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SiCに続いてGaNでも存在感を増す中国

産業タイムズ社

測定器 Insight SiCに続いてGaNでも存在感を増す中国

 近年注目を集める半導体市場において、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)といった材料を用いたパワーデバイス(パワー半導体)に関する取り組みが増えています。そのうちSiC市場では、中国企業が大挙して参入し、想定以上に技術レベルを急速に高めた結果、ウエハー、デバイスともに欧米や日本のメーカーを一気にキャッチアップしました。自動車OEM各社のEV戦略が変更された影響もありますが、力を付けた中国企業の登場によって、SiCのウエハー/デバイス価格は急落し、供給は過剰感が強まり、これまで先行してきた欧米や日本メーカーの中には戦略の変更や事業の立て直しを迫られるところが数多く出ています。

 そしてGaN(窒化ガリウム)は、SiCに続いて今後の市場拡大が期待される分野ですが、すでにこの市場でも中国企業の名が頻繁に聞こえるようになってきました。SiCと同様に、現時点では欧米や日本のメーカーが市場や技術をリードしていますが、特にGaN on Siliconパワーデバイスはシリコンベースの既存製造設備を活用できるため、キャッチアップはSiC以上に早くなるかもしれません。

GaNウエハーでは「ナノウィン」

 GaNウエハー市場は、現在のところ住友化学、三菱ケミカルという日本メーカー2社が寡占しています。青色/緑色レーザーダイオードの量産に用いる2インチが現在の主流ですが、GaNウエハー上にGaNをエピタキシャル成長させて製造するGaN on GaNパワーデバイスの実用化に向けて4インチ以上への大口径化が進められており、すでに4インチはサンプル出荷中、6インチは2026年にも登場し、2028年ごろには8インチが登場するのではと目されています。GaN on GaNによって縦型パワーデバイスが量産できるようになると言われており、実現できれば自動車やドローンをはじめとするモビリティーの動力部分をさらに小型化・省エネ化できると期待されています。

 この分野で注目を集める中国企業がNanowin Science and Technology(ナノウィン、蘇州納維科技有限公司)です。中国科学院蘇州ナノテクノロジー研究所の研究プラットフォームをベースとして2007年に設立され、2022年に蘇州工業園区に総建築面積3.4万m²の新本社ビルを建設し、年間5万枚のバルクおよびエピウエハー生産能力を備えています。2インチと4インチの自立基板に加えて6インチの厚膜ウエハー(Siドープ/Mgドープ/非ドープ)もラインアップしており、2および4インチのAlN(窒化アルミニウム)ウエハーも提供。すでに500社以上に供給実績を持つといいます。

 GaNウエハーの転位密度は2012年時点で10の6乗台でしたが、2014年に10の5乗台、2016年には10の4乗台まで低減することに成功し、量産出荷を開始しました。2020年からは本格的に海外市場へのウエハー供給を開始し、これに伴い、レーザーダイオードの国産化に取り組む中国企業が増え、「品質レベルが高まってきたことで、日系の中堅レーザーダイオードメーカーと競合するケースが増えている」(業界関係者)といいます。さらに直近では、転位密度をR&Dレベルで10の2乗台まで向上し、4および6インチの量産準備を整えており、2026年には8インチまで量産可能な体制を整えることを目標に掲げています。

GaNパワーデバイスでは「イノサイエンス」

 GaNデバイスに関しては、米Navitas Semiconductorや米Transphorm、カナダのGaN Systemsといった新興ファブレスがモバイル機器用の急速充電器向けにGaN on Siliconベースの横型パワーデバイスを商用化して市場を形成しました。徐々に高耐圧化が進んできたことで、近年ではEV用の急速充電設備やAIデータセンター向けの電源用途に拡大していくと期待されるようになり、独Infineonや米Onsemi、米テキサスインスツルメンツといったIDM(垂直統合型デバイスメーカー)も積極的に事業拡大を模索するようになりました。日本企業では、Transphormを買収したルネサス、台湾の大手電源メーカーと連携しているローム、パウデックを買収したサンケン電気らが事業拡大に取り組んでいます。

 この分野では中国のInnoscience(イノサイエンス、英諾賽科)が積極的な事業拡大を進めています。同社は、8インチでGaNデバイスを量産することを念頭に置いたIDMとして2015年12月に設立され、世界の有力装置メーカーと協力関係を結んで事業を拡大してきました。2017年に珠海工場、2020年に蘇州工場を稼働させ、現在は珠海工場と蘇州工場に合わせて1.25万枚の月産能力(2024年7月末時点)を保有しています。

 同社はOPPOなど中国の有力モバイル機器メーカーを主要顧客として30~650V製品を生産し、2023年8月に累計出荷3億個を達成。2023年12月には、車載LiDARなど向けにAEC-Q101認証に合格した製品を発表し、車載用にもカバー領域を広げています。さらなる需要拡大に対応するため、今後5年間で月産能力を7倍の7万枚(珠海5000枚+蘇州6.5万枚)へ高めていく方針を打ち出しており、これに向けて2024年12月に香港証券取引所へ株式を上場し、総額約14億香港ドル(約280億円)を調達しました。

 また、2025年12月にはOnsemiとGaNパワーデバイスの生産拡大に向けて覚書を締結しました。具体的には、40~200VのGaNパワーデバイスに関して、Onsemiはイノサイエンスの8インチラインに生産を委託し、より価格競争力の高い低~中耐圧GaNパワーデバイスを産業、自動車、通信インフラ、コンシューマー、AIデータセンター市場向けに提供できるようにする方針です。Onsemiは統合システムとパッケージング技術を提供して本件に協力する考えで、2026年前半にもサンプル出荷を開始したい意向です。

 イノサイエンスは、スイスのSTマイクロエレクトロニクスとも開発・製造で提携しています。互いの前工程拠点で自社のGaNウエハーを利用できるようにするというもので、サプライチェーンの柔軟性を高める戦略だといいます。TSMCがGaNファンドリーから撤退した今、300mmでの量産やさらなる高耐圧GaNにスムーズに移行したいIDMにとって、イノサイエンスは低~中耐圧のGaNパワーデバイスを8インチで効率的に量産する際の最適なパートナーとして映っているのかもしれません。

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