2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs。世界各国では、より豊かで持続可能な社会を実現するための取り組みが進んでいます。
日本も国際社会の一員として、SDGsに積極的に取り組んでいます。メディアで定期的に取り上げられているのを見たり、ジャケットについたSDGsバッジを見たりするなどして、SDGsのことを知ったという方は多いでしょう。
本記事では、製造業の目線からSDGsにどう取り組むべきかを事例も交えてご紹介します。
SDGs(Sustainable Development Goals)は、「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。2015年9月の国連サミットにおいて、193の国連加盟国すべてが合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。2030年を達成年限とし、17の目標と169のターゲット、232の指標で構成されています。
17の目標がどのような内容なのかを見てみましょう。
SDGsは世界各国で取り組みが進んでいますが、2019年9月に開催された「SDGsサミット」では、「達成状況には偏りや遅れがあり、あるべき姿からはほど遠い」という危機感が示されました。
2030年までに目標を達成するためには、取り組みのスピードをさらに速めて、規模を拡大する必要があります。2020年1月からはSDGs達成のための「行動の10年」がスタートしており、私たち一人一人ができることをしっかりと考えて行動する姿勢が求められています。
SDGsが目指している持続可能でよりよい社会の実現には、製造業が密接に関わっています。
製造業では、人々が生きるために必要とする食品や医薬品はもちろん、自動車や飛行機などの移動手段やスマートフォンなどの電子機器を生み出して豊かな社会を支えています。
持続可能な社会の実現のためには、エネルギーや環境問題に関する配慮も重要です。より少ないエネルギーで稼働する製品を開発・製造する。環境汚染につながる廃棄物を出さない。リサイクルによって少ない資源で製造する。このような製造業の取り組みが必要になってきます。
また、製造業が企業として活動する上で取り組むべきことが他にもあります。例えば、危険な作業や長時間労働の改善などにより、従業員が安全かつ充実して働けるように配慮しなければなりません。
SDGsで掲げる17の目標のほとんどが製造業と関わりを持っています。では、実際に製造業がSDGsに取り組む場合は、どのようなことを行えばよいのでしょうか。
ここからは、SDGsが掲げる17の目標の中で、多くの製造業と関係のある三つの目標について、事例も交えつつ詳しく見ていきます。
「働きがいも経済成長も」は、包摂的かつ持続可能な経済成長およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進するという内容です。
簡単にまとめると、「世界中で持続的な経済成長を実現しつつ、雇用を充実させて人々が前向きに働ける環境をつくろう」というものです。
製造業での具体的な取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。
例えば、A社では、従業員が働きやすい労働環境の形成に力をいれています。従業員をチームに分けてチームごとの目標を持つことによって個人の負担を軽減し、サービス残業の抑制に成功しています。また、労働日数を毎年少しずつ減らしていくという取り組みも進めており、従業員のワーク・ライフ・バランスを実現しています。
「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、強靭なインフラを構築し、包摂的で持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図るという内容です。
中身としては、「産業発展を支える強靭なインフラの構築」「イノベーションの推進」の二つが含まれています。後者の方が、多くの製造業に関わる内容になるでしょう。
製造業での具体的な取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。
例えば、B社では社内でのイノベーションを促進するための取り組みとして、社内外で開催されるコンテストへの積極的な参加を実施しています。これにより、技術アイデアを向上させて新たな技術や製品を生み出すのが狙いです。また、地域の企業と連携したものづくりネットワークを構築して、自社だけでは解決ができない課題にも他社と協業することで取り組んで成果を上げています。
「つくる責任・つかう責任」は、持続可能な消費生産形態を確保するのが目的です。
製造業は、生産活動による「つくる側」であることはもちろん、電気やガスなどのエネルギーや各種資源を消費して生産活動を行うため、「つかう側」でもあります。
製造業での具体的な取り組みとしては、次のようなものが挙げられます。
例えば、C社では製品のライフサイクル全体で環境負荷を低減するという目的のために資源循環システムの活動を行っています。使用済み製品を資源として有効活用する、部品の再使用を前提にした製品づくりを行う、再使用ができない部品は分別・資源化して再び新しい資源として活用するという三つの仕組みによって、持続可能な社会に貢献しています。
今回ご紹介したように、SDGsは製造業と密接に関わっています。さらに、近年ではSDGsをはじめとする社会的課題の解決に取り組んでいるかどうかが、企業の評価基準にもなってきました。SDGsに取り組んでいなければ、最悪の場合はサプライチェーンから外される可能性があり、そうなった場合の企業への影響は甚大です。製造業各社は、まずは自らの事業と関連する内容から積極的に取り組むことによって、SDGs参加企業としてのあり方を社内外に知らせていきましょう。