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AI市場の拡大を見据え米国で4領域の投資が拡大

産業タイムズ社

測定器 Insight AI市場の拡大を見据え米国で4領域の投資が拡大

 AIがさまざまなテクノロジーの中核技術となりつつある中、米国の大手企業がAI関連への投資を加速させています。AI技術の開発にはさまざまな周辺技術やインフラが求められますが、これらの企業の動きを見ると、半導体、データセンター(DC)、ロボティクス、電力に関する取り組みが増えており、これらは今後投資がさらに増える重要領域となりそうです。

 こうした流れを受け、米国の大手企業においてAI技術の開発が2026年もさらに活発化することが予想される中、2026年における設備投資計画を見ると、アマゾンが前年比53%増の2000億ドル、グーグルなどを傘下に持つアルファベットが1750億~1850億ドル(2025年は914億ドル)、メタが1150億~1350億ドル(2025年は約722億ドル)といずれも大幅に増やすことを計画しています。その多くがDCなどのAIインフラ関連に充てられるとみられ、マイクロソフトも2026年6月期のAI関連投資として800億ドルを見込んでいます。

 その中でグーグルは、米テキサス州のアームストロング郡およびハスケル郡に新しいDCの建設を計画するなど、新しいクラウドおよびAIインフラの構築を進めています。新設するDCは合計3施設を計画しており、アームストロング郡で1施設、ハスケル郡で2施設を整備するもので、本件に合わせて、テキサス州はエネルギー開発業者との電力購入契約を通じて、グーグル向けに6200MW以上の新規発電容量を確保します。こうしたエネルギーの確保をするため、グーグルはハスケル郡に新設するDCのうち、1施設は太陽光発電施設や蓄電施設を併設します。

半導体の独自開発や連携が拡大

 こうしたAI DCの中核部品である半導体についても米国の大手企業では自社開発が進んでおり、アマゾンは2025年12月に開催された自社イベントにて、3nmプロセスを用いたAI学習用チップ「Trainium3」を発表。前世代品と比較して、計算性能が最大4.4倍、エネルギー効率が4倍向上し、エヌビディアの最新アーキテクチャー「Blackwell」を用いた製品に並ぶ性能を持ちます。また、グーグルは独自のAIチップ「TPU」の第7世代となる「Ironwood」を2025年11月に発表。学習と推論の両方で従来比4倍以上の性能を持つといいます。

 メタは「MTIA」という独自のAIチップを開発しており、2026年3月に今後2年間で4つのチップを開発する方針を発表しました。加えて、メタは半導体企業との連携も拡大しています。その一つとして、エヌビディアと新たな戦略的パートナーシップを2026年2月に締結し、メタはエヌビディアの最新アーキテクチャー「Blackwell」および「Rubin」を用いたGPUを数百万基導入する方針を示しました。また、メタ社のネットワークスイッチを制御および管理するためのソフトウエア群に、エヌビディアのイーサネットスイッチを統合。さらに両社は、メタのデータセンター運用アプリケーション向けにArmベースのエヌビディア製CPU「Grace」を展開するパートナーシップを以前から結んでおり、今後エヌビディアの次世代CPU「Vera」に関しても連携します。

 さらに、メタはグーグルとも提携し、メタがグーグルのAI半導体「TPU」をレンタルする方針だとされ、その規模は数年間で数十億ドル規模になるとされています。また、メタは半導体大手のAMDとも連携し、AMD製GPUを使用した最大6GWのAIインフラの構築を計画。メタはこれらの取り組みを2026年後半から開始する予定で、メタとAMDが共同開発したラックスケールアーキテクチャー「Helios」にAMD製GPUを搭載します。なお、連携の一環としてAMDはメタに対し、AMDの普通株式を1株あたり0.01ドルで最大1億6000万株(AMD株の約10%分に相当)付与する業績連動型ワラント(行使価格修正条項付き新株予約権)を発行しました。ワラントはGPUの出荷に関する一定値を超えた際に順次付与され、1GW分のGPUがメタ社に出荷された際に最初の権利が付与されます。ワラントの満了期限は2031年2月23日。最終権利の確定には6GW分の購入に加え、AMDの株価が600ドル(提携発表日の終値は213.84ドル)に上昇することなどが設定されています。

 ちなみに6GW分のGPUは購入価格に換算すると数百億ドルに上るとみられますが、メタは非常に安価でAMDの株式を大量に取得できるため、取得する株式の価値でGPUの購入費用を相殺できる可能性があります。

グーグルは電力会社を買収

 AI DCに関してチップと同様に重要度が高まっているのが電力の確保です。調査会社のガートナーによると、DCの電力消費量は2025年の448TWhから2030年には980TWhに増加し、約2倍になると予想されています。そのうちAI DCの電力消費は2025年の93TWhから2030年には432TWhへと約5倍に増加すると見込んでいます。こうした中グーグルは、エネルギーインフラ開発大手のIntersect社を47.5億ドルで2025年12月に買収。これにより、DCの建設と同時に、専用の発電所を自前で開発および運用する体制を整えました。また、SMR(小型原子炉)の電力購入契約を締結する米国の大手企業も増えており、さらにHelion Energyをはじめとした核融合の研究開発会社へ投資するケースも出てきています。

 そのほかの傾向としては、フィジカルAIに関する動きが増えています。物理的な現実世界を認識・理解して複雑な行動にも対応するAIで、中国ではエンボディドAIとも呼ばれることが多い技術です。こうしたAIは、自動運転を含むロボティクス技術と組み合わせて用いられるため、米国の大手企業ではフィジカルAI基盤モデルの構築を含めたロボティクス技術の開発も進み始めています。

テスラはヒューマノイドに注力

 その中で今後大きな動きを見せそうなのがテスラです。同社は2025年10~12月期の決算発表で、米カリフォルニア州にあるEV生産ラインの一部をヒューマノイドロボットの生産ラインに転換することを発表するなど、フィジカルAI関連企業へシフトする動きを見せています。具体的には、テスラは独自のヒューマノイドロボット「Optimus」(オプティマス)の本格生産に向けて、米カリフォルニア州フリーモントにある工場の一部生産ラインを転換します。量産は2026年末から開始されるとみられ、将来的には年間100万台を生産できる体制を整備する考えです。

 フリーモント工場は、テスラの「モデルS」「モデルX」「モデル3」「モデルY」といったEVを生産している拠点です。このうち、初期モデルであるモデルSおよびモデルXの生産を終了し、その生産ラインをオプティマスの生産ラインへと切り替えます。オプティマスについては、第3世代(オプティマス3)の公開に向けた準備も進めているとされます。オプティマス3は人間の行動を観察して学習でき、作業のデモンストレーションを行ったり、口頭で作業内容を説明したり、映像で作業を見せたりするだけで、その作業を実行できるようになるといいます。なおテスラは現在、自社工場内における簡易な作業を旧モデルのオプティマスで行っていますが、オプティマス3の開発を進める中で、旧モデルの活用は廃止する予定です。

 オプティマスは既存のEVとサプライチェーンが異なるため、新しいEV車種生産のケースに比べて、生産性の向上などに時間を要する見通しですが、イーロン・マスクCEOは「私はフリーモントでオプティマス3を年間100万台生産できると確信している」としています。なお、テスラは2026年における設備投資として200億ドル以上を見込んでおり、2025年の水準(85億3000万ドル)から大幅に増やす計画です。その中にはオプティマスの生産ライン整備のほか、独自のAIコンピューティングクラスター「Cortex」の構築なども含まれており、Cortexの計算資源は自動運転関連のほか、オプティマスの学習用途にも活用されるとみられます。

 なお、イーロン・マスクCEOは、ヒューマノイドロボット市場における最大の競争相手は「間違いなく中国」とした上で、「オプティマスは私たちが知る限り、中国で開発中のどのロボットよりもずっと優れた能力を持つものになると考えている」とコメントしています。優位性を出せる要素としては、現実世界で機能するAIやハンドをはじめとした器用さなどを挙げ、そこに生産規模の拡大が加わることで、有利な位置に立てるとみています。ちなみに、イーロン・マスクCEOは2026年1月に開催された「ダボス会議」(世界経済フォーラム年次総会)において、オプティマスに関して2026年は工場など産業用途での展開を中心に進め、2027年末までに一般販売を開始する方針を明らかにしています。

 また、イーロン・マスクCEOは「半導体関連に最も時間を費やしている」と述べるなど、独自のAI半導体開発も強化しており、次世代品の「AI5」はTSMC、その次の「AI6」はサムスン電子に製造を委託します。加えて、イーロン・マスクCEOは「3~4年後にテスラの成長を阻害する要因は何だろうと考えてみると、それはチップ生産だと思う」とし、自社で半導体工場を運営する可能性についても言及するなど、半導体分野で今後存在感が出てくる可能性もあります。

 こうした状況を総合すると、今後のAI競争に勝ち抜いていくためには、AIの研究開発を支える半導体、DC、ロボティクス、電力4領域を同時並行で進めていく必要があり、いずれも巨額投資が必要なことから米国の大手企業など資金力を持つ企業が牽引することになります。その一方で、米国の大手企業とはいえ、すべてを自社でまかなうことは現実的ではないため、各領域でいかに連携体制を構築していくかがAI市場における優位性を確保するための重要なポイントとなるでしょう。

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