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中国製品での完全構築が見えてきた中国EV

株式会社産業タイムズ社

測定器 Insight 中国製品での完全構築が見えてきた中国EV

 国際エネルギー機関によると、世界における電気自動車(EV、乗用車のみ)の新車販売台数は現在1750万台(バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の合計値、2024年の数値)で、全新車販売台数に占めるEV比率は22%です。2024年のEV販売台数を主要国・地域別に見ると、中国が1130万台と最も多く、全体の約65%を占め、EVメーカーの数も圧倒的です。

 そんな中国は、AIが認識・判断・制御まで一貫で担うE2E(End to End)自動運転などのテクノロジーにおいても先行しています。そして、そうした流れに連動し、最先端半導体のSoC(システムオンチップ)からADAS(先進運転支援システム)、駆動制御を担うeAxle(モーター、インバーター、減速機を一つのコンパクトなユニットに統合した電動駆動システム)まで、中国が世界標準と肩を並べ、局所的には世界のトップを走る状況が見えてきました。

 自動車業界アナリストや業界関係者によれば、中国EV業界はトップを走るBYDを、リープモーター、Geely Auto(吉利汽車)、NIO、XPeng、シャオミーなどの新興勢が猛追する構図へと急速に変化しています。そしてNOA(ナビゲーション・オン・オートパイロット)機能や「天神之眼」(BYDが展開する独自のADASの総称)など、中国発の独自技術が立ち上がってきています。

 JETROのレポートや中国市場を取材した業界アナリストによれば、NOAは、高精度地図を不要とし、カーナビゲーション地図情報をもとにシステムが自動で運転操作を行う機能であり、「中国国内では中核的な存在になってきている」といいます。実際、2024年夏ごろから中国で同システム搭載車が販売されているもようです。

 天神之眼は、BYDのインテリジェントドライビング戦略の一環であり、A・B・Cの3バージョンで構成されます。LiDARを3個使用する「天神之眼A」、LiDARを1個使用する「天神之眼B」、そしてLiDARフリーながら望遠カメラ1個+広角カメラ2個でLiDAR相当の検知能力を可能とする「天神之眼C」があり、さらに独自開発のスマートアーキテクチャー「XuanJi」に、ディープシークの生成AIを導入して、高度なADASを実現しているとみられています。

 こうしたシステムにはハイスペックなハードウエアも活用されており、前述の主要中国EV各社のADASを司る車載カメラの画素数は、フロントが800万画素、リアやサイドも300万~800万画素と高画素です。車載カメラ事情に詳しい業界関係者によれば、車載カメラ向けCMOSイメージセンサーでは、ウィルセミコンダクター傘下のオムニビジョンの存在感が高まっているといいます。

 また、世界自動車用LiDAR市場におけるシェア(Yole Groupの2025年春公表情報)では、上位4社が市場の9割弱を占め、そのすべてが中国勢(ヘサイ、ロボセンス、ファーウェイ、セヨンド)という圧倒的な地位を確立しています。さらに中国では4Dイメージングレーダーも注目軸になりつつあると言われており、例えばNIOの「AQUILAスーパーセンシングシステム」は、800万画素カメラ7個(うちフロント3個)、300万画素サラウンドカメラ4個、長距離LiDAR1個、広角の短距離LiDAR2個(左右に各1個)、4Dイメージレーダー1個、ADMS(ドライバーモニタリングシステム)1個、超音波センサー12個、V2X1個、GPS&IMU1個、ハンドオフディテクション1個と目を見張る内容です。

 頭脳を司るSoCでも、中国現地報道によれば、2024年11月にはBYDが自社内製の4nm SoC「BYD 9000」を発表し、SUV「豹8」に初搭載。シャオミーも、自社内製半導体をEVにも搭載していく計画を現地メディアに明かしたもようです。このほかブラックセサミやファーウェイ、ホライズン・ロボティクスも3~7nm級プロセスのSoCで存在感を示しています。そのほか、運転支援ソフトウエア開発ではモメンタが日系自動車メーカーと中国向けで協業しています。

 駆動を担うeAxleでも、中国ではBYD/FinDream(BYDの子会社)、ファーウェイ、イノバンス、NIOなどの中国勢が上位陣に名を連ねます。2025年に開催された「ジャパンモビリティショー2025」では、日産自動車ブースに、東風日産乗用車公司から2025年4月に発売された新型EVセダン「N7」も展示されており、「すべて現地調達で製造した。乗り心地などの快適性、自動運転レベル2を実現しながら、価格は日本円で1台250万~300万円超程度」と説明員が自信をもって語る様子から、中国国内完結型EVが現実となり、中国勢の実力値が格段に高まってきた印象です。

Geelyが躍進

 中国EVの勢力図を見てみると、ここ2~3年はBYDの一人勝ちでしたが、2025年は大衆車を強みとする新興勢のリープモーターが伸長し、月6万~7万台を販売する勢いがでています。そして圧倒的にシェアを伸ばしているのがGeely Autoで、直近は米テスラよりもNEV(新エネルギー車)の販売数が多く、世界第2位に台頭しています。こうした状況からBYDは、中国国内で過当な低価格化で内巻式競争を仕掛け、中国政府から反内巻政策を敷かれるに至っています。

 現在、中国国内におけるBEV比率は25%程度で、横ばい傾向が続いているとされます。一方で、新車販売に占めるNEV比率は50%まで高まっており、PHVが大きく伸長していることが読み取れます。都市部はBEV比率が4~5割である一方、内陸部や北部では航続距離の問題や充電インフラの未整備など使い勝手の問題もありPHVの人気が高く、Geely AutoはこのPHVに強いため中国国内でBYDを追い上げています。

 中国EVに搭載される半導体のうち、SoCでは従来エヌビディア製やクアルコム製が強さを見せていました。しかし米国の国家経済安全保障政策を受けて、中国は国策としてデジタルチャイナを遂行し、チョークポイントだった半導体を克服しつつあります。それにより半導体×AI×ソフトウエアの領域で、中国独自の半導体サプライチェーンを築くという国家戦略に動き、中国EV向け推論用SoCでは、ホライズン・ロボティクスやブラックセサミなどが急速に力をつけ、中国自前主義に向かっています。

中国ではIC生産も拡大

 中国では、EVでも非常に重要となるICの生産も拡大しています。2025年1~9月期におけるIC生産量は前年同期比9%増の3819億個となり、1~9月期として過去最高の数字を記録。2025年における中国のIC生産は、7月まで右肩上がりの状況が続き、7月単月の生産量は469億個に達し、8月の生産量は425億個と減少しましたが、9月の生産量は446億個と再び増加に転じました。「8月は汎用のローエンド半導体の生産がやや落ち込んでいた」(中国の半導体組立・検査企業の関係者)とみられます。2025年は、通年でも高い水準を達成したとみられています。

 そうした状況によって、中国では近年、家電用のアナログ半導体やパワー半導体などの国産化が進み、輸入依存度が数年前に比べて大幅に低下。また、台湾をはじめとした海外ファンドリーに比べて、中国ファンドリーがレガシー半導体の生産を低コストで受託しているため、中国ファンドリーの稼働率が高く、それに伴い中国OSATの稼働率も高水準で推移しており、車載用半導体についても国産化が加速しています。

 中国共産党は2025年10月、第20期中央委員会第4回総会で、次期中期経済目標「第15次5カ年計画」(期間は2026~2030年)の基本方針を採択しました。この中で先端分野の取り組みを強化し、「半導体や製造装置、バイオ製薬などの分野において、これまでにない施策を実施し、中核技術のブレークスルーを果たす」ことを掲げていることから、中国における半導体の国産化はさらに加速することが予想され、車載用半導体の国産化も進むことが予想されます。

LiDARも中国2社が存在感

 LiDARメーカーに目を移すと、ヘサイ(中国)、ロボセンス(中国)、ルミナー(米国)、オースター(米国)、イノヴィズ(イスラエル)といった名前が主要企業として聞かれます。この5社のうち、自動車向けは中国勢が圧倒的です。中国以外のLiDARメーカーは、産業機器向けや防衛・宇宙、スマートシティーやインテリジェント交通システムなど、車載以外にも活路を見出しながら中長期の自動車需要拡大に備える状況にあります。  ヘサイは2025年4~6月期には、主要OEM9社(中国の浙江吉利、長城汽車、長安汽車など含む)から2026年までの20モデルに対し、多数の新規デザイン採用を獲得。特に、主要顧客トップ2社のうち1社において、2026年モデルで複数車種向けのプラットフォーム採用も獲得しています。これにより、この顧客の全モデルラインアップでLiDARの標準装備をさらに確固たるものにしています。また、ヘサイは欧州トップOEM向けでCサンプル段階に入り、2026年に計画されている量産化・商用化に向けて順調に推移。また、トヨタ自動車との合弁会社向け新エネルギー車モデルでもADASで新規デザイン採用を獲得し、2026年の量産化を目指しています。

 同社は「ADASにおいてLiDARは急速に標準機能になりつつある」とし、直近でも主要顧客2社から2026年モデル全車に設計受注を獲得。Zeekrのフラッグシップモデルの一部改良版には、ヘサイ製品が標準装備として搭載されていると明かしています。「安全性の冗長性と新たな規制導入を背景に、業界が自動運転レベル3向けマルチライダー構成へとシフトしていることも大きな追い風になっている」といいます。また、世界最長の検知距離を誇るハイエンドなETX LiDARで、中国国内トップ3のNEVメーカーから、複数のFTXブラインドスポットLiDARと組み合わせた設計受注を獲得。量産出荷は2026年後半~2027年初頭を予定しています。レベル3クラスの車両1台あたり、3~6個のLiDAR(約500~1000ドル相当)が搭載されると見込まれており、市場拡大に期待を寄せています。

 ロボセンスは2025年9月末時点で、32社の自動車メーカー/ティア1サプライヤーから受注したLiDAR製品量産モデルが144車種に達しており、2025年6月には、車載グレードのロボセンス製ソリッドステートLiDARユニットの生産台数が100万台を達成するなど、出荷の伸びが続いています。

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