ホーム測定器独自OSでフィジカルAIを実現するMujin

測定器 Insight

独自OSでフィジカルAIを実現するMujin

産業タイムズ社

測定器 Insight 独自OSでフィジカルAIを実現するMujin

AI市場が拡大する中、2026年における注目テーマとして、フィジカルAIを挙げる声が大きくなっています。フィジカルAIは、AIがロボットや機械などの「身体」を通じて現実世界(物理空間)を認識し、自律的に判断して行動する技術です。カメラやセンサーを通じて周囲を理解して、AIがどう動くか判断し、ロボットや機械が、掴む、運ぶ、組み立てる、移動するといったさまざまな動作を行います。こうしたフィジカルAIの市場形成に向けた動きが2025年から増えており、特に大きなトピックとして挙げられるのが、ロボット制御ソフト開発のMujin(ムジン)が2025年に日本国内のスタートアップ企業の中で最大の資金調達を行ったということが挙げられるでしょう。

コントローラーからプラットフォームに進化

株式会社Mujinは、革新的な産業用ロボットコントローラー(RC)の開発・製造・販売を手がける企業として2011年に設立されました。同社のRCは、リアルタイム動作生成、干渉回避、動力学考慮、モーター直接制御、センサー同期制御、リモートアクセスなどを標準搭載しており、EthernetかEtherCATで通信できるサーボアンプがあれば、ロボットメーカーの既存のプログラム言語は一切使わず、数ミリ秒ごとに直接制御できることが特徴です。ロボットの機種、軸数、機械構造は問わず、即座に運動学解析を実施し、干渉回避などを考えた上でロボットに自分で動作を一瞬で考えさせることができ、ファナック、不二越、川崎重工業、安川電機、オムロン、三菱電機、デンソーウェーブ、ABBなどのロボットに対応しています。

このRCの性能を訴求するため同社は、ばら積みされたワークをロボットが自ら考えてピッキングできる技術を世界で初めて開発し、2015年1月から販売を開始。インターネット通販大手のアスクル、日用品卸売大手のPALTACの大型物流センター「RDC新潟」、アイシンの製造物流センター、坂塲商店などで採用されており、海外でも中国・上海市で稼働中の中国EC(電子商取引)大手「JD.com」の大型物流施設において、Mujinのロボットソリューションが活用されています。

そして近年は独自のRCを活用した知能ロボットシステムの販売に加え、知能ロボットとAGV(無人搬送車)を組み合わせたソリューションなども提供しています。また従来は製造現場や物流施設における一部工程を自動化することが多かったですが、直近はMujinのRCが自動化のプラットフォームへ成長したことで、既存のコンベヤーや各種アクチュエーターも同社のコントローラーと接続し、生産ライン全体の統合制御やデータの見える化、リモート運用といったトータルで最適化するような取り組みも増えており、さまざまな自動機器を共通のデジタル環境上で統合制御する統合型オートメーションプラットフォーム「MujinOS」を軸とした事業へと変化し、トヨタ紡織、SUBARU、SCREENセミコンダクターソリューションズ、アイシンなど大手企業でも採用されています。そしてMujin OSはフィジカルAIを実現するOSという存在になっています。

大手を中心に多数の企業が出資

こうしたMujinの事業にはさまざまな企業が注目しており、Mujinは2012年に7500万円、2014年に6億円の資金調達を実施。2019年には三井住友銀行と総額75億円の特殊当座借越契約を締結しました。そして2023年にはSBIインベストメント、ペガサス・テック・ベンチャーズ、アクセンチュア、ウーブン・バイ・トヨタ(トヨタ自動車のモビリティー技術開発会社)の代表取締役CEOであるジェームス・カフナー氏、オランダの投資会社である7-Industries Holdings B.V.、日本郵政キャピタルなどによる第三者割当増資を行い、150億円を調達しました。

さらに、2025年12月、NTTグループ(NTT、NTTドコモビジネス)、カタール投資庁、三菱HCキャピタルリアルティ、セールスフォースベンチャーズへの第三者割当増資によって総額209億円を調達しました。加えて、複数の銀行や金融系事業会社から総額155億円のデット調達を実施。これにより設立から現在までの累計調達額は596億円に達しました。加えて、ペガサス・テック・ベンチャーズやアクセンチュアなどからも2026年に出資を受ける見通しです。

出資者のうち、NTTとNTTドコモビジネスとは業務提携することでも合意しました。今後、NTTが有する先端技術と、Mujinのロボット制御技術を融合します。その中で、データセンターなどNTTグループが有する高度なセキュリティーを備えたインフラをMujinが活用するほか、顧客拡大に向けた連携を進めています。NTTグループは中期経営戦略において「データ・ドリブンによる新たな価値創造」を掲げ、社会・産業のDXおよびデータ利活用の強化(AI・ロボットの活用)を推進しています。光技術を軸としたIOWN構想をはじめ、生成AI、HRI(human robot interaction)技術などNTTが有する先端技術と、Mujinのロボット制御技術を融合し、製造・物流業界にとどまらず多様な産業で自律的な自動化・フィジカルAIを実現する考えです。

測定器 Insightの他記事もご覧ください

Prev

Next