
ISO 50001認証の取得は、エネルギーマネジメントの品質向上や企業価値の改善において大きな意味を持ちます。ただ、認証の取得に際しては事前の計画性の高さに左右される面もあり、準備段階でのデータ整備に注意が必要です。
本記事では、ISO 50001認証の取得に活躍する測定ソリューションについて解説します。
ここでは、そもそもISO 50001とは何かについて確認しておきましょう。ポイントとなるのは、同規格は国際規格であり、これに基づく認証を取得することによって企業は複数の恩恵が得られる点です。
ISO 50001は、企業がエネルギー効率を継続的に改善するための国際規格です。電力や燃料の使用状況を数字で見える化し、PDCAサイクルを通じて無駄を削減するのに役立ちます。
また特定の業種を問わず導入されているのも特長です。組織全体でエネルギーを体系的に管理でき、属人的な判断に頼らない、データに基づいた運用が可能になります。
ISO 50001を導入すれば、エネルギーコストやCO2排出量を削減し、設備稼働率の改善や環境経営の強化も期待できます。
加えて、ESG対応やカーボンニュートラル経営の基盤づくりにもつながることから、多くの企業が注目している取り組みです。

ISO 50001のような国際規格に則った測定や監視が求められるのには、以下の二つの背景があります。使用量の定量評価と、データの一貫性の確保により、優れた改善計画の策定に役立つでしょう。
省エネの第一歩は、エネルギーの使用実態を測定することです。正確な測定はどの設備でどれだけのエネルギーが使われているか、どこにロスが発生しているかを明らかにしてくれます。これにより、改善の優先順位を判断するための基盤を構築できるわけです。
従来のような感覚的な運用から脱却し、数値に基づくエネルギーマネジメントへ移行することで、持続的な効率改善が実現するでしょう。
ISO 50001では、測定データの信頼性と再現性が重要です。関連規格であるISO 50006はEnPI・EnBの設計方法を、ISO 50015は計測と検証(M&V)の手法を示しています。
これらを活用することで、監査に耐えうる整合性のあるデータ管理が実現し、エネルギー改善の成果を客観的に示すことができます。
ここでは、EnPI・EnBの設計手順、および測定計画の策定に伴うポイントを解説します。手順の詳細に目を向け、エネルギーマネジメントの品質向上に努めましょう。
EnPI(パフォーマンス指標)は改善の成果を定量化するための指標であり、EnB(エネルギー基準)は基準期間の使用量を示します。これらは気温や生産量など外部要因を考慮し、正規化した比較可能な数値として設計します。 両者を設定することで、季節変動や生産変化の影響を除き、純粋な効率改善を評価可能です。
EnPIとEnBの測定計画においては、対象とする設備や工程、データ取得の頻度、必要な精度を明確に定義しておくことが大切です。測定点の選定やセンサー精度、記録周期などを標準化し、欠測や誤差を最小限に抑えることが求められます。 また、計測機器の校正や運用ルールを定めることで、長期的に信頼性の高いデータを維持できます。
エネルギー消費の大きい設備や負荷変動の激しいラインには、サブメーターを重点的に設置します。
サブメーターの設置により、部門別・工程別の詳細な消費データを取得でき、改善余地を正確に把握できます。
通信方式はModbusやBACnetといった標準プロトコルを採用します。クラウド連携によるリアルタイム監視を実現することで、全体の運用効率の改善が期待できるでしょう。
取得したデータは精度の確保と改ざん防止が不可欠です。計測値を時系列で記録し、監査対応可能な追跡性を持たせることで、信頼性の高いエネルギー管理を実現します。
このデータをダッシュボードで可視化すれば、異常値の早期発見や改善効果の検証が容易となり、現場と経営層の意思決定をつなぐ情報基盤になり得る仕組みです。
認証取得に向けた、計画に基づく正確な測定は、改善効果を裏付ける強力な証拠となり得ます。数値に基づいた意思決定は、組織におけるエネルギー管理の信頼性を高め、社内外の評価を高めてくれる点も見逃せません。
実施に際しては測定・分析・改善のサイクルを回すことで、無理なくエネルギー効率を向上できます。ISO 50001の運用は単なる認証取得ではなく、企業競争力を強化する継続的改善の仕組みといえるでしょう。