測定器 Insight

モジュラー構造で世界最高水準の電力計測確度・精度を実現するWT5000とは?

~コンパクトな筐体(きょうたい)で正確な多点電力計測を実現・モジュラー構造とタッチパネルUI、安全端子で現場の使いやすさも向上~

測定器 Insight モジュラー構造で世界最高水準の電力計測確度・精度を実現するWT5000とは?

横河計測株式会社
取締役 兼 技術開発本部 本部長 兼 技術開発本部 マーケティング部 部長 片野和也 氏
技術開発本部 マーケティング部 商品企画1グループ 富岡 裕 氏
技術開発本部 マーケティング部 商品企画1グループ 鈴木 裕之 氏
ビジネス開発センター 商品開発部 ソフトウエア開発グループ 木村 武志 氏

SDGs(持続可能な開発目標)の考え方を実現するために欠かせない、エネルギーの電力シフトとクリーンエネルギーを推進する上で求められているのが、 確度・精度が高く扱いやすい電力計測器、プレシジョン・パワーアナライザーです。 世界最高水準の電力計測精度を実現する横河計測のWT5000について取材しました。

持続可能な開発にはプレシジョン・パワーアナライザーが欠かせない

-- WT5000の開発につながった市場の要求についてお尋ねします。電力計測の現場で近年起きてきた、そして今後予想される変化のトレンドはどのようなものでしょうか?

・片野氏
「YOKOGAWAグループが2050年に向けて掲げている長期目標として Net-zero Emissions, Well-being, Circular Economy の3点がありますが、 これは現在世界的な課題となっているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)の考え方に即したものです。 ここに含まれる『持続可能』な目標の中に、『気候変動への具体的な対策およびクリーンエネルギー』というものがあります。 これはつまりCO2や窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)といった化石燃料由来の地球温暖化ガスや大気汚染物質を削減することを意味しています。 そのために必要なのが電力シフト、自然エネルギーの拡大、効率向上の3点です。 電力シフトとはエネルギー消費に占める電力の割合を増やすことで、具体的にはEV(電気自動車)のようにこれまで化石燃料で動かしていた動力をモーターに変える、 つまり電化していくことがその例です。自然エネルギーの拡大は太陽光や風力発電が代表的ですね。 効率向上というのは、例えばモーターであれインバーターであれ、効率が良くなればその分化石燃料消費を減らせますから望ましいわけです」

サステナビリティ目標Three goals

YOKOGAWAグループ サステナビリティ目標Three goals

-- それらの変化がWT5000のようなプレシジョン・パワーアナライザーへの需要を引き上げるのはなぜでしょうか?

・片野氏
「EVではエンジンをモーターに置き換えるわけですから、開発やメンテナンスの現場でこれまでは必要なかった電力計測のニーズが生まれます。 これまでの発電システムと違って自然エネルギーは分散した多数の小規模な発電ユニットで構成されますから、それらの生産や検査のために高精度な計測器が多数必要になります。 そして、いずれの分野でも、電気エネルギーの使用効率をいかに向上するかを巡って世界中で盛んな技術開発が行われており、その評価のためには極めて精密な電力測定が求められています」

-- そのためにWT5000は世界最高クラスの精度を持つとのことですが、計測の現場にとって重要な、確度・精度以外の改善点はありますか。

・片野氏
「操作性と安全性でもいくつも改善を加えています。操作性が良ければミスも減って短時間で計測を行えますので、多数のユニットの点検をするような場面の生産性が上がります。 電力計測の現場には必ず漏電・感電の危険がともないますので、安全性向上の重要性については言うまでもありません」

世界最高水準の確度・精度と、柔軟にコンパクトな計測系を組める扱いやすさを両立

-- では、WT5000でそれらの改善点が具体的にどのような仕様として反映されているのかを教えてください。

・富岡氏
「まずは確度・精度ですが、50/60Hz定格入力時の電力基本確度トータル±0.03%という世界最高クラスの性能を実現しています。 測定帯域、DC測定確度、力率誤差といった性能も大幅に改善しており、インバーター、リアクトル、バッテリーなどといった、 それぞれ特性の異なる測定対象についても、その電気エネルギー効率をより正確に測定できます。 広いダイナミックレンジを備えていることも大きな特長で、機器の省エネルギー設計時には欠かせない、電流値の大きな変化にも対応できます。 さらに最大500次までの高調波測定を2系統同時に行えますので測定時間を大幅に短縮できます」

・鈴木氏
「これらの性能を実現するため、今回のWT5000では最高10MS/sのサンプルレート(従来機種の50倍)、18bitの分解能(従来機種の4倍)を持つADコンバーターを採用しました。 このことにより、特に、入力信号が高速に変化する最新のインバーター波形も正確にデジタル化できるようになり、測定の安定性向上に大きく寄与しています」

測定器 Insight モジュラー構造で世界最高水準の電力計測確度・精度を実現するWT5000とは?

WT5000 性能説明

「操作性/安全性については、最大7入力のモジュラー構造、最大4モーターの評価機能(オプション)、タッチパネルUI、電流安全端子を採用しています」

多入力アプリケーションに1台で対応

・富岡氏
「次世代自動車向けインバーター駆動モーターの開発では、図のように7系統の電力と二つのモーター出力を計測したい場面があります。また、インホイールモーターと呼ばれるタイプのEVでは、車輪ごとにモーターが搭載されるためモーター出力が四つになります。このようなケースで、従来モデルでは2台の測定器を使って同時測定しなければなりませんでしたが、WT5000では1台で対応できるためシンプルな計測システムを組むことができ、 設置スペースやコスト面でも大変有利です。モーター出力測定用端子は、他の各種信号の測定用としても使用可能です」

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WT5000 システム構造①

・富岡氏
「WT5000は太陽光発電システムの評価で必要な各種性能も向上しています。電力エレメントは最大1500Vdcの高電圧に対応しています。 また、最大30Aまでの直接入力電流端子を搭載していますので、外部センサーを介さずに極めて高精度な電流測定が可能です。」

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WT5000 システム構造②

柔軟な構成変更が可能なモジュラー構造

・鈴木氏
「電力エレメントは、YOKOGWAの高精度パワーアナライザーとしては初めてとなるモジュラー構造を実現しました。 エレメント単位で差し替えられるため、ニーズに応じて30Aエレメントと5Aエレメントを組み替えて最適な構成をとることができます。 また、これまでは機器単位で校正する必要があったため、校正中は計測業務を中断するのが常識でしたが、 WT5000ではエレメント単位でローテーションすることによる校正や修理が可能なので、計測業務を継続しながら校正を並行して行うことができ、測定機器の稼働率を大幅に向上させることができます」

測定器 Insight モジュラー構造で世界最高水準の電力計測確度・精度を実現するWT5000とは?

画像:WT5000

直観的に操作できる大画面タッチパネルUI

・鈴木氏
「10.1型液晶画面には直観的な操作が可能なタッチパネルUIを搭載しています。 手袋使用時など、タッチパネルを使用しにくい場合でもハードウエアキーで全ての操作が可能ですので、さまざまなシーンに柔軟に対応できます」

誤挿入防止のための電流安全端子採用

・鈴木氏
「電流入力にはオス型の安全端子を採用し、電圧用の測定リードを誤って挿入することを防止しています。 また、特に大電流用の30A入力側はワンタッチで挿入できてロックされる機構を採用し、簡単には抜けない構造となっています。 これまで一般的によく使われていたネジ式の電流入力プラグでよくあった、ネジが緩んで抵抗値が上がり発熱する事故も防げる優れた方式です」

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画像:安全端子

電力計測・解析をより効率良く行えるアプリケーション WTViewerE

・木村氏
「WT5000を単体で使用することもできますが、2台以上を使用した同期計測や高度な解析をする場合は、PC上で動作するアプリケーションWTViewerEが便利です。 WTシリーズの計測器を4台まで接続して、測定条件の確認や変更も効率良く行えます。 4Kディスプレーを使用すれば、多チャンネルの波形を一覧表示して全体の状況をモニタリングできます。 また、長期間の評価試験でも常に全測定データを保存・表示できますし、保存済みのデータファイルも含めて詳細な解析が可能です」

長年培った技術で発熱とノイズの壁をクリアし、電力計測の現場に貢献

-- WT5000はこれまでの50倍のサンプルレートやモジュラー構造など、 性能的にも操作性の面でも大きく進化を遂げられたようですが、開発にあたってもやはりかなりのブレークスルーが必要だったのではないでしょうか?

・片野氏
「サンプルレートが上がる分、発熱およびノイズへのより厳重な対策が求められます。 WT5000のような高精度測定器では大きなチャレンジでした。モジュラー構造は営業部門からの強い要求で取り組むことになりました。 操作性・柔軟性を上げるためには非常に効果的ですが、プラスチックの筐体(きょうたい)で覆われた小さなエレメントの中で冷却を行わなければならないという大きなハードルがありました。 従来モデルWT3000Eでは4系統だった入力を7系統に増やした上でそのハードルを越えるのは簡単ではありませんでしたが、 弊社の持てる技術を結集して要求を実現したことで、今後の電力計測のニーズにベストマッチした製品に仕上がったと自負しております。
今後も当社が培った技術力を生かして市場で求められるニーズにお応えすべく、電力計測の現場に貢献してまいります」

--本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

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