
ポンプやモーターでは、故障に至る前に異常の兆候が現れることがあります。例えば、ベアリング(軸受)の損傷やアンバランス、ミスアライメントなどでは、振動に変化が現れる場合があります。
こうした異常兆候を早期に捉え、点検や整備につなげる方法の一つが振動測定です。振動を継続的に測定・記録し、正常時からの変化を確認することで、設備の状態を把握しやすくなります。
本記事では、振動測定の仕組みやメリット、代表的な測定機器に加え、ポンプやモーターの設備保全に振動測定を活用する進め方を解説します。
振動測定を用いることで、ベアリングの損傷、アンバランス、ミスアライメントなどに伴うさまざまな異常兆候を検出できます。
アンバランスは、回転軸の中心と重心がずれる現象です。また、ミスアライメントは、軸継手(カップリング)で接続された2本の回転軸が、一直線に正しく並んでいない状態を指します。
振動測定では、主に「変位」「速度」「加速度」といった物理量を測定します。それぞれ捉えやすい振動の特徴が異なるため、測定対象や把握したい異常の種類に応じて使い分けることが重要です。
各測定項目の特徴と、把握に役立つ異常の例は以下のとおりです。
| 測定項目 | 特徴 | 把握に役立つ異常の例 |
|---|---|---|
| 変位 | 物体が基準位置からどの程度動いたかを示す。比較的低い周波数帯における大きな変位を捉える際に用いられる。 | 軸の振れ、配管や構造物などの比較的大きな振動 |
| 速度 | 単位時間当たりの物体の位置の変化量を示す。回転機械の振動状態を総合的に評価する際に広く用いられる。 | アンバランス、ミスアライメント、カップリング不良、ボルトの緩み |
| 加速度 | 単位時間当たりの速度の変化量を示す。衝撃的な振動や比較的高い周波数成分を捉える際に用いられる。 | ベアリングの損傷、ギアの異常 |
ポンプやモーターの異常を把握する方法は、振動測定以外にも複数あります。「音を聴く」「電圧や電流、温度を測る」「分解する」といった方法が代表的です。振動測定は、「異常兆候を早期に捉えやすい」「運転中の変化を把握できる」「周囲の音の影響を受けにくい」といった特徴があるため、定期点検や予防保全に活用されています。
異常振動は、機械が故障に至る比較的早い段階から発生するため、故障の予兆を把握する上で有効な指標となります。
例えば、ベアリングの損傷では、初期段階から特徴的な振動成分が検出される場合があります。損傷が進行すると、摩擦や発熱が増加し、温度異常として現れることもあります。
また、電流値も機械の異常を把握する代表的な指標ですが、異常の種類によっては、変化が明確に現れにくいこともあります。
つまり、温度や電流値に明確な変化が現れる前の段階で、振動測定によって異常兆候を捉えられる可能性があります。これにより、トラブルへの早期対応につなげることが可能です。
振動の測定方法には、センサーをモーターの筐体などに取り付けたり押し当てたりする「接触型」と、レーザー光などを用いる「非接触型」があります。
接触型・非接触型ともに、運転中の振動を測定できます。接触型では、センサーを固定するか直接押し当てた状態で、機械を運転しながら測定できます。振動の周波数帯と記録速度に対応するデータロガーなどで継続的に測定・記録すれば、異常発生時の振動の挙動も捉えられます。
非接触型は、センサーを取り付けることなく振動を測定できます。センサーの取り付けが難しい対象や、センサー自体の質量が対象物の振動特性に影響を与えるおそれがある軽量な対象の測定にも適しています。
ポンプやモーターを扱う現場では、さまざまな音が発生します。機械の動作以外にも音の発生源があるため、人の耳で異常音を聞き分けにくくなるおそれがあります。音による異常を正確に判断するには、熟練した技術や経験を要する場合もあります。
一方で振動測定は、人の聴覚による判断と比べて周囲の騒音の影響を受けにくい方法です。
ただし、周辺設備や構造物から伝わる「床振動」などが測定値に含まれる場合があるため、過去の値と比較する際は、測定位置や方向、設備の運転条件をそろえることが重要です。
周波数分析(FFT分析)を行うことで、回転数や部品の特性と関連する振動成分を抽出し、異常原因の切り分けに役立てることもできます。

振動測定には、振動計や加速度センサー、データロガーなどが用いられます。それぞれの特徴は、以下の表のとおりです。
| 測定機器 | 特徴 |
|---|---|
| 振動計 | 物体の振動を測定する装置。製品によって、振動の変位・速度・加速度などを測定できる。測定対象や周波数帯に応じて、適した振動ピックアップ※を選定する必要がある。 |
| 加速度センサー | 加速度を検出するセンサー。ピエゾ素子などの圧電素子を用いる「圧電式」、低域の特性に優れる「ひずみゲージ式」、感度が高く微小振動の計測に適する「サーボ式」がある。 |
| データロガー | 振動や加速度のデータを一定間隔で記録する計測機器。センサーなどから取得したデータの継続的な記録に用いられる。対象の振動周波数帯と必要なサンプリング速度に対応した機種を選ぶ。 |
※振動ピックアップ:振動を検出して電気信号に変換する機器
振動測定では、測定目的に応じて複数の機器を組み合わせる場合もあります。
振動測定を設備保全に活用するためには、異常が疑われるときだけ測定するのではなく、正常に稼働している段階から継続的に設備の状態を確認することが重要です。測定条件をそろえてデータを蓄積し、振動の変化を時系列で確認することで、異常兆候を早期に発見しやすくなります。
まずは、設備が正常に稼働している状態の振動データを測定します。設備ごとに構造や運転条件が異なるため、対象設備の正常時の値を比較の基準として把握しておくことが重要です。継続測定では、この基準と比べて変化がないかを確認します。
振動の変化を正しく比較するためには、可能な限り同じ測定位置や方向、運転条件で測定を行います。測定位置や負荷、回転数などの条件が異なると、設備に異常がなくても測定値が変化する場合があるためです。定期点検の際に同じ条件で測定を繰り返すことで、振動値の経時的な変化(トレンド)を確認できます。
測定した振動データは、過去のデータと比較して変化の傾向を確認します。データロガーなどを活用して振動値を継続的に記録すれば、基準値を超えたかどうかだけでなく、振動が徐々に増加する傾向なども把握できます。
振動の大きさや周波数成分に正常時とは異なる変化がみられた場合は、設備に何らかの異常が生じている可能性があります。
振動の増加や、正常時とは異なる周波数成分などがみられた場合は、測定結果を基に原因を切り分けます。アンバランスやミスアライメント、ベアリングの損傷など、異常の種類によって振動の現れ方は異なります。
必要に応じて温度や電流などの測定結果も組み合わせて原因を確認し、点検や部品交換、アライメント調整などにつなげます。こうした対応は、設備の突発的な停止や重大な故障の防止に有効です。
振動測定を行う際には、測定対象の振動特性や周波数帯、測定場所の環境に適した機器を選定することが求められます。
振動測定では、測定対象の周波数帯に対応した機器を選定します。測定可能な振動の大きさや周波数範囲は、機器によって異なるためです。必要な周波数帯を事前に特定できない場合は、レンタルを活用して複数の測定機器でテスト測定を行う方法もあります。
測定対象に応じて、接触型と非接触型を適切に使い分ける必要もあります。接触型は機械の振動を直接測定できますが、適切な測定位置(取り付け面)を確保できない場合や、対象物の温度がセンサーの使用温度範囲を超える場合には使用が難しいことがあります。
さらに、測定対象に対して質量の大きいセンサーを取り付けると、センサー自体の質量によって対象物の振動特性が変化する「マスローディング効果」が生じる場合があります。
一方、非接触型の測定機器は、センサーを取り付けにくい対象にも使用できますが、一般に導入コストが高くなる傾向があります。
測定機器は、測定場所の環境に適した製品を選定する必要があります。
例えば、高温環境で測定する場合は、高温対応のセンサーや耐熱ケーブルなどが必要です。
また、可燃性ガスや可燃性液体の蒸気が存在する可能性のある場所など、防爆対応が必要な環境では、適切な防爆仕様の測定機器の導入が不可欠です。
センサーを機械に取り付ける場合は、適切な方法で確実に固定することが重要です。取り付け・取り外しは設備と計測器の手順に従い、必要に応じて設備を停止して行います。固定が不十分だと、取り付け部でずれや共振が生じ、実際の振動とは異なる測定結果になるおそれがあります。特に高周波の振動を測定する場合は、対象や測定周波数に適した固定方法を選定する必要があります。
ポンプやモーターの異常兆候を早期に捉える方法の一つが振動測定です。アンバランスやミスアライメント、ベアリングの損傷などでは、故障に至る前から振動に変化が現れる場合があります。
振動測定を設備保全に活用する際は、正常時の振動データを把握し、同じ条件で定期的に測定することが大切です。過去のデータと比較して変化の傾向を確認し、異常兆候がみられた場合は原因を切り分け、適切な点検や整備につなげます。
測定対象の振動特性や周波数帯、測定環境に適した機器を選定し、振動測定を継続的な設備保全に活用することで、異常兆候の早期発見につなげられます。