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自動運転を実現するセンシング技術

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 自動運転を実現するセンシング技術

さまざまなセンシング技術が自動車に搭載されることによって、自動運転が現実のものになってきました。2021年現在、従来の運転支援システムから自動運転システムへの進化が図られており、自動運転に関するニュースをメディアで見ることが増えています。

近い将来、完全な自動運転が実現するかもしれませんが、そのためにはセンシング技術の発展が不可欠です。本記事では、自動運転で活用されているセンシング技術の種類や動向をご紹介します。

自動運転のレベルとセンシング技術

自動運転にはレベル分けされており、センシング技術の発展に伴ってレベルが高まり続けています。改めて、自動運転のレベルを整理してみましょう。

レベル0

ドライバーがすべての操作を手動で行う、人間が普通に運転する通常の自動車

レベル1:運転支援

自動ブレーキや車間距離制御など、走る・曲がる・止まるのうちいずれかの操作を自動で行う

レベル2:部分運転自動化

高速道路の分合流を自動で行うなど、走る・曲がる・止まるのうち複数の操作を自動で行う

レベル3:条件付運転自動化

決められた条件下ですべての操作を自動で行うが、非常時には人間が操作する必要がある

レベル4:高度運転自動化

決められた条件下ですべての操作を自動で行う

レベル5:完全運転自動化

あらゆるシーンですべての操作を自動で行い、完全な無人運転が可能

日本では、2019年5月に自動運転を考慮した改正道路交通法案が成立し、2020年4月から施行されました。これは自動運転のレベル3の実用化を見越した法律であり、日本での自動運転が本格的に解禁されたことになります。そして、高速道路での渋滞時などの特定条件下での自動運転を実現したホンダのレジェンドが2021年3月に発売され、大きな注目を集めました。

世界に目を向けると、アメリカではレベル4の自動運転タクシーサービスが既に存在し、中国ではレベル4の自動運転バスが実用化されています。日本よりも一歩進んでいる印象を受けますが、日本でも同様の実証実験が進んでおり、世界中で自動運転技術の開発が活発に行われている状況です。

自動運転で活用される主要なセンシング技術の種類と特徴

自動運転を実現するためには、さまざまなセンサーを用いた周辺認識技術の発展が不可欠です。センサーが人間の目の代わりになって周辺の物体や人を認識し、ハンドルを回すやブレーキを踏むといった運転操作が自動で行われます。センサーの進化が自動運転を実現したといっても過言ではないでしょう。

自動運転で活用されている主要なセンサーとしては、カメラ・ミリ波センサー・LiDARの三つが挙げられます。それぞれの特徴や最新動向を見てみましょう。

カメラ

カメラは既に多くの自動車に搭載されており、運転支援システムを支えてきました。

カメラから取得した画像から、物体や白線、信号、標識などを認識します。また、複数のカメラを組み合わせることで距離も計測できるため、前方車両との相対距離や走行速度の計算も可能です。

ほかのセンサーに比べると低コストなため、カメラは車両の前方と後方に複数台搭載されるのが当たり前になっています。自動運転においても重要な役割を担いますが、カメラにも弱点があります。例えば、カメラで鮮明な画像を取得するには光が重要なため、夜間や雨天などの悪天候には不向きです。また、対向車のヘッドライトの光が直接当たることで画像が真っ白になる白飛びの問題もあります。

そのため、上述した弱点を補うカメラの開発も行われています。複数台のカメラで取得した明るさの異なる画像を統合・編集して見やすくしたり、人の目よりも高精度な認識を実現したりする技術が各メーカーによって開発されているのです。カメラによるセンシング技術もまだまだ発展途上だといえるでしょう。

ミリ波センサー

ミリ波センサーは、周波数帯が30GHzから300GHzのミリ波と呼ばれる電磁波を用いたセンサーであり、運転支援システムでの車間距離制御などでよく活用されています。

ミリ波センサーは電磁波の発信機と受信機で構成されており、照射したミリ波が物体に反射して帰ってくるのを検知します。それによって、物体までの距離と方向を認識する仕組みです。

ミリ波は電磁波であって光ではないため、悪天候でも高精度に検知できます。一方で、検知した物体が何かを認識することは得意ではなく、段ボールや発泡スチロールのように電波を反射しにくい物体の認識精度も落ちます。そのため、カメラと組み合わせることで各々の機能を補完する使い方が一般的です。

ミリ波センサーも各メーカーで改良が進められており、高性能化・小型化・低コスト化によるさらなる普及が期待できます。

LiDAR

自動運転のカギを握るセンシング技術として、LiDAR(ライダー)が注目されています。

LiDARとは、Light Detection and Rangingの略称であり、直訳すると「光による検知と測距」という意味になります。赤外線レーザー光を照射し、物体に反射して帰ってくるまでの時間から距離を計測するセンサーであり、上述したミリ波センサーに近い仕組みだといえます。

ミリ波センサーとの大きな違いは、ミリ波よりも波長の短い電磁波である赤外線を使用しているため、より高精度な空間認識ができる点です。ミリ波センサーでは物体の認識しかできませんが、LiDARは物体との間にある空間も認識できます。それにより、障害物があって危険な進路と、安全な進路を区別した自動運転を実現します。また、ミリ波を反射しにくい物体でも、LiDARであれば認識できることも特徴です。

LiDARも万能ではなく、悪天候では認識精度が落ちることや、価格が高くてサイズも大きいといった課題もあります。しかし、自動運転タクシーの実験車でのメインセンサーとして採用されるなど、高い認識精度を生かした自動運転の実現に期待が集まっています。

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自動運転におけるセンシング技術の課題

自動運転で活用されるセンシング技術として、カメラ・ミリ波センサー・LiDARを紹介しましたが、どの技術も一長一短であり、単独で自動運転を実現することは難しいのが現状です。そのため、基本的には複数のセンシング技術を組み合わせて周辺認識の精度を高める必要があります。

例えば、ミリ波センサーは前方の遠距離を、カメラは前方の近距離〜中距離を、LiDARは全方位の近距離〜中距離を担当し、重なり合う部分はより信頼性の高い情報を採用して運転操作する方式があります。このように、複数のセンサーから取得した情報を統合して最適な判断をする技術はセンサーフュージョンと呼ばれており、より信頼性の高い判断をするためにはAI技術の進化が課題になるでしょう。

また、センサーの価格も自動運転車が普及する上で課題になる可能性があります。既に運転支援システムで実績のあるカメラやミリ波センサーは比較的安価ですが、LiDARは先進技術であるがゆえに高価な傾向にあります。開発当初は1台で数百万円と非常に高価なセンサーだったため、自家用車での採用は非現実的でした。しかし、最近では汎用機であれば1台数万円から数十万円まで価格が下がっています。今後、高機能かつ低コストのLiDARが開発されれば、より自動運転車が普及するようになるでしょう。

センシング技術の発展が自動運転を実現させる

日本でレベル3の自動運転車が公道を走り始めたことにより、完全な自動運転の実現は現実味を帯びてきました。海外では既にレベル4やレベル5が実現されつつあり、それらはセンシング技術の発展が支えてきたといえるでしょう。
自動運転がより安全かつ一般的なものになるためには、センシング技術のさらなる発展が求められています。

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