さまざまな環境問題の現状を把握して対策を練るために、環境分析技術の重要性が高まっています。SDGsが広く認知され、地球温暖化をはじめとする環境問題が深刻化する今の時代では、あらゆる業界が環境への影響を意識せざるを得なくなってきました。環境分析技術についての知識が役に立つ機会も増えていくでしょう。
そこで本記事では、どのような環境分析技術があり、どのように活用されているのかをご紹介します。
環境分析技術は、大気や水などの環境の状況を正確に測定し、分析する技術です。環境問題はさまざまな要因が複雑に絡み合って発生していることが多く、やみくもな対策を行っても効果がなかったり、逆効果になったりする恐れがあります。効果的な対策を練るためには、現状を正確に把握しなければなりません。そのために、環境分析技術が役立ちます。
環境分析技術の基本は、サンプルを採取して「どこに」「なにが」「どれだけ」「どのように」あるのかをさまざまな分析方法を使って明らかにすることです。環境分析技術の用途は多岐に渡りますが、代表的なものは次の内容の分析です。
近年では、技術の発達によって以前は分からなかった微量な物質も分析できるようになりました。環境問題の原因をより正確に把握できるため、効果的な対策も練りやすくなっています。地球規模で環境問題が深刻化していくこれからの時代においては、あらゆるシーンで環境分析を行うことになると予想できます。より簡易的で迅速に環境分析を行える技術や装置が開発され、環境分析技術はより身近なものになっていくでしょう。
環境分析技術の用途の中で、特に注目を集めているのが大気汚染の分析です。例えば、地球温暖化の対策を練るためには、大気中に温室効果ガスがどの程度含まれているかを分析しなければなりません。その上で、温室効果ガスの排出量を削減する具体的な対策を練って実行していくことになるでしょう。
また、大気中には温室効果ガス以外にも大気汚染物質が含まれている場合があります。例えば、自動車の排ガスに含まれている一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)は、人体へ悪影響を及ぼすことから排出量が厳しく規制されています。同様に、工場の排ガスにも大気汚染物質が含まれている場合があるため、昔から環境分析技術による分析が行われてきました。
大気汚染を分析する環境分析技術としては、赤外分光法と呼ばれるものが主流です。赤外線を物質に照射すると、特定の波長がその物質に吸収されます。吸収される波長と吸収の程度が物質によって異なるという性質を利用して、大気中になにが含まれているかを分析するというのが、赤外分光法の仕組みです。また、赤外線の吸収量は大気中の成分の濃度に比例するため、成分量の分析も行えます。
コロナ禍では3密防止のために二酸化炭素(CO2)センサーが普及しましたが、それらの多くは赤外線を利用して二酸化炭素の濃度を測っています。アフターコロナの社会でも、地球温暖化対策の観点から二酸化炭素センサーが継続して利用されるかもしれません。
大気汚染の分析と同様に、水質汚染の分析も注目されています。日本は海外に比べると水質汚染の問題は比較的少ないですが、健康被害を起こしたり、生態系へ影響を及ぼしたりすることもあります。生活排水や工場などから出る産業排水を分析し、水質汚染を防止しなければなりません。
水質汚染に関して分析する対象は、有害な化学物質や有機物、細菌、色、濁り具合などさまざまです。これらをまとめて分析できる技術はほとんどなく、複数の環境分析技術を組み合わせることになります。
水質汚染に関する代表的な環境分析技術は、液体に含まれるイオンの濃度を測定するイオン濃度計です。他の分析機器に比べると小型・軽量で素早く水質を分析できます。他にも、混合物から各成分を分離した上で分析を行うクロマトグラフィーや、大気汚染の分析でも使われている赤外分光法など、多くの環境分析技術が活用されています。
一昔前までは、水質汚染対策といえば人への健康被害の防止や、生活環境を守ることが中心でした。しかし、これからは人への影響だけでなく地球環境そのものへの影響を最小限に抑えることが求められています。工場などから出る産業排水の管理もより厳しくなっていくと考えられるため、環境分析技術を活用する機会は増えていくでしょう。
世の中の関心が環境問題へ向かったことで、企業は環境に無関心なままではいられなくなっています。企業にとって、自社の事業が環境に悪影響を与えていないかを自ら測定し、対策を練ることが重要になっていくでしょう。
これからの時代は、環境に優しい事業をしていることが企業の評価につながる時代でもあります。環境分析技術をいち早く取り入れることが、企業が成長するための近道になっていくことでしょう。