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再編が進むポリシリコン市場

産業タイムズ社

測定器 Insight 再編が進むポリシリコン市場

 太陽電池(PV)の原材料であるポリシリコンの生産調整が進んでいます。PV用ポリシリコンの大半を生産する中国では、乱立するポリシリコン企業を統廃合する動きが出ており、生産量や供給量を最適化することで、価格の安定化を目指しています。近年、PVの導入量は価格下落を追い風に急増していますが、生産調整によるポリシリコンの価格上昇が、果たしてPVの普及拡大に吉と出るか、凶と出るか注目されています。

 近年、次世代型PVとしてペロブスカイト太陽電池(PSC)が注目されており、国内外で商業化の取り組みが活発化しています。もっとも、昔も今もPVの主流は結晶シリコンで、IEA-PVPS2024の分析によると、PVモジュールの生産量の98%が結晶シリコンです。

 そして、サプライチェーン全体を眺めてみると、ポリシリコンの生産量の92%を中国が占めており、セル、モジュールについても、中国のシェアはそれぞれ91.8%、84.6%と極めて高いです。こうした状況を見ると、PVのサプライチェーンは中国が完全に支配しており、現実的には他国が参入する余地はほぼないと言っていいでしょう。

PV関連企業の業績が低調

 結晶シリコンが高い競争力を維持し続ける最大の要因は、変換効率が高く、耐久性に優れることにあります。現在、結晶シリコンベースのPVセルはTOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contact)、HJT(ヘテロ接合)、さらには、HJTとIBC(バックコンタクト)を組み合わせたHBCで高い変換効率を実現しており、中国LONGiは、2025年4月にHJTとIBCを融合したHIBC(Hybrid Interdigitated-Back-Contact)セルで27.81%(セル面積133.63㎠)の変換効率(単接合型の結晶シリコンでは世界最高効率)を達成しました。

 長年の課題だったコストも、近年は急速に下がっています。2020~2022年ごろまではWあたりのコストが0.2ドル前後で推移していましたが、2024年には0.08ドルまで下落。PVのコストが下がったことで、ほかの電源に対する競争力が向上し、PVの導入量がさらに加速するという好循環が生まれました。

 IEAの速報値では、2024年における世界のPV導入量は最大602GW(SolarPower Europeは597GWと算出)で、2023年比で3割増加しました。前年から成長率は鈍化したものの、2024年も高い成長率を達成。さらにブルームバーグNEFによると、2025年のPV導入量は655GWだったと試算されており、年間ベースで過去最高を更新したとみられます。

 このようにPVの導入量が急増する一方で、PV企業の業績は芳しくありません。Jinko Solar(中国)は2024年度(2024年12月期)のPVモジュールの出荷量が業界トップの92.9GWで、前年比では2割増加しましたが、売上高は逆に2割減少しました。モジュール価格の下落で粗利益率が悪化したことから、営業損益は4億6900万ドルの損失でした。

 2025年度に入っても業績の低迷は続き、粗利益率がマイナスになったことで、再び営業損失を計上しました。Canadian Solarも2025年の粗利益率が悪化し、四半期ベースで営業損失を計上する状況がみられ、LONGiも損失を計上する状況です。

 ポリシリコン企業も業績が低迷しています。中国のPV用ポリシリコン大手のDaqo New Energyは、2024年度(2024年12月期)の売上高が前年度比で半減し、粗利益率が大幅なマイナスになったことから、5億6400万ドルの営業損失となりました。ポリシリコンの平均販売価格は前年同期から半減(5.66ドル/kg)し、22年比では8割近く下落しました。

 2025年度も業績低迷が続き、1~3月期、4~6月期のいずれも1億ドルを超える営業損失でした。1~3月期の粗利益率はマイナス65.8%で、4~6月期はマイナス108.3%まで悪化しました。4~6月期の販売量は前年同期比6割減で、2万tを大きく割り込みました。4~6月期の平均価格は4.19ドル/kgで、2025年に入っても下落が続いています。Wacker Chemie(ドイツ)もポリシリコン事業の売上高の減少に伴い、EBITDAも減少しています。

設備の統廃合で生産能力削減

 Bernreuter Research(ドイツ)の調査によると、PV用ポリシリコンは2021~2022年に需給が逼迫し、スポット価格が39ドル/kgまで上昇したことで、多くの中国企業がポリシリコンビジネスに新規参入しました。そして、既存メーカーの生産拡大も相まって、ポリシリコンの生産能力は急速に拡大し、2024年末の時点で生産能力は325万tまで膨れ上がったと分析しています。中国のシェアも93.5%(PV用では95%)に達しました。

 ところが、生産能力の急拡大により、2024年末には在庫が40万tまで積み上がり、中国における市場価格は4.5ドル/kgまで急落しました。販売価格がキャッシュコストを下回ったことで、多くのポリシリコンメーカーは損失を計上する結果となりました。

 こうした状況を改善するため、2024年末には中国の大手ポリシリコンおよびPV企業33社が減産に合意したとされています。海外メディアなどの報道によると、業界再編の一環として、ポリシリコンの生産能力の約3分の1を買収して閉鎖するため、中国企業各社が500億元(70億ドル)規模の基金創設を協議しているとされます。なお、閉鎖の規模は100万t規模になる見込みです。

 ポリシリコンの再編は今回が初めてではありません。Bernreuter Researchによると、2010~2013年に実施された第一波の再編では13万5000t、2018~2020年の第二波では27万5000tがそれぞれ削減されました。しかし今回の再編では、過去の規模を大幅に上回る能力削減が計画されており、競争力のない多くの企業が市場撤退を余儀なくされる見通しです。

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