脱炭素社会の実現に向けて省エネが重視されている今、電力計測技術のニーズが急速に高まっています。企業が省エネに取り組んでいくためには、現状を把握するための電力計測技術が欠かせません。
本記事では、これからの脱炭素社会で重要となる電力計測技術について解説します。
電力計測技術は、電力の使用状況を正確に把握するために電流や電圧を測定する技術です。近年、地球温暖化への対策としてCO2排出量の削減が大きなテーマとなっており、脱炭素社会の実現が目指されています。日本では2050年のカーボンニュートラル達成を目指しており、電力をはじめとするエネルギー消費の見直しが進められている状況です。
企業が自社の電力消費を見直すためには、オフィスや工場内のどこで電力を消費しているのかを把握し、適切な省エネ対応に取り組む必要があります。しかし、ほとんどの企業では電力消費の総量は計測できているものの、個別の計測は実施できていません。このような背景から、電力計測技術のニーズが高まってきています。
電力計測では主に、負荷が消費する電力である有効電力を求めることになります。有効電力は運動・熱・光エネルギーなどに変換されて外部に対して仕事を行う電力値であり、W(ワット)の単位で表現されます。家電製品などに表示されている消費電力はこの有効電力のことを示しており、電圧と電流の瞬時値の積を平均することで求められます。
電力計測の歴史は古く、初期の電力計は指示計器と呼ばれるものでした。指示計器では、コイルに流れる電流によって生じる磁束の力を利用して、電圧と電流の積を求めます。続いて、1970年頃には高性能なアナログ乗算回路が開発され、電子回路による電力計が登場しました。その後、1990年初期にはデジタル電子回路で構成された電力計が開発され、高速デジタル信号処理によって電力値が求められるようになり、現在にいたります。
現在の電力計はベンチトップ型とポータブル型の2種類に大きく分けられます。
ベンチトップ型はいわゆる据え置きタイプの電力計であり、数字表示が主体の電力計とグラフィック表示ができるパワーアナライザーがあります。電力計は生産ラインなどで電力消費などを計測するために活用されており、パワーアナライザーは電圧・電流・電力の測定だけでなくさまざまな解析機能を備えているため、製品開発の現場などで活用されるのが一般的です。
一方のポータブル型は、その名の通り持ち運びができる小型の電力計であり、ベンチトップ型ほど高性能ではありません。しかし、手軽に電力を計測できるのがメリットであり、電力計測の機会が増えていくこれからの時代において、ニーズが高まっていくと考えられています。
脱炭素社会の実現に向けて、企業では電力計測による省エネをどのように進めていけば良いのでしょうか。
まずは、自社内のどこで・どれだけの電力を消費しているのか、現状を把握することが重要です。例えば、製造業の場合は自社が保有する設備がそれぞれどの程度の電力を消費しているのかを計測します。1日・1週間・1カ月といったように期間を決めて平均的な電力消費量を計測し、記録することによって電力消費の状態が掴めることになります。この際に、ポータブル型電力計を利用すると、末端の設備の電力消費量も計測しやすくなります。ケーブルを挟むだけで電力を計測できる電力計もあるので、電力計測を簡単に実施することが可能です。
電力消費量を計測した後は、計測結果をグラフ化して分析していきます。電力消費量が特に多いポイントや、ムダに電力を消費しているポイントを見つけ出し、改善策を検討しましょう。稼働時間を見直す、省エネ機器に交換する、といった改善によって、電力消費量の削減を目指します。改善を実施した後は、再度電力計を使って電力消費量を計測し、改善前後でのデータを比較しながら省エネ効果を検証することができるでしょう。
基本的には、この繰り返しで電力消費量を削減していくことになります。地道な作業ではありますが、脱炭素社会の実現は地球規模の課題であることから、企業への省エネ要求はますます強くなっていくでしょう。後手に回らないように、素早く省エネに取り組んでいくことをおすすめします。電力消費量の削減は自社のコスト削減にもつながるため、前向きな気持ちで取り組んでいくことが重要です。
脱炭素社会を実現するためには、各企業が積極的に省エネに取り組んでいかなくてはなりません。電力消費量の削減は地道な取り組みではありますが、中長期的に見るとメリットが大きいものです。
昨今の需要増加を受けて、電力計メーカー各社は省エネ関連の製品を開発しており、電力計測と改善に取り組みやすい環境が整ってきています。電力計測技術を活用して、自社の省エネ化に取り組んでみてはいかがでしょうか。