ内部で打ち消しあってしまうので、差動プローブ本体はノイズに強くなります。

これにより本来観測したいラインに飛び込んだノイズを観測できます。

グラウンド・レベルの変化に関係なし

基板のグラウンドは抵抗ゼロ、電位ゼロと考えてはいけません。
ロジック信号の動作が高速化するとグラウンドに発生するノイズ、グラウンド・レベルの瞬間の変動を考慮します。
信号がグラウンドに流れ込む、という考えではなく、電流が戻る(リターンする)と考えるべきでしょう。
そしてDCR(直流抵抗)だけでなく、寄生インダクタンスも考慮します。
というのも電流の変化速度、di/dtに比例して発生する逆起電力によりグラウンド・ポイントは電位が変化するためです。
このためグラウンド基準で電圧を測るシングルエンドのプローブ(もちろんパッシブ・プローブはそうです)では複数個所の波形測定では不利になります。

図11のように差動プローブのマイナス入力を測定ポイントのシグナル・グラウンドに落とすことで、より真実に近い波形を得ることができます。

このように差動プローブには多くのメリットがあります。
ぜひとも2本位は手元に置いて要所要所で使って欲しいと思います。

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