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DC-DCコンバーター・インバーターの電源品質測定|グラウンドループノイズを抑えるプローブ選定の基礎

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight DC-DCコンバーター・インバーターの電源品質測定|グラウンドループノイズを抑えるプローブ選定の基礎

EV(電気自動車)をはじめとする電動化の進展により、DC-DCコンバーターやインバーターといった電源回路は、ますます高速かつ高周波で動作するようになっています。それに伴い、設計や評価の現場では電源品質をいかに正確に測定するかが大きな課題となっています。

とりわけ、汎用パッシブプローブを使った測定で生じるグラウンドループノイズは、リップルやスイッチングノイズを実際より大きく見せてしまうなど、測定結果を歪める要因として測定結果を歪める要因ですが、見落とされがちです。

本記事では、電源品質測定で評価すべき項目と測定が難しくなっている背景を整理した上で、グラウンドループノイズが測定誤差を生む仕組み、その影響を抑えるためのプローブ選定のポイントを解説します。

電源品質測定の重要性

EV化や電動化の進展により電源回路の高速スイッチング化が進む中、電源品質をどれだけ正確に測定できるかが製品の性能や信頼性を左右します。適切な測定環境の構築は、設計段階での課題発見やトラブル防止に直結します。

まずは、電源品質測定で評価される項目と測定が困難になっている理由を整理します。

電源品質測定で評価される項目

DC-DCコンバーターやインバーターの設計や評価では、複数の指標を組み合わせて電源品質を測定・評価します。代表的なものとして、リップル電圧、スイッチングノイズ、過渡応答、変換効率、入出力電圧の安定性などが挙げられます。

なかでも微小なリップル成分は注意が必要です。出力に重なるわずかなリップルやノイズが、後段の制御回路や負荷側回路の誤動作要因となることがあるため、正確な観測が欠かせません。これらの項目を定量的に把握することが、回路の安定動作と高効率化を実現するための前提条件となります。

高速スイッチング化によって測定が難しくなる理由

測定が難しくなっている背景には、パワーデバイスの進化があります。SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった次世代パワーデバイスの採用により、用途や回路によってはスイッチング周波数が数百kHz〜数MHz帯に達するケースもあります。

一般に、SiCやGaNは、用途や電圧・電力条件に応じて使い分けられ、高速スイッチング化に寄与します。

スイッチング速度が上がるほど立ち上がり時間(ライズタイム)は短くなり、波形に含まれる高い周波数成分が増えます。その結果、より高い周波数帯のノイズが発生しやすくなります。

このような高周波成分の増加により、プローブや配線など測定系の影響を受けやすくなります。測定帯域や接続条件が適切でない場合は、測定系に起因する波形の歪みや誤差が顕在化することがあります。

グラウンドループノイズが測定誤差を生む仕組み

高速スイッチング化が進む中で、課題になりやすいのが、汎用パッシブプローブのグラウンドリードを介して生じるグラウンドループノイズです。低周波の回路では目立たないこともありますが、高周波スイッチング電源の評価では無視できない大きさになります。

グラウンドループノイズとは

配線が閉ループを形成すると、そのループを横切る磁束の変化によって起電力が誘起されます。これはファラデーの電磁誘導の法則によるものです。加えて、オシロスコープと被測定機器など、異なる機器の基準電位(グラウンド)の間に電位差が存在すると、その差によって差動モード電圧が発生し、ループに電流が流れます。

こうして生じた成分が測定信号に重なると、観測波形にスパイク状のノイズや位相ずれといった形で現れます。特に高速スイッチング電源では、スイッチング周波数成分がループに誘導されやすく、リップルやノイズの観測精度を下げる要因となります。

汎用パッシブプローブの限界

汎用パッシブプローブは、グラウンドリードを介して被測定回路のグラウンドに接続します。しかし、このリード自体にインダクタンス成分が存在します。

一般に細い配線は1mmあたり1nH弱程度のインダクタンスを持つとされ、リードが長くなるほどインダクタンスは増えます。数cmから十数cmのグラウンドリードでは、数nHから数十nHに達することもあり、高周波測定では無視できません。

高周波領域では、このインダクタンスとプローブの入力容量が共振回路を形成し、リンギングや波形歪みの原因となります。その結果、本来の信号波形が正確に表示されず、リップルやスイッチングノイズが実際より大きく観測されるなどの誤差が発生します。

汎用パッシブプローブは扱いやすく汎用性が高い一方で、高周波の電源品質測定では原理上の限界があることを理解しておく必要があります。

電源品質測定に適したプローブの種類

電源品質を正確に測定するためには、測定対象に応じてプローブを使い分けることが基本となります。ここではグラウンドループによる誤差を抑える視点から、パワーレールプローブ、差動プローブ、電流プローブの3種類をご紹介します。

パワーレールプローブ

パワーレールプローブは、高感度かつ低ノイズに特化したプローブです。製品によっては、大きなDCオフセットを取り除きつつ、mVオーダーの微小なAC成分を観測できます。そのため、DC電源ライン上に乗ったリップルやノイズ成分を高精度に観測したい場面で力を発揮します。

選定にあたっては、帯域幅、入力換算ノイズ、そして最大入力電圧やオフセット範囲を確認することが重要です。スイッチング電源の出力リップル評価や、DC-DCコンバーターの安定性評価といった用途に適しています。

差動プローブ

差動プローブは、2点間の電位差を直接測定する方式のプローブです。グラウンドを基準としない箇所の信号も取得できるため、グラウンドループによる影響を大幅に低減でき、グラウンドノイズに起因する誤差を抑えた測定が可能になります。

ただし、同相モード電圧を除去する性能を示すCMRR(同相モード除去比)は周波数に依存し、周波数が高くなると除去性能が低下する可能性があるため、注意が必要です。高周波領域や、大きな同相電圧が存在する条件では、CMRRの低下によって誤差が残ることがあります。

差動プローブは高電圧領域にも対応できる製品が多く、インバーター出力やハイサイドスイッチング波形の観測に向いています。

電流プローブ

電流プローブは、電源回路を流れる電流波形を非接触で取得できるプローブです。スイッチング電流や入出力電流の波形評価、効率測定などに用いられます。

電圧波形とあわせて電流波形を取得することで、両者を掛け合わせた電力波形や、回路内で生じる損失の評価が可能になります。電圧だけでは見えてこない、電源品質や変換効率の側面を捉える上で有効な手段です。

なお、電力や損失を正確に評価する際は、電圧と電流の伝搬遅延差を補正するデスキューが前提になります。

グラウンドループノイズを抑えるプローブ選定の基礎

ここでは、プローブ選定のポイントを解説します。

測定対象の電圧レンジや周波数特性、要求精度を踏まえ、最適なプローブを選ぶことが正確な電源品質測定の出発点となります。プローブの選定だけでなく、接続方法や測定環境の整備も同じくらい重要なポイントです。

測定対象を明確にする

はじめに、何を測定したいのかを明確にします。リップルなのか、ノイズなのか、過渡応答なのか、あるいは効率なのか。測定の目的によって、必要なプローブも測定環境も変わってきます。

その上で、測定対象の電圧範囲や周波数帯域を把握し、どの程度の精度が必要かという要件を整理します。測定対象が定まれば、おのずと適切なプローブの種類が見えてきます。

プローブ選定の主な確認項目

プローブを選ぶ際は、いくつかの仕様を確認します。まず周波数帯域は、被測定波形に含まれる主要な高周波成分の5倍程度(いわゆる5倍ルール)を基本とし、要求精度や波形に応じて3〜10倍の範囲で調整します。

次に、入力インピーダンスや差動入力レンジが測定対象に対して十分かを確認します。特に差動プローブでは、入力レンジが測定したい電圧範囲をカバーしているかが重要です。

あわせて、グラウンドリードの長さ、入力容量、CMRR(同相モード除去比)とその周波数特性など、測定誤差につながる仕様も確認してください。パワーレールプローブのようにDCオフセットを与えられる機能の有無も、測定範囲に大きく影響します。

測定時に注意するポイント

適切なプローブを選んでも、使い方を誤れば誤差を十分に抑えることができません。パッシブプローブを使用する場合は、グラウンドリードを可能な限り短くし、ばね型接続(グラウンドスプリング)などを用いてインダクタンスを最小化します。リードが短いほど、共振やリンギングの影響を抑えられます。

より根本的な対策としては、差動プローブを使用し、グラウンドループの影響を受けにくい測定構成にする方法があります。これは特に高周波領域で効果的です。

オシロスコープ側でも、帯域幅、トリガ条件、平均化処理など、測定環境全体の最適化が欠かせません。なお、平均化処理は繰り返し波形のランダムノイズ低減には有効ですが、単発の過渡イベントを見落とす可能性があります。そのため、ピーク検出と平均化を目的に応じて使い分け、測定結果を補完することが効果的です。

適切なプローブ選定で電源品質の正確な評価を実現する

グラウンドループノイズに配慮したプローブ選定は、電源品質測定の信頼性を高め、測定結果や課題の可視化、品質改善につながります。汎用パッシブプローブの原理上の限界を理解した上で、測定対象に合ったプローブを選ぶことが、正確な評価のポイントです。

パワーレールプローブ、差動プローブ、電流プローブを測定対象に応じて使い分ければ、測定系に起因する誤差を抑え、より正確な評価につなげやすくなります。電源回路の高速化が進む現在、適切な測定環境の構築は、製品開発や評価の競争力にもつながる重要な投資です。

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