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AI向けの次世代メモリ技術開発が活発化

産業タイムズ社

測定器 Insight AI向けの次世代メモリ技術開発が活発化

AI市場が巨大市場へと拡大する動きを見せる中、AIデータセンターの整備が進み、AIアクセラレーター(AIチップ)の需要も拡大しています。エヌビディアやAMDといった主要なAIチップメーカーは、自社製品にHBM(High Bandwidth Memory、高帯域メモリ)を搭載しており、HMBは生成AIの進化を支える重要な半導体技術となっています。

HBMは、複数のDRAMチップを垂直に積み重ね(3D積層)、TSV(シリコン貫通電極)で接続することで、超高速・大容量のデータ転送を実現した次世代メモリです。AI、GPU、HPC(高性能コンピューティング)などで使われ、従来のメモリ(DRAM)の帯域幅の限界を突破し、膨大なデータを高速処理するのに不可欠な技術となっています。具体的には、3D積層構造によって限られた面積でも大容量化と高速化を両立し、TSVによってチップ同士を垂直に貫通する微細な配線で接続して信号の伝達距離を短縮、高速化を実現します。そして多くのバス(データ経路)を確保し、プロセッサーとのデータ転送速度(帯域幅)を飛躍的に向上させ、配線距離が短縮することで低消費電力化も実現するという仕組みです。

HBMは、HBM2、HBM2E、HBM3、HBM3E、そしてHBM4へと世代を重ね、帯域幅と容量を向上させています。AI市場の拡大に伴って需要が急増しており、エヌビディアやAMDなどのAIチップに搭載され、システム全体の性能向上に貢献しています。

SKハイニックスがシェア拡大

HBM市場を見ると、韓国のSKハイニックスが圧倒的なシェアを誇るトップ企業であり、AIチップでトップを誇るエヌビディアへの供給などを通じて成長が続いています。HBM3から最新のHBM3E、そして次世代のHBM4の開発・量産をしています。こうした動きはDRAM市場全体のシェアにも影響を与えており、DRAM市場全体ではサムスン電子がこれまでトップシェアでしたが、2025年1~3月期ごろから主要な市場調査会社による調査データにおいてSKハイニックスのシェアがサムスン電子に肉薄し、一部の調査ではSKハイニックスがサムスン電子のシェアを上回る状況となっています。

サムスン電子はHBMにおける巻き返しに向けた取り組みを進めており、同社のHBM製品の需要は2025年7~9月期から伸び始めています。最先端規格のHBM4についても、2026年初頭から大口顧客向けに本格供給を開始したと見られています。

同社の李在鎔会長は韓国の器興と華城にある自社半導体拠点を2025年末に訪問し、従業員を鼓舞するなど同社にとって異例ともいえる行動をしました。そんなサムスン電子は器興拠点を未来半導体技術のR&D拠点と位置付け、2030年までに20兆ウォン(約2兆円)を投じる計画で、「果敢なイノベーションと投資で技術競争力を回復する」と器興拠点の従業員に向けて奮起を促しています。本件を含めて、サムスン電子は半導体分野への積極的な投資を示しており、2026年における同社の半導体投資は過去最高規模になると予想されています。その一環として、世界最大級の半導体工場である平澤拠点においてフェーズ5(P5)の投資として2028年までに60兆ウォン強を投じる計画です。また、総額360兆ウォン(約38兆円)を投じ、2031年までに龍仁半導体クラスター内に6棟のファブを建設する計画です。

マイクロンテクノロジーは、シンガポールでHBM向けの先端パッケージ工場を建設しています。今後数年間で70億ドルを投じる計画で、2026年の稼働開始を予定しており、本格的に生産能力として寄与するのは2027年ごろになるとみられます。新工場は、シンガポール北部のウッドランド地区にある同社のNAND前工程拠点「Fab10」の隣接地に建設されており、HBMをはじめとする先端パッケージやテスト工程などを担います。当初は約1400人の雇用を創出し、将来的には施設拡張により、約3000人の雇用を生み出すとしています。同社のHBMは現在、前工程を主に広島工場(Fab15)が担い、後工程は台湾・台中エリアでのオペレーションを主軸に進めています。台中エリアでは、前工程工場「Fab16」の隣接地にあったタッチパネルメーカー、CANDOコーポレーション(達鴻先進科技)の工場建屋を2017年に取得。後工程工場として活用しているほか、ディスプレイメーカーのAUOからも工場建屋を取得し、生産能力の増強に向けた準備を進めています。シンガポールでの工場新設に伴い、HBM後工程は今後2カ所で行われていく見通しです。なお、マイクロンのシンガポール投資としては、2019年に完成した「Fab10A」以来の大型投資となります。同社は北部に前述のFab10、そして南部にはFab7(旧TECHセミコンダクター)を保有しており、

シンガポールはNAND前工程の中心エリアとして機能しています。

新モジュールに注目

先端メモリ市場では、「SOCAMM」という新しい技術に注目が集まっています。SOCAMMは、エヌビディアが独自標準で設計したメモリモジュールで、低電力DRAMをCPUの周りに配置し、大規模演算を効率的に処理するように設計されたものです。効率を高めながら費用負担を減らすことが可能で、経済面で合理的として評価されており、HBM比で約2~3割の価格帯で高性能化できます。高帯域幅ではありませんが、大容量メモリの構成が可能で、AI推論、企業用AIサーバーなどでの活用度が高いことが特徴です。また、従来のDDRベースのサーバー向けモジュールに比べて電力消費を1/3まで減らすことができると言われています。HBMに続き、LPDDR(Low Power Double Data Rate)の市場拡大が予想されており、大手メモリ3社の動きが加速しています。直近には各社が低電力DRAMモジュール「SOCAMM2」を公開し、市場参入を本格化しています。

エヌビディアは現在、先端アーキテクチャー「Blackwell」を用いたGPUと、CPU「Grace」を組み合わせて提供しています。

次世代品は新アーキテクチャー「Rubin」を用いた先端GPUと、次世代CPU「Vera」を組み合わせ、2026年リリース予定となっています。

この次世代CPU「Vera」には、SOCAMM2を搭載する計画となっています。

当初はエヌビディアのGB300にSOCAMM1を適用する予定と言われていましたが、技術的な問題で新しい規格であるSOCAMM2の導入を推進しています。当時SOCAMM1では、マイクロンがエヌビディアの品質テストをクリアし、多くの量を確保したものの、SOCAMM2の導入によって白紙となり、韓国メモリ2社にも大規模供給の機会が生まれた状況となります。

2025年後半にサンプル披露

こうした状況の中、マイクロンは2025年10月末にサンプルを顧客企業に出荷したと発表しました。メモリ3社の中、SOCAMM2の出荷について対外的な公表をしたのはマイクロンが初めてでした。一方で、韓国2社は2025年10月末に韓国ソウルで開催された「SEDEX 2025」でSOCAMM2を公開しました。各社におけるSOCAMM2の仕様を見ると、マイクロンは容量が192GBで、最大動作速度9.6Gbpsを実現しました。韓国2社は、容量はマイクロンと同様で、最大動作速度がサムスンの場合8.5Gbps、SKハイニックスが7.5Gbpasから最大9.6Gbpsまでとなります。動作速度が高くなるほど工程難易度と原価負担が大きくなるため、各社の歩留まりがカギになると見ています。

現時点ではマイクロンがリードしていると見られますが、サムスン電子も業界最大のLPDDR5Xのキャパシティーを持っており、SKハイニックスもHBM領域での先端技術を活かした発熱制御技術など強みを持っています。本格的な市場形成はこれからであり、今後のシェア競争は一層激しくなると見られます

AI時代の本格化でHBM市場が好況である一方、HBMの価格高騰や容量限界などの問題を補完するため、HBF(High Bandwidth Flash)という存在も新たに注目を浴びています。HBFは、DRAMを積層したHBMと同様に、NANDフラッシュを積層したものです。HBMの積層技術の限界で大容量チップの製造が難しいという問題から開発が始まりました。HBMの場合、速度と帯域幅でAI演算をサポートしますが、積層技術の限界で容量拡大が容易ではありません。一方、HBFの場合HBMに使われるTSVベースの積層をNANDに適用して帯域幅を高め、容量を拡大します。しかし、データ伝送の向上に技術的な限界も存在し、HBMを補完する存在で今後成長していくと見ています。

NANDベースで新技術も

HBF市場への参入に向けて最も早く動いているのはSKハイニックスです。同社は2025年8月にHBFの仕様を確立するためにサンディスクと協業することを発表しました。SKハイニックスは競合他社より早く研究開発に着手し、技術標準を確保することで、HBMでの成功体験を再現する方針で、2027年初頭の量産を目指しています。また、2025年10月に米国で開催された「OCPグローバルサミット2025」でAIN(AI-NAND)という次世代NAND製品ファミリーを初公開し、AI推論とLLM(大規模言語モデル)など今後のAI活用の拡大に対応するための次世代NAND製品群を準備していると発表しました。

AINは、性能(Performance)、帯域幅(Bandwidth)、容量(Capacity)の側面に最適されたさまざまなNAND製品で今後のAI市場の要求に対応。特にAIN B(帯域幅)製品群にHBF技術が導入され、AI推論の速度向上と大容量AIデータ処理に適するなど、AIN製品群でAI向けに最適化されたNANDラインアップの競争力を強化しています。

サムスン電子もHBFの研究開発を開始するなど初期段階に入ったとみられます。同社はNAND市場で圧倒的なシェアを確保しており、市場支配力を背景にHBF領域に本格参入する場合、大きな市場変動が起こると予想されます。HBFの市場はまだ形成されていませんが、高い性能を実現する次世代NAND開発の必要性が高まっていることから、技術開発はさらに加速するとみられ、今後の動きが注目されます。

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