測定器 Insight

次世代通信技術5GがIoT時代に生きる理由とは?
~自動運転や遠隔ロボット操作に欠かせない5G~

 LTEに代わる新しい移動通信システムである5Gは、携帯電話だけでなく、IoT用途をも想定して策定された規格です。 5Gの超高速、超低遅延、同時多数接続などの特長がIoT機器活用を加速するのはなぜでしょうか。

5G通信規格はIoT通信のニーズを見据えて策定された

 現在の日本ではほぼ誰でも持っているほど広く普及している携帯電話。 その新しい通信規格「5G(ファイブ・ジー)」が始まろうとしています。 5Gとは正式名称を第5世代移動通信システム(5th Generation)といい、携帯電話などの「移動通信システム」の第5世代という意味です。 移動通信システムは1979年に始まった自動車電話サービスを第1世代として進化を続け、現在は多くが第4世代に移行したものの第3世代もまだ併用されている状況にあります。 第4世代の通信方式は一般にはLTE(※1)という名前で知られています。

「図1:移動通信システムの進化」を見ると、デジタル通信が可能になった第2世代から第5世代(5G)までの30年間で最大通信速度が約10万倍へと高速化してきたことが分かります。 5Gでは1Gbps~10Gbpsと、有線LAN並みの通信速度が達成できる見込みです。さらに5Gにはこの「超高速」に加えて「超低遅延」「多数同時接続」という特長もあります。 特に後者の二つは携帯電話にとどまらずIoT通信のニーズも見据えた要求事項であり、5G規格はそれを満たすために策定されました。

ロボット Insight レジリエントな社会をつくる災害対応ロボットの現在地

(図1:移動通信システムの進化)

通信速度とは違う通信性能の指標、「遅延」とは?

 移動通信システムはこれまで携帯電話を主な用途として発展してきたため、主に「通信速度」の向上に焦点が当たってきましたが、IoT向け通信では「遅延」の小ささも重要です。 遅延は通信の性能を表す指標のひとつで、送信したデータが受信側に届くまでのタイムラグのことをいいます。それに対して「通信速度」は、一定時間内に送れるデータ量のことをいいます。

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(図2  「通信速度」 と「遅延」の違い)

図3は低遅延通信のイメージで、図2に比べると一定時間内に送れるデータ量は同じですが、最初の「A」が届くまでのタイムラグは小さくなっています。

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(図3 低遅延通信のイメージ)

図4は高速通信のイメージで、タイムラグは変わりませんが一定時間内に送れるデータ量が多くなっています。

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(図4 高速通信のイメージ)

IoT向け通信で超低遅延が必要な理由とは?

 第4世代(LTE)までの移動通信システムの技術革新では主に「通信速度」の向上に焦点が当たってきましたが、5GではIoT向けを想定して「遅延を小さくすること」つまり「超低遅延」が求められています。 これは、例えば自動運転のような用途では遅延の大小が安全性に直結するためです。 一般に、人が会話をする場合は200ミリ秒程度まで遅延があっても大きな問題はありません。 例えばIP電話の品質基準で「携帯電話並み」とされるクラスBは「端末間の遅延時間150ミリ秒以下」と規定されています。 これに対して例えば自動運転車では複数の車両が隊列を組んで自動走行するケースが想定されており、これを安全に制御するためには前方で事故などの異常事態が起きたときにそれをいち早く後方の車両に伝える必要があります。 このような「車車間通信」では遅延が短いほど安全性が高まります。 そのため5Gでは1ミリ秒程度の超低遅延を目標としていますが、これは現行のLTE規格が10ミリ秒程度であるのに比べて10倍の低遅延化となります。 自動運転の他にも遠隔ロボット操作など、IoTでは「人間の会話」とは桁違いの低遅延が必要とされるケースがあります。 そこで5G規格はIoT用途の拡大を見据えて超低遅延な移動通信システムを目指して策定されました。

IoT向け通信で多数同時接続が必要な理由とは?

 「人間が会話をする」用途の携帯電話は、個人用と会社用などで一人が二つ以上持つケースはあっても、おおむね人間の数に制約されており、人口以上に極端に増えることはありません。 しかしIoTでは映像・振動・温度・音響あるいは電力など、センサーやアクチュエータが一つでもあればそれをIoT化できるといっても過言ではないため、 例えば自動車・冷蔵庫・エアコンのような大きなものから、物流タグ・スマートウォッチ・カメラ・ペット餌やり機などの小さなものまで、IoTデバイスは人間の数と無関係に増える可能性があります。

そこで重要になってくるのが「多数同時接続」です。5Gでは現行LTE規格の約100倍にあたる、1平方kmあたり100万台の接続機器数が可能になります。 現行の携帯電話では例えば花火大会などの大規模なイベント参加時、災害発生時などに携帯電話がつながらずに困った経験のある方も多いことでしょう。 本来、「人間が短時間会話する」用途を想定して設計されている電話システムは、「多数同時接続」には不向きです。 IoT活用が本格化するとこれがボトルネックになると考えられるため、5Gでは多数同時接続を可能にすることで、IoT機器への活用を目指しています。

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(図5 多数同時接続の必要性)

新たなニーズに5Gの「超高速」は欠かせない

 5Gは最高伝送速度10Gbpsと、現行LTEが100Mbps~1Gbps程度なのに比べて約10倍~100倍の「超高速」通信を実現します。 大量のデータ通信が必要な用途の代表格は高精細動画であり、携帯電話などのモバイル機器を通じてインターネットで動画を見るニーズが近年急成長を続けています。 通信機器メーカー、エリクソンは動画トラフィックが2024年まで年間約35%増加を続けると予測しています。

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(図6 動画トラフィックは2024年まで年間35%増加)

既に2018年末から衛星放送で4K・8Kといわれる高解像度の番組配信が始まっており、対応画像を撮影可能なビデオカメラも市販されています。 Web会議、遠隔ロボット操作やVR/AR、ゲームなど高精細動画を必要とする新たなニーズにも、5Gの超高速性は欠かせないものといえます。

5G通信サービスの展開を受けてIoTも更なる発展を遂げることでしょう。

※1 LTE:厳密には第3.9世代だが、一般には第4世代とみなされる LTE-Advanced:第4世代

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