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ベクトル制御とV/f制御の違いとは?モーター特性を活かす技術について解説

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight ベクトル制御とV/f制御の違いとは?モーター特性を活かす技術について解説

インバーター制御は、大きく分けて「ベクトル制御」と「V/f制御」の2種類に分かれます。それぞれ特性が異なるため、メリット・デメリットを正しく理解しておくことが重要です。

本記事ではインバーター制御の基礎を踏まえつつ、ベクトル制御とV/f制御のそれぞれの強み、そして選び方のポイントを解説します。

インバーター制御の基礎

インバーター制御は、商用電源では一定速度でしか回らない三相モーターの回転数やトルクを、用途に応じて自由に制御するための技術です。

交流を一度直流に整流し、そこから任意の電圧・周波数の三相交流を再生成することで、モーターの回転数とトルクを連続的に制御します。

これにより、ポンプやファンの省エネ化、コンベアや巻き取り機の速度制御などを実現し、産業機械の省エネ化と安定運転に貢献してきました。

インバーター制御の役割

インバーターは、交流→直流→交流の変換とスイッチング制御によって、モーターに印加する電圧・周波数をきめ細かく調整します。

これにより、回転数やトルクの連続制御だけでなく、加減速時間の設定によるソフトスタート・ストップや、始動電流の抑制が可能です。

三相モーターの基本

三相モーター(三相誘導電動機)は、固定子の三相巻線と回転子から構成されます。三相交流を印加すると位相差により回転磁界が生じ、この回転磁界に引きずられる形で回転子が回転します。

回転磁界の速度は電源周波数と極数で決まり、実際の回転速度との差は「すべり」と呼ばれます。

負荷が重くなるとすべりが大きくなり、より大きなトルクを発生しようとするのが特徴です。

V/f制御とは?仕組みと特徴

V/f制御は、周波数に比例して電圧を変化させることで磁束をほぼ一定に保つ、インバーターの基本的な制御方式です。

周波数だけを変えると磁束が変動してトルクが不安定になるため、V/f比を一定にすることでモーターの特性を簡易的に保ちます。

実速度やトルクを直接フィードバックしないオープンループ制御であり、負荷変動時にはモーターのすべりが変化し、結果的にトルクが補われます。

V/f制御のメリット

V/f制御の最大の利点は、構成がシンプルでコストを抑えやすいことです。

電流ベクトルの演算やモーター状態の推定が不要で、V/fカーブと基本パラメータを設定するだけで制御が成立します。

トルク変動が比較的小さく、高い速度精度を求めない負荷であれば、V/f制御でも十分な性能と省エネ効果が得られます。

既設の汎用三相モーターにも適用しやすく、まずはインバーター化したいという場面で使いやすい方式です。

V/f制御のデメリット

V/f制御は、周波数と電圧を制御しているだけで、磁束やトルクを直接制御しているわけではありません。

そのため、負荷トルクが急変するとトルク応答が遅れ、回転数の一時的な落ち込みや速度変動が生じやすくなります。

特に低速域では、巻線抵抗や冷却性能の影響でトルク不足が目立ちやすく、ブースト設定を行っても限界があります。

ベクトル制御ほどの応答性・精度は得にくく、精密な位置決めや張力制御、荷重変動の大きい設備には不向きです。

ベクトル制御とは?

ベクトル制御(フィールドオリエンテッド制御、FOC)は、三相モーター電流を「磁束成分(d軸)」と「トルク成分(q軸)」に分解し、それぞれを独立に制御する方式です。

座標変換によって電流ベクトルを回転座標系で表現し、直流モーターのようにトルクを扱えるようにします。

電圧・電流・回転速度などから、ロータ磁束の大きさと位置を演算によって推定し、q軸電流でトルク、d軸電流で磁束を制御することで、トルクをダイレクトに指令できるのが特徴です。

ベクトル制御のメリット

ベクトル制御の強みは、高トルク・高応答性と低速域での安定性です。

トルク成分を直接制御するため、負荷変動に素早く追従し、回転数の変動を最小限に抑えることができます。

磁束成分も適切に管理できるため、停止近くの低速でも定格に近いトルクを取り出しやすく、クレーンや巻き取り機、工作機械などで、滑らかで安定した運転が可能です。

タクト短縮や品質バラつきの低減、省エネ効果にもつながり、生産性と品質向上に寄与します。

ベクトル制御のデメリット

ベクトル制御は演算処理やアルゴリズムが高度な分、インバーター本体のコストが上がりやすく、構成も複雑になります。

モーター定数や制御ゲインの設定など、立ち上げ時に調整すべき項目が多く、ある程度の知識と経験が必要です。

速度センサーを用いる場合は取り付けや配線の手間が増え、センサーレスでは低速域での推定精度に注意しなければなりません。

ベクトル制御とV/f制御の違いとは?モーター特性を活かす技術について解説 挿絵

ベクトル制御とV/f制御の違い

両者の本質的な違いは、制御対象が「電圧・周波数」か「磁束・トルク」かという点にあります。

V/f制御はスカラー制御で、構成が簡単な反面、負荷変動時の応答性や低速域のトルク性能に限界があります。

ベクトル制御は、トルクを直接制御できるため、応答性・速度精度・低速トルクに優れ、張力・位置などの精密制御に対応できます。

設備ライフサイクルの観点では、V/f制御は扱いやすく代替機も確保しやすい一方、ベクトル制御は高度な監視・自動化への拡張性に優れる、と整理できるでしょう。

どのような用途に向いている?代表的な適用例を比較

制御方式の選定は、「要求性能」と「コスト・運用負荷」のバランスで考えることが重要です。

V/f制御は、シンプルさとコスト面の優位性から、汎用設備の省エネや可変速用途に向いています。

一方、ベクトル制御は、高トルク・高精度が必要なラインの中核設備に適しており、タクトや品質に直結する部分で採用されるケースが多くなります。

V/f制御が向いている用途

V/f制御は、流量・風量の調整が中心で、多少の速度変動が許容される用途に最適です。

給水、循環ポンプ、空調用送風機など、回転数=流量・風量という関係が明確な負荷では、シンプルなV/f制御で大きな省エネ効果を得られます。

また、一定トルク精度がさほど要求されない搬送コンベアや既設設備のインバーター化でも、有力な選択肢となるでしょう。

ベクトル制御が向いている用途

ベクトル制御は、荷重変動が大きく、高トルク・高応答が求められる設備に適しています。

クレーンやエレベーターなどの昇降装置、フィルムや紙・金属コイルの巻き取り・巻き戻し機、精密搬送ラインなどが代表例です。

起動・停止時のショック低減や負荷変動時の速度維持、張力・位置の安定化によって、製品品質と安全性を確保しつつタクト短縮も狙えます。

向き不向きを踏まえた制御技術選びが大切

V/f制御は「シンプルで安価な汎用可変速」、ベクトル制御は「高性能で応答性・精度に優れた制御」と考えることで、上手な使い分けが可能です。

どちらが優れているかではなく、自社設備に求められる要件と照らし合わせて判断することが重要です。

判断が難しい場合は、メーカーやSIerに運転条件・負荷特性を共有し、最適な制御方式を一緒に検討することをおすすめします。

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