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静ひずみ・動ひずみとは|代表的なひずみ試験の種類と特徴

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 静ひずみ・動ひずみとは|代表的なひずみ試験の種類と特徴

建築物の耐震設計や自動車部品の軽量化、さらには新材料の強度評価など、製品や構造物の安全性・性能を確保するには、材料の変形や破壊特性を把握することが欠かせません。その過程で実施されるのが「ひずみ試験」です。

本記事では、ひずみの基礎知識から静ひずみ・動ひずみの違い、代表的な試験方法などを分かりやすく解説します。

ひずみとは?

ひずみとは、材料に外力が加わった際に生じる変形の割合を示す概念です。例えば金属棒を引っ張ると伸びますが、元の形からどのくらい変形したのかを表すのが「ひずみ」です。これは材料力学の基本的な指標の一つで、設計や評価に欠かせない要素となっています。 ひずみには大きく分けて「静ひずみ」と「動ひずみ」の2種類があります。静ひずみは、変形の程度が時間とともにほとんど変化しない状態を指し、通常の引張試験や圧縮試験などで扱われます。一方、動ひずみは、ひずみの大きさが時間とともに変化するもので、衝撃や振動といった短時間で大きな力が加わる場面で発生します。 こうしたひずみの挙動を数値化・可視化する際には「応力ひずみ曲線」が用いられます。これは、加えた力(応力)とひずみの関係をグラフで表したもので、材料がどのように変形し、どのタイミングで破断するかを把握するのに役立ちます。

ひずみ試験の目的

ひずみ試験は、材料がどのように変形し、破断に至るかを定量的に把握するために実施されます。設計段階での安全性評価や、長期間の使用に耐えうる耐久性の確認が可能となり、製品の信頼性向上に直結します。 例えば、建築分野では地震や風圧に耐える構造材の選定、自動車ではクラッシュ時の衝撃吸収性の評価、航空機では軽量化と強度のバランスをとるための材料検討など、ひずみ試験はさまざまな場面で活用されています。 また、製造現場における品質管理や、不具合原因の追究にも役立ちます。ひずみデータを基に、製品に生じた変形や破損のメカニズムを分析し、設計変更や製造工程の改善に結びつけることが可能です。ひずみ試験は単なる評価手法ではなく、製品開発から実用化までのあらゆるフェーズにおいて重要な役割を担っています。

ひずみ試験の原理と測定方法

ひずみ試験では、材料に加えた外力によって生じる微細な変形を高精度で測定する必要があります。最も一般的に使用されているのが「ひずみゲージ」です。ひずみゲージは、薄い金属箔やワイヤーが台紙に固定されたセンサーで、材料に貼り付けて使用します。材料が伸びたり縮んだりすることでゲージ自身もわずかに変形し、それによって電気抵抗が変化します。この微小な抵抗変化を「ブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)」で検出し、電圧の変化として読み取ることで、ひずみ量を数値化するという原理です。 ひずみゲージにはさまざまな形状やサイズがあり、測定方向や対象部位に応じて適切なタイプを選定します。近年では非接触型のデジタル画像相関法(DIC法など)も活用されています。

代表的なひずみ試験の種類と特徴

ひずみ試験には、負荷のかけ方や測定対象の条件に応じてさまざまな方法があり、大きくは、静的な条件でひずみを評価する「静的試験」と、動的な条件でひずみを評価する「動的試験」に分類されます。それぞれの試験には特徴があり、得られるデータや適した材料、用途が異なります。

静的試験

静的試験は、材料にゆっくりと一定の速度で力を加えながら、その変形を測定する方法です。代表的なものに「引張試験」「圧縮試験」「曲げ試験」「せん断試験」「ねじり試験」などがあります。 これらの試験では、応力ひずみ曲線を用いて、弾性限度、降伏点、破断点といった基本的な力学特性を取得できます。材料の強度や延性を把握するための基本的な試験であり、設計や品質管理において欠かせません。

動的試験

動的試験は、短時間に大きな負荷が加わる状況を再現し、材料の応答を評価する方法です。「衝撃試験」「疲労試験」「摩耗・摩擦試験」「発熱試験」などが該当します。 例えば衝突時のように一瞬で大きな力が加わる場面では、静的試験では捉えきれない材料の挙動が現れます。こうした条件下では、ひずみの時間的変化=動ひずみを精密に測定する必要があり、高い応答性をもつ測定機器が用いられます。

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ひずみ試験から得られる知見

ひずみ試験を行うことで、材料の力学的な特性を定量的に把握できます。具体的には、ヤング率(弾性率)や降伏点、破断ひずみ、破壊靭性といったデータが得られ、材料がどのように変形・破壊するかを明確にできます。

これにより、設計段階では最適な材料の選定や構造設計の安全マージンの確保に活用され、製品の性能や信頼性を高めることができます。疲労試験や耐久試験によって、使用中の劣化や破損のリスク評価も可能です。

ひずみ試験のデータを基に、設計の見直しや製造プロセスの改善が行われています。また、品質トラブルの原因究明や、クレーム対応の裏付け資料として活用されるケースも少なくありません。

近年では、ひずみ試験の結果をシミュレーションと連携させ、より高精度な材料評価が行われています。試験と解析の融合により、開発スピードと設計精度の向上が図られており、今後もその重要性は増していくと考えられます。

ひずみ試験の理解が製品開発と製品の安全性を支える

ひずみは、材料がどのように変形するかを把握するための基本的な評価指標です。静ひずみと動ひずみは、それぞれ異なる負荷条件下での変形挙動を示しており、正確に測定することで設計や開発に必要なデータを取得できます。

ひずみ試験で得られる情報は、製品の安全性や信頼性を確保する上で非常に重要です。特に高機能材料の開発や軽量化を求められる分野では、ひずみ特性の把握が製品性能の向上に直結します。ひずみゲージなどの測定技術の進化により、現場でのリアルタイムな計測やシミュレーションとの連携も可能となり、設計・試作・評価のサイクルを短縮する動きも加速しています。目的や用途に応じた適切な試験方法を選び、正確なひずみデータを取得することで、より安全で高性能な製品づくりの実現につながります。

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