2018年10月26日に一般社団法人日本パワーエレクトロニクス協会主催の「パワエレ技術者育成フォーラム2018」が新横浜プリンスホテルにて開催されました。 前編では日置電機株式会社のパワーアナライザや電流センサ、キーサイト・テクノロジー株式会社のパワーデバイス測定システムを紹介しました。 後編でも引き続き、測定デバイス、回路シミュレーションなどを扱う企業を紹介していきます。
(キャプション:情報収集のほか、商談につながるやりとりも交わされる企業展示コーナー)
(キャプション:岩崎通信機株式会社のコーナー)
後編最初に紹介するのは、電機メーカーの岩崎通信機株式会社。 創立80周年を迎える岩崎通信機株式会社は、オシロスコープなどの電子計測機器や各種電子部品、 ビジネスフォンなどの情報通信機器、ラベル印刷機などの印刷システムなどの機器製造および商品サービスの提供を行っています。 今回の展示では、自社開発のロゴスキー電流プローブやオシロスコープなどを用いて、高い測定品質で動特性をいかにしっかりと評価いただくかというところにフォーカスをし、 電力・波形損失解析法の提案が行われていました。
(キャプション:ロゴスキーコイル電流プローブ本体)
自社開発のロゴスキー電流プローブは、機器の小型化、高周波化が進むなかで、岩崎通信機の一つの強みとなっています。 ロゴスキー電流プローブは大電流領域の広帯域測定が可能であり、クランプ式で小さな径にできるため場所をとらず、直接部品の足に通して電流を測定することが可能です。 従来の電流プローブは、電流を流す回路を迂回させるためのケーブルを用いなくてはいけない場合があり、波形はプローブの当て方でも変わるため、計測される波形は歪みが生じることがありました。 ロゴスキー電流プローブならば、迂回させる必要もなくなり、波形の歪みを抑えていくことが可能となります。
岩崎通信機株式会社のフィールドサポート担当の齊藤氏によれば、このようなプローブは、近年では電気自動車関係での需要が高まっています。 例えば、モーター中にインバータ回路が内蔵されているなど、物理的に電流を測定するクランプセンサを挿入できないとき、 ロゴスキー電流プローブならばセンサ部を測定部分に潜り込ませて測定することで、測定の可能性が広がります。 高効率で小型化を目指すインバータを用いた電力変換装置に関しては、動特性を実際に見る必要があり、プローブと測定器などを含めたシステム一式での引き合いが増えているそうです。
(キャプション:ロゴスキーコイル電流プローブセンサー部)
「ソフトウェアによるシミュレーションと合わせて、実際に見えない回路中に実在する寄生インダクタンスや浮遊容量の影響を実動作の測定により確実に捉えることが必要となります。 その際、プロービングによる新たな寄生インダクタンスや浮遊容量などの影響を極力抑えるためのテクニックが必要となり、 シミュレーションのデータと実際の実測のデータとの整合性をいかにつけて評価していくかが重要と考えています。 GaN/SiCでは信号がより高速となるため、誤ったプローブの取り扱いでは、元の波形と全く違ってくるケースが多々あります。 弊社では、広帯域の高電圧差動プローブや最新の広帯域で狭小のロゴスキー電流プローブと合わせて、プロービング方法を適切な形で提案することを強みにしています」と齊藤氏は言います。
(キャプション:ロゴスキーコイル電流プローブからの信号波形)
「岩崎通信機では、エンジニア向けのプロービングセミナも実施しています。 こういう測定には、こういうプローブを使ってこうすればいいよといったことを学んでいただけます。 プロービングによって波形が歪んでいるとか、そういったところでお困りの方、これから始められるといった方とか、何からやったらいいかわからないレベルの方でも、 まずは正しい測定について学んでいただいて、お困りのことがあれば岩崎通信機にお聞きください」と、齊藤氏はお客さまへのメッセージを述べられました。
(キャプション:アンシス・ジャパン株式会社のコーナー)
最後に紹介するのはアンシス・ジャパン株式会社。エレクトロニクス関係のほか、構造解析や熱流体解析、 3D設計などさまざまな分野のCAEソリューション、シミュレーションソフトウェアを提供しています。 今回の展示では、パワーエレクトロニクスの設計に重要なEMC/EMI、熱対策に関するソリューションを中心にデモを行いました。
(キャプション:シミュレーションのデモ画面)
アンシスは、電気だけでなく、構造解析や応力解析、流体解析など総合的な解析を強みとしています。 EMC/EMIにおける解析においては、回路図のような平面的なものから、三次元的な形が持つ寄生容量や寄生インダクタンスといったノイズの原因となるものを考慮して解析します。 これを回路シミュレータに反映させることで、回路シミュレータだけの計算では得られない、部品が実装された状態での解析結果が得られます。 試作前にノイズを再現することができるので、試作をする前にノイズ対策を検討でき、余計な試作コストを減らすことができます。 アンシスでは、このようなモデルベース開発の環境を作るソリューションを早くから提供しています。
(キャプション:デジタルツインまでの流れ)
アンシス・ジャパン株式会社のシニアアプリケーションエンジニアの古賀氏によれば、今アンシスではデジタルツインという新しいプロダクトに挑戦しているそうです。 物理ベースのシミュレーションとIoTを合わせることで現実と仮想空間の中で同じものをつくり、エンジニアはインターネットを通じて現実の物を仮想空間で三次元的に見て操作することが可能になります。 例えば、洋上発電所でトラブルがあった時には、現場まで行かずとも管制室、制御室で今どんな状態になっているかというのを三次元的に可視化し、 シミュレーションを元に出力回路の調整などが行えるようになります。
「当社はさまざまな物理解析ができるようになって、それをつなげたマルチフィジックス解析。 さらにはさまざまな物理モデルを一つのシステムレベルシミュレーションに統合するモデルベース開発。 そしてデジタルツインのソリューションまでユーザーの皆様にご提供できるよう目指しているのが現在の当社の活動です。 総合的な解析を当社は得意としていますので、構造だけではなく、電気だけでもない。 何か総合的なことで困っているお客様がいらっしゃったら、是非当社にお問い合わせください。 もちろん単体の物理解析にも自信がありますし、トータルソリューションとして、それぞれがハイエンド、さらに繋がるというのが当社の強みです」と、古賀氏は述べられました。
自動車業界は電気自動車だけでなく、自動運転化などで今後も更に大きく変化していきます。 自然エネルギーによる発電やさまざまな新しい電子デバイスの登場で、パワーエレクトロニクス業界はこれからも大きく伸びていきます。 今後もさまざまなイベントをレポートし、Rentec Insightへ掲載いたしますのでご期待ください。