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AIによる異常検知と従来の閾値監視の違いについて解説

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight AIによる異常検知と従来の閾値監視の違いについて解説

工場設備では、異常を早期に発見し、設備停止や品質不良を防ぐための監視が重要です。従来は、温度や振動、電流値などに対して閾値を設定し、その値を超えた場合にアラートを出す「閾値監視」が広く利用されてきました。

一方、近年はAIを活用した異常検知技術への注目が高まっており、従来よりも高度な監視を実現できる可能性があります。本記事では、AIによる異常検知と従来の閾値監視の違いについて解説します。

従来の閾値監視とAI異常検知の違い

従来の閾値監視は「設定値を超えたか」を基準に異常を判定します。一方、AI異常検知では、通常時のデータ傾向や相関関係を学習し、「普段と異なる状態」を検知します。

閾値監視による異常判定

閾値監視では、「モーター温度が80℃を超えたら異常」「ポンプ電流値が一定値を超えたら異常」といった形で、人が基準値を設定して監視します。仕組みがシンプルで導入しやすく、異常判定の理由も理解しやすいため、現在でも多くの工場設備で利用されています。

しかし設備負荷や周囲温度によって通常値が変動する場合、固定閾値では誤検知や見逃しが発生しやすくなります。例えば、夏場だけモーター温度が高くなる設備では、通常運転でもアラートが頻発する可能性があります。さらに、振動・電流・温度など複数要素が関係する異常では、単一指標だけでは異常を捉えきれないケースもあります。

AIによる異常判定

AI異常検知では、正常時のセンサーデータを学習し、通常状態から外れた変化を異常として検知します。例えば、モーターの異常検知では、温度単体だけではなく、振動・温度・回転数の関係性を含めて分析できます。そのため、従来の閾値監視では見つけにくかった微細な変化を検知できる場合があります。

モーター電流は正常範囲内でも、振動パターンだけが普段と異なるといった複合的な変化は、単純な閾値監視では検知しにくい一方、AI異常検知では「通常とは違う傾向」として認識しやすくなります。

近年は、AIを活用した予兆保全の導入も進んでいます。故障が発生してから対応するのではなく、異常兆候を早期検知し、計画的な保守へつなげる取り組みが増えています。

AI異常検知と閾値監視の得意分野

AI異常検知は高度な分析が可能な一方、従来の閾値監視にもシンプルさという利点があります。監視対象によって適した方法は異なります。

閾値監視は異常判定の理由が明確

閾値監視は構造が単純で、異常判定の理由を理解しやすいという特徴があります。例えば、「温度上限を超えた」「エア圧が低下した」といった明確な異常監視では、従来型監視でも十分対応できます。代表例として、冷却装置の水温監視や、配電盤の過電流監視があります。

また、AIのように学習用データを準備する必要がなく、比較的短期間で導入しやすい点もメリットです。センサーと監視システムがあれば構築しやすいため、現在でも多くの工場設備で利用されています。

AI異常検知は複雑な設備異常に対応

AI異常検知では、複数センサー間の相関や時系列変化を含めて分析できるため、複雑な設備異常に対応できます。例えば、工作機械の主軸異常では、振動・電流・加工音など複数データが徐々に変化する場合があります。こうした変化は従来の閾値監視では見逃されやすい一方、AIでは「普段と違う傾向」として検知できる可能性があります。

ただし、AIを導入すれば必ず高精度になるわけではありません。学習データの品質や運用方法によって性能が大きく変わるため、条件によっては誤検知や見逃しが発生する場合もあります。単独では安定した監視が難しい場合があるため、実際には閾値監視とAI異常検知を組み合わせて運用するケースもあります。

AIによる異常検知と従来の閾値監視の違いについて解説 挿し絵

AI異常検知では運用設計が重要

AI異常検知は高度な分析が期待できるものの、導入すれば自動的に高精度になるわけではありません。学習データやアラート運用など、現場に合わせた設計が重要になります。

学習データの品質が検知精度に影響する

AI異常検知では、学習データの品質が検知精度に大きく影響します。例えば、学習データに季節変動や負荷変動などの通常範囲の変化が十分に含まれていない場合、運用環境の変化を異常として誤検知するケースがあります。また、設備更新やライン変更によって通常状態が変化すると、過去の学習データだけでは十分に対応できない場合もあります。

工場設備では、季節変動や負荷変動によって通常状態が変わることも多く、実運用環境を反映したデータを収集することが重要です。さらに、センサーの取り付け位置やノイズ環境によってもデータ傾向が変化するため、データ取得条件を安定化させることも重要になります。

異常検知後の運用フローを検討する

異常検知では、異常を見つけることだけでなく、その後どう対応するかも重要です。誤検知が多すぎると、現場担当者がアラートを無視するようになる恐れがあり、本当に重要な異常を見逃すリスクも高まります。

また、AI異常検知では、異常判定の理由が分かりにくいケースもあります。「なぜ異常判定されたのか分からない」という問題が起きると、現場で活用されにくくなる可能性があります。そのため、「どのレベルで通知するか」「誰が確認するか」「停止判断をどう行うか」といった運用ルールまで含めて設計することが重要です。

AI異常検知と閾値監視の使い分けが重要

AI異常検知では、通常時のデータ傾向や相関関係を学習し、従来の閾値監視より高度な異常検知が可能になります。ただし、AI異常検知では学習データや運用設計が重要であり、導入すれば自動的に高精度化できるわけではありません。

一方で、閾値監視にはシンプルで分かりやすいという強みがあります。異常条件が明確な設備では、現在でも有効な監視方法です。

監視対象や運用目的に応じて、閾値監視とAI異常検知を適切に使い分けることが重要です。さらに、両者を組み合わせることで、より実用的な設備監視を実現しやすくなります。

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