電子機器の波形信号を測定する代表的な測定器として、オシロスコープが挙げられます。そのほかにも、デジタルマルチメータや周波数カウンタなどのさまざまな測定器がありますが、これらを扱ううえで重要なのが、被測定物から信号を取り出すプローブ(探針)の使い方です。
今回は、測定器を扱う人であれば知っておくべきプローブの基礎知識として、プローブの概要や求められる機能、正しく使用するためのポイントを解説します。
プローブは「測定や実験などのために、被測定物に接触または挿入する針」と定義されています。プローブは特殊な先端形状と高い抵抗値を持っており、被測定物に接触したり、挿入したりすることで波形信号を取り出します。
本来であれば、測定器と被測定物を同軸ケーブルなどによって直接接続できるのが理想ですが、被測定物の形状や仕様は多種多様であり、出力端子を備えていることの方が珍しいです。そのため、多くの場合はプローブを介して被測定物との電気的接続を取り、周波数や電圧などの測定を行います。また、測定器が表示・測定するのはプローブを通した波形信号なので、プローブが測定の質を大きく左右します。
プローブは測定器で測定する上でなくてはならない存在であり、実際にほとんどのオシロスコープでは、プローブが標準で付属しています。
プローブに求められる機能として、主に次の四つが挙げられます。
特に、3はプローブが果たさなければならない重要な機能です。被測定物は通常、プローブおよび測定器が接触していない状態で動作するものなので、プローブが接触している状態は異常です。プローブが接触していることが原因で動作に影響を与えてしまうと、正しい測定ができないということは、常に頭に入れておく必要があります。
プローブを使った測定では、極端に言うと「完璧な測定はあり得ない」ということをまず理解する必要があります。上述した通り、プローブには被測定物の動作に影響を与えないことや、ノイズが入り込むのを防ぐという機能が求められています。しかし、実際にはプローブという異物を介して測定している以上、少なからず動作に影響を与えたり、ノイズが入り込んだりして測定誤差が生じているのです。
被測定物と接続して信号をオシロスコープに導くことを「プロービング」と呼びますが、「プロービング」で重要なのは、間違った使い方をせずに測定誤差を最小限に抑えることです。
プローブを使う上でよくある間違いを紹介しますので、ご自身のプロービングを見直してみてください。
プローブは補正をしてから使用する必要があります。オシロスコープの入力容量は機種によって異なるため、オシロスコープとプローブを組み合わせる時には補正を行わなければなりません。もし補正をせずに使用すると、波形に歪みが発生して正確な測定ができなくなる可能性があります。
上述した通り、プローブにはさまざまな種類がありますが、測定対象に合ったプローブを持っていないからといって、手持ちのプローブを無理に流用してはいけません。プローブは用途に合わせて最適化されているので、正しい測定を行うためにはオシロスコープに標準で付属しているプローブを使うのが無難です。
プローブには、用途に合わせたさまざまな接続アクセサリが用意されています。被測定物との接続をしやすくする便利なものですが、接続アクセサリによって測定に制限がかかったり、被測定物に大きな負荷がかかってしまう場合があるので注意が必要です。例えば、異常に長いケーブルをプローブに取り付けてしまうと、ノイズを拾いやすくなって測定誤差が生じることもあります。測定精度が重要であれば、接続アクセサリの使用は最低限に抑えることをおすすめします。
プローブを正しく使用して、正確な測定を行うためには抑えておくべきポイントがあります。どのような内容か見てみましょう。
プローブは長く使っていると接触不良を起こしたり、断線したりする可能性があります。正確な測定をするために、プローブは消耗品であると割り切って、定期的に交換することをおすすめします。よく使用するプローブはストックしておいて、一定回数または一定期間使用したプローブは交換することを習慣にしましょう。
上述した通り、プローブは補正せずに使用すると正確な測定ができません。自分専用のオシロスコープで、なおかつ同じプローブしか使わないという場合は頻繁に補正をしなくても良いかもしれません。しかし、もしほかの人と共用しているのであれば、いつの間にか別のオシロスコープに合わせてプローブが補正されている可能性もあるため、注意が必要です。
補正ができていないことによる測定誤差が生じないように、オシロスコープを使う時は、プローブの補正をルーチンワークとして行ってから測定することをおすすめします。
正確な測定を行うためには、測定器と被測定物の間の接続をできるだけ短くすることが重要です。測定器と被測定物の間はプローブとケーブル類で接続することになりますが、接続が長ければ途中でノイズなどの影響を受けて信号が歪んでしまう可能性があります。できるだけ短い接続を心がけて、不必要に長いケーブルはなるべく使わないようにしましょう。
今回は、プローブの概要とプローブに求められる機能、間違った使用例や正しく使用するためのポイントを紹介しました。
プローブは測定器を扱う上での基本です。プローブの使い方を間違えると、間違った測定をしてしまって製品不良や事故などの大きな問題に発展する可能性もあります。
本記事で紹介したプローブに関する知識や正しく使用するためのポイントなどを参考にして、正確な測定を心がけていただきたいです。