
省エネルギー化やGX(グリーントランスフォーメーション)の取り組みが広がる中で、熱の流れを「見える化」する技術が注目されています。その中心にあるのが熱流束センサーです。
温度そのものではなく、物体内や表面を通過する“熱エネルギーの流れ”を定量的に測定できるこのセンサーは、建築物の断熱性能評価や電子機器の放熱設計など、幅広い分野で活用されています。
本記事では、熱流束センサーの基本原理や熱電対との違い、実際の活用分野、そして導入のメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
熱流束センサーは、物体を通過する熱の流れ(熱流束)を測定するセンサーです。
熱流束とは、単位面積あたりにどれだけの熱エネルギーが移動しているかを示す物理量であり、単位は W/m² で表されます。
熱流束センサーの最大の特徴は、「温度」そのものではなく、熱エネルギーの流れを捉えられる点です。熱電対などの温度計が特定の点での温度を測定するのに対し、熱流束センサーは物体内部や表面を通過する熱の動きを可視化できます。
熱の流れを正確に把握することで、建築物では断熱性能の定量評価、電子機器や自動車部品では放熱設計の最適化が可能になります。これらのデータをもとにエネルギー損失を分析することで、省エネ化や効率向上につなげることができます。
近年はGXの推進に向けて、製品や設備の断熱性・放熱性能を定量的に評価するニーズが高まっており、熱流束センサーはその実現を支える省エネ技術の要として、産業・研究の両分野で注目されています。
熱流束センサーは、熱電対を多数配置したアレイ構造を持つのが一般的です。表面を通過する熱の流れによって発生するわずかな温度差を検出し、その差を電圧として出力します。
測定の仕組みは次のとおりです。
センサー内部で生じた温度差を電圧として読み取ることで、熱エネルギーの移動量を定量的に測定しているのです。
設置方法もシンプルで、対象となる機器の表面や建築壁面などにセンサーを貼り付ける、または熱の通り道に埋め込むことで、熱の出入り方向と強さをリアルタイムで把握できます。
熱電対と熱流束センサーは、いずれもゼーベック効果を用いて温度や熱流束を検出しています。ゼーベック効果とは、異なる金属や半導体の接合点に温度差が生じると電圧が発生する現象です。
温度センサーとして広く用いられる熱電対は、2種類の金属間に生じる温度差から温度を測定します。 一方、熱流束センサーは「面を通過する熱の流れ(熱流)」を測定するためのセンサーであり、扱う物理量そのものが異なります。
熱流束センサーは熱電対の上位互換ではなく、別の測定目的を持つセンサーです。
熱電対は温度の変化を高精度で捉えられる一方で、熱の“流れ”そのものを評価することはできません。
一方、熱流束センサーは熱の流動を面的に把握できますが、局所的な温度変化を測ることは苦手です。
「熱電対よりも熱流束センサーの方が優れている」という単純な比較ではなく、用途に応じた使い分けが重要です。両者を併用することで、温度分布と熱流の相関を分析でき、より精密な熱設計や省エネ評価が可能になります。
熱流束センサーは、熱エネルギーの流れを定量的に把握できる高精度な測定器である一方、精密な測定を行うためには設置ノウハウや運用知識が求められます。
ここでは、導入時に押さえておきたい主なメリットとデメリットを整理します。

熱流束センサーは、温度測定では分からない“熱の移動”を定量化できる技術です。
熱がどの方向に、どれだけ移動しているのかを数値で把握することで、製品や設備の熱設計をより高精度に行えます。
熱電対と併用することで、温度分布と熱流の両面から熱の挙動を分析でき、放熱・断熱設計の最適化や、エネルギー利用の効率化に寄与します。
GXや省エネ化が求められる今、熱流束センサーはエネルギーを「見える化」する重要な測定技術として、産業や研究の現場で欠かせない存在になっています。