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自動車の排ガス測定器の仕組みとこれから

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 自動車の排ガス測定器の仕組みとこれから

自動車の排ガス規制が年々厳しくなっている状況下で、排ガス測定器がより一層活用されています。世界的にEV化が進んでいますが、自動車業界が完全にEVにシフトするのにはまだまだ時間がかかるため、排ガス測定器のニーズはしばらく続くでしょう。より正確な測定を行うために、排ガス測定器の技術は継続的に進化しています。

本記事では、自動車の排ガスの特徴や排ガス測定器の仕組み、今後の動向などについてご紹介します。

自動車の排ガスが及ぼす影響

自動車の排ガスには大気汚染の原因となる化学物質が多く含まれており、多量に排出されることで環境や人体に悪影響を及ぼすとされています。

ガソリンや軽油(ディーゼル燃料)の主成分は炭素と水素ですが、それらを燃焼させて動力とする過程でさまざまな化学物質が発生します。例えば、一酸化炭素や炭化水素、窒素化合物、粒子状物質(PM)、二酸化炭素などです。

それぞれが環境に与える影響を簡単にまとめます。

一酸化炭素

生物に対する毒性があり、最悪の場合は死に至る。

炭化水素

光化学スモッグの原因であり、呼吸障害を引き起こしたり、植物へ悪影響を及ぼしたりする。

窒素化合物

オゾン層の破壊、温室効果、酸性雨、光化学スモッグなどの原因になる。

粒子状物質(PM)

大気汚染の原因となり気象に影響を与える。また、発がん性物質であり人体にさまざまな影響を与える。

二酸化炭素

温室効果によって地球温暖化を引き起こす。

それぞれの化学物質に対しての規制が世界各国で行われており、排ガス規制に適合できない場合は多額の罰金を科されたり、販売が禁止されたりといった厳しい措置がなされます。自動車メーカーは、自社の自動車の排ガスに含まれる化学物質が規定値以下であることを証明しなければなりません。そのために、排ガス測定器が活用されているのです。

排ガス測定器の仕組み

排ガス測定器では、NDIR(非分散赤外線吸収法)という測定方式が主流です。NDIR方式は、特有の波長の赤外線を吸収するというガスの性質を応用したものになっています。排ガス中に含まれる検査対象となる化学物質の濃度が濃い場合、赤外線を多く吸収して赤外線の強度が弱くなります。測定器のセンサが弱くなった赤外線の強度を検知して化学物質の濃度に変換し、数値として表示するという仕組みです。

NDIR方式には、多くの化学物質の測定ができる、構造が比較的簡単でメンテナンスもしやすい、といった特徴があります。路上走行試験用などで持ち運びできるサイズの排ガス測定器も多数あるため、最も普及している測定方式の一つです。

別の測定方式としては、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)というものがあり、上述したNDIR方式と同じく赤外線を利用しています。NDIR方式との大きな違いは複数の化学物質の同時測定やモニタリングができることで、それによってより実際の走行状態に近い測定を実現します。ただし、機器構成が複雑で測定器が大きくなる、測定に時間がかかる、といったデメリットから、NDIR方式ほど普及していないのが現状です。

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排ガス測定器のこれから

昨今では、「カーボンニュートラル」や「ゼロ・エミッション」など、さまざまなキーワードが各種メディアで飛び交っています。いずれも地球環境に悪影響を与える廃棄物を削減しようという意味合いですが、その中でも自動車の排ガス削減は重要なテーマです。

世界中で排気ガスを出さないEVやFCVへのシフトが進んでおり、ガソリン車やディーゼル車の需要が減るとともに排ガス規制も年々厳しくなってきました。その影響もあり、より高精度に測定できる排ガス測定器が求められています。

一説によると、世界中の新車販売台数におけるEVの割合は2038年には50%に、2050年には90%になるであろうと予測されています。つまり、2050年になってもガソリン車やディーゼル車は完全にはなくならないということです。実際はもう少しEVの普及に時間がかかるかもしれませんし、バイクなどの自動車以外のモビリティも電動化しなければなりません。排ガス測定器の需要はまだまだ続くと考えられます。

また、排ガス規制に関しては以前から不正が相次いだことから、正しい試験環境で測定が実施できているかどうかも重要視されるようになってきました。日本の大手排ガス測定器メーカーは、路上走行試験を試験室内で高精度に再現するアプリケーションもセットにして提供しており、自動車の開発段階から正しい測定をすることで開発効率を高めています。

排ガス測定器が必要とされているのは、自動車メーカーだけではありません。例えば、車検工場では排ガス測定器の設置が義務付けられており、自動車整備の際に既定値以下であるかを確認しています。そういった場所ではより小型で操作がしやすい排ガス測定器が求められており、今後も各メーカーが開発を進めていくことでしょう。

自動車排ガス測定器の重要性が高まっている

EVやFCVが完全に普及するまでは、ガソリン車やディーゼル車の排ガス規制が続いていくことは間違いありません。いずれは排ガス測定器の需要はなくなってしまうかもしれませんが、まだしばらくは重要な測定器であり続けると考えられます。

今後もニュースなどで耳にする機会が多いであろう排ガス測定器について、理解を深めていきましょう。

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