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インバーターのSVPWM制御とは?PWM制御との違いについて

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight インバーターのSVPWM制御とは?PWM制御との違いについて

省エネ規制の強化や産業機器の高効率化が進むにつれ、より高度なインバーター制御方式が注目されるようになってきました。

以前から広く用いられてきたPWM制御と、近年主流化しつつあるSVPWM制御は、インバーターの性能を左右する重要な技術として位置付けられます。

本記事ではこの二つの制御方法の違いについて、詳しく解説します。

インバーター制御の基礎

インバーターは、モーターの速度制御や省エネ運転が求められる場面で欠かせない電力変換装置です。

ここでは、両者の理解に不可欠な基礎知識として、インバーターの役割と基本的な制御の考え方を整理します。

インバーターとは?基本構造と役割

インバーターとは、直流電源を交流電源に変換し、その交流の大きさや周波数を自由に調整できる電力変換装置です。

一般的な構造としては、まず整流回路で交流を直流に変換し、次にインバーター回路でその直流を再び交流へと変換します。

この二段構成によって、出力する交流の波形や大きさを柔軟に制御できる点が大きな特長です。

インバーターを用いて電力を制御することで、機械の動作を滑らかにすることができるようになります。

ポンプやファンの省エネ運転、産業用機械の速度制御、家電製品の静音化など、幅広い用途に応用されているのには、この柔軟性の高さにあるといえるでしょう。

PWM制御の概要と目的

PWM(パルス幅変調)制御は、インバーターにおける基本的な出力電圧の調整方法です。

出力を連続的に変えるのではなく、高速でON/OFF を繰り返すスイッチング操作によって、一定期間における「平均電圧」を調整します。

PWM制御はアナログ的な電圧制御に比べて効率が高く、スイッチング素子の損失も少ないため、幅広いインバーターで採用されてきました。

PWM制御のメリット

PWM制御の大きな特長は、構造と原理が非常にシンプルであることです。比較的少ない計算量で実現できるため、専用の高性能プロセッサを必要とせず、幅広いインバーターに搭載しやすい点が強みといえます。

また、制御アルゴリズムが理解しやすいことから、設計や保守も行いやすく、コストを抑えたシステム構築が可能です。

こうした扱いやすさや汎用性の高さから、現在でも多くのインバーターで標準的な制御方式として採用されています。

PWM制御が抱える課題

一方でPWM制御には、以前から指摘されている課題もあります。

スイッチング動作により高調波成分が発生しやすく、これがモーターの騒音や不要な振動の要因となることがあります。

また、出力電圧の利用率がそれほど高くないため、同じ直流電源電圧を用いても得られる最大出力が制限されるという問題もあります。

電圧利用率が低い場合、単位電力あたりの効率が下がり、結果としてエネルギー損失や発熱が増えるリスクがあります。

PWM制御は高調波が設備全体の電源品質に影響を与えるケースもあり、用途によってはフィルターや追加の対策が必要になることも珍しくありません。

インバーターのSVPWM制御とは?PWM制御との違いについて 挿絵

SVPWM(Space Vector PWM)制御とは

SVPWM制御は、従来のPWM制御を発展させた高度なインバーター制御方式です。モーター制御の効率化や波形品質の向上を目的として、近年は広く利用されるようになりました。

SVPWM制御の原理とベクトル制御について

SVPWM制御の中心となる概念は、三相インバーターによって生成される電圧を「空間ベクトル」という形で表現するというものです。

三相インバーターでは、スイッチング素子の組み合わせによって六つの基本電圧ベクトルが得られ、これに加えて電圧を出さないゼロベクトルが二つ存在します。

この八つのベクトルを一周期の中でどのように配置するかを計算し、目標とする電圧ベクトルに最も近付くようにスイッチングを行います。

この考え方により三相を一体として扱う制御が可能となり、各相を個別に制御する従来のPWM制御よりも、電圧波形を高い精度で再現できます。

SVPWM制御のメリット

SVPWM制御の最大の利点は、電圧利用率が非常に高いことです。直流バス電圧をより多く出力に反映できるため、同じ電源電圧でもモーターへ供給できる最大トルクが大きくなり、高出力が求められる用途で活躍します。

また、出力波形が滑らかになることによって電流の歪みが抑えられ、高調波成分が少ない安定した状態でモーターを駆動することが可能です。これにより振動や騒音が低減し、静音性の高い動作が実現します。

さらに、スイッチングパターンが最適化されることでスイッチング損失が減少し、エネルギー効率の向上にも寄与します。トルクリップルの少ない滑らかな制御が可能になるため、精密な速度制御や応答性が重要となる用途においては、大きなメリットを持つアプローチです。

PWM制御とSVPWM制御の違い

PWM制御とSVPWM制御は、同じインバーター制御の枠組みに属する技術でありながら、採用している制御概念が大きく異なります。

PWM制御は比較的単純な制御方式で、モーターの基本的な速度調整や一般用途の駆動には十分な性能を備えています。

一方、SVPWM制御は三相全体を統合して扱う高度な手法であり、より高い電圧利用率と優れた波形品質を実現するため、効率や静音性が重視される最新のモーター制御で広く採用されています。

システム効率と波形品質の差

PWM制御では、基本原理が単純な分、波形の歪みが大きくなり、高出力時や高精度制御を要求される場面では効率面での限界が表れることがあります。

波形品質の差は、実際のモーター性能や静音性にも影響を与えるものですが、SVPWM制御はこの点でアドバンテージを持ちます。

SVPWM制御では、スイッチングパターンが最適化され、出力電圧・電流波形がより正弦波に近付くためです。

結果として高調波成分が減少し、モーターの発熱、電磁ノイズ、トルクリップルといった問題が大幅に緩和されます。

適用分野とコスト面の違い

PWM制御は回路構成が簡単で制御アルゴリズムも複雑ではないため、比較的安価に実装できる点が大きな利点です。

小型の家電製品や一般的なポンプ・ファン用途など、高精度な制御を必要としない分野では現在も広く採用されています。

一方、SVPWM制御は計算量が多く、処理にはマイコンやDSPなどの演算能力が求められます。モーターの性能を最大限に引き出したい産業用機器や、サーボモーター・工作機械といった先端分野では、主流の制御方式となっています。

目的・用途に応じた最適な制御方式の選択を

PWM制御とSVPWM制御はいずれもインバーター制御の中核技術ですが、目的や用途によって最適な選択は異なります。

PWM制御はシンプルで低コストな汎用用途に、SVPWM制御は高効率・高性能が求められる分野に適している手法です。

最新技術と従来の手法を適切に使い分けることで、より効率的なインバーター制御が可能になります。

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