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中国でAI半導体企業が次々と上場

産業タイムズ社

測定器 Insight 中国でAI半導体企業が次々と上場

 中国において半導体関連企業によるIPO(新規株式公開)が増加しています。AI市場がグローバルで拡大する中、高性能GPUなどAI半導体関連を手がける企業のIPOが特に目立っています。半導体産業の“自給自足”に向けて中国政府による支援が拡大する中、IPOで調達した資金も活用することで、各社は事業のさらなる拡大に向けた取り組みを進めています。

 米国との貿易摩擦が続く中国は近年、半導体産業の国産化に向けたさまざまな取り組みを近年支援しています。AI市場の拡大に伴い、米国政府が高性能半導体の中国に向けた輸出を規制する中で、中国政府はエヌビディアやAMD製品への依存を減らし、国産代替品の採用を促す方針を示しています。こうした動きを背景に、AI半導体を手がける中国企業が急速に増えています。

 その中でIPOに至る企業も出てきており、2025年末にはMoore ThreadsとMetaXが上海証券取引所の科創板に上場しました。いずれも2020年に設立され、高性能GPUなどAI処理に使用する半導体の設計を手がけている企業であり、設立者が半導体大手の元幹部(Moore Threadsはエヌビディア、MetaXはAMD)という点も共通しています。性能については、両社ともに「国際的な主力GPU製品に完全に匹敵する」としており、1~2世代前のエヌビディア製品が持つ性能と同等とみられます。上場によってMoore Threadsは日本円で約1700億円、MetaXは約900億円を調達したとみられ、2026年は事業スピードをさらに加速させる考えです。

 そのほかにも高性能GPUを展開するBiren Technologyが2026年1月2日に香港証券取引所で上場したほか、中国インターネット大手Baiduの半導体設計部門を母体とし、AI処理用の半導体設計を手がけるKunlunxinも2026年1月上旬に香港証券取引所へIPOを申請しました。

 2025年12月には、中国への出荷が規制されていたエヌビディアのAI半導体「H200」に関連する製品について、米国政府が条件付きで中国への出荷を許可する方針を示すなど、中国のAI半導体企業にとって決して追い風ばかりではありません。一方で、中国工業情報省傘下のシンクタンクのCAICT(中国信息通信研究院)によると、2025年9月時点で中国のAI企業数は5300社を超えるとされており、 また中国国内ではAIデータセンターの整備が急速に進んでいます。こうした背景を踏まえると、AI半導体の需要がさらに拡大することが予想されることから、さらなるIPOが登場する可能性もあるでしょう。

 AI関連以外のIPO企業を見ると、中国のシリコンウエハー製造最大手のESWINが2025年10月に上海証券取引所の科創板に上場しました。中国では、米国のエンティティリスト(輸出管理法に基づき、国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして指定した企業のリスト)に掲載されている半導体関連企業が少なくありません。そうした企業は米国製材料や技術の使用が制限されています。そのため、中国国内でのサプライチェーンの完結に向けた材料を含む周辺産業の企業育成が進んでおり、半導体デバイス以外の企業による資金調達も今後加速することが予想されます。

 2025年10月に中国共産党が基本方針を採択した次期中期経済目標「第15次5カ年計画」(期間は2026~2030年)では、半導体などを含む重要科学技術の自立・自強を加速する方針が掲げられています。そのため中国における半導体関連の国産化はさらに加速することが予想され、それに伴い2026年もIPOを行う企業が増えることになるでしょう。

中国の製造国産化が着実に進行

 中国の半導体製造に目を向けると、半導体の国産化政策を示した「中国製造2025」の発表から10年が経ち、レガシー半導体(旧来型技術を用いて製造される車載、家電、IoT機器、産業機器などに不可欠な汎用チップ)においては強固なサプライチェーンが築かれました。特に半導体製造能力に関しては2021~2025年の5年間で生産能力が倍増しました。YMTCやCXMTなど国産メモリーの商業生産が始まり、SMIC(中芯国際集成電路制造)や華虹半導体などのファンドリーが中国ファブレスからの受託量を拡大したことが大きいです。これらの中国企業だけでいえば、この5年間で生産能力は4倍に拡大しました。

 2000年代に入った頃、世界の半導体製造はすでに300mm製造にシフトしていました。中国では1999年に200mm製造の量産(NECと華虹集団の共同出資の華虹NEC)がやっと始まったばかりで、300mm製造は大きく出遅れました。

 しかし、中国が2001年にWTOに加盟すると、世界は中国の生産力のポテンシャルを見出し、アパレル製品や機械、家電などのさまざまな工場が建設されました。この頃に半導体工場の投資もあり、現在の中国ファンドリー最大手のSMICが誕生しました。

 SMICでの量産が始まった2005年当時、中国の300mm工場の月産能力は1万枚しかありませんでした。2000年代はPCの隆盛期で、米インテルやTSMCなどの大手ファンドリーが生産能力を急拡大していました。しかし、中国は2015年になっても月産能力が30万枚にとどまっていました。この時期、TSMCは1社だけでもこれ以上の生産能力を保有していました。しかも、中国企業だけで集計すると、同10万枚しかありませんでした。この当時は中国にある半導体工場の生産能力の3分の2は、海外の半導体メーカーの中国現地工場に占められていました。

2016年から半導体工場投資が加速

 中国政府は2015年、ハイテク技術戦略をまとめた「中国製造2025」を発表し、中国は「世界の(下請け)工場」から脱却して世界水準の製品とサービスを生み出す「製造強国」への転換を加速しました。「中国製造2025」では、世界の頂点に立つべく重点的に成長させる10大分野が指定され、半導体や5G通信が含まれる情報・通信技術はその筆頭に挙げられました。中国政府は半導体工場の投資に対して優遇政策や補助金などを提供し、半導体工場の建設ラッシュが始まりました。

 この大量補助金拠出時代に誕生したのが、3D-NAND製造のYMTC(湖北省武漢市)とDRAM製造のCXMT(安徽省合肥市)です。両プロジェクトが発表された当時、日本の半導体業界関係者はおそらく誰もこの2社が現在のようなメモリー市場の一角を担う存在になると確証を持っていませんでした。メモリー市場は世界大手数社に寡占化され、新規参入は困難だと思われていたからです。

 中国国内での先端メモリーの製造は2017年よりも以前から行われていましたが、その実態はサムスン西安(NAND)やSKハイニックス無錫(DRAM)、当時のインテル大連(NAND、現在はSKハイニックスに売却)などの海外のメモリー企業が、巨大市場である中国で現地供給体制を構築していたにすぎませんでした。

 YMTCとCXMTは後発ながら2018年に工場を稼働し、3年もたたずに新工場を着工するペースで生産体制を増強していました。2018年には中国のメモリー生産能力に占める中国企業の比率は2%しかありませんでしたが、2020年には一気に24%に急拡大し、2025年には43%と半分近くになりました。2020年以降に米中関係の悪化が際立つようになると、海外メモリー3社は中国工場の設備投資を縮小し、新棟建設や新ラインの構築をしなくなり、中国企業の投資ばかりが目立つようになりました。

工場投資バブルを生き残ったファンドリーは

 中国のメモリー工場は2015~2025年に平均年率18%の成長を続けましたが、ロジックファンドリーはこれを超える同27%の成長を続けました。中国政府が進める「半導体の国産化」という錦の御旗を掲げることで、以前よりずっと地方政府や半導体ファンドから工場投資の資金を集めやすくなっていたからです。SMICや華虹集団のような大手が工場投資を行う一方で、数多くの新興ファンドリーが誕生しました。

 2021年以降に300mmのロジック工場は20~30工場が立ち上げられました。中国では既存メーカーから技術集団がスピンアウトして新興プロジェクトを立ち上げることが多く、このことが新規参入や新工場投資を容易にしています。

 しかも、米国が対中半導体装置の輸出規制をかけ始めたことにより、「買えるうちに装置を購入しなければ、次のチャンスがなくなるかもしれない」という警戒心から、実需以上の半導体生産ラインが誕生しました。2024年頃からは装置を納入してもセットアップせずに木箱の中に入れたままというケースも見かけるようになりました。

 中国ではさまざまな補助金がありますが、それでも半導体工場は歩留まりと稼働率がかなり高くないと黒字化できない宿命にあります。使いもしない装置を過剰に抱えて、しかもファブレスからの生産受託案件が増えなければ、事業投資を続けることは極めて困難になります。そのため、投資を継続できる企業と停滞する企業の二極化も進んでいます。

 結果的に成長路線を走り続けているのは、大手ファンドリーのSMICや華虹集団、ネックスチップ(晶合集成電路、合肥市)などとなりました。2023年から深圳エリアで300mmファンドリーやメモリー工場の投資が数多くありましたが、「当初計画どおりの量産や能力増強を続けられている企業はほとんどない」のが実態です。

 2024年の中国の半導体工場投資は、実需以上の装置が納入された〝爆投資″ともいえる1年でした。その反動で2025年は前年割れすると思われていましたが、「入れられるうちに装置を入れておかなければ…」という状況が続き、結果として2025年は前年割れすることはありませんでした。

 2025年末に米中関係が好転して、対中輸出規制が1年延期されることが決まり、「2027年には入れられなくなるかもしれないから、2026年のうちに入れてしまおう」という状況に発展しており、2026年も中国の半導体装置市場は安定しそうです。ただし、バブルを膨らませ続けている状況ともいえるため、規制が実施される2027年により大きな反動が出ることが懸念されます。

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