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直流安定化電源とは?方式の違いや使用する際のポイントを解説

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 直流安定化電源とは?方式の違いや使用する際のポイントを解説

パソコンやスマートフォン、計測器や製造装置などの機器は基本的に「直流(DC)」で動作しますが、コンセントから供給される商用電源は「交流(AC)」です。しかも、商用電源の電圧や波形は常に一定ではなく、外部環境や負荷の変化によって変動します。

こうした変動を吸収し、安定した直流電圧や電流を供給するために用いるのが直流安定化電源です。本記事では、直流安定化電源の基本的な役割、代表的な方式の違い、さらに使用する際のポイントについて解説します。

直流安定化電源の役割

直流安定化電源は、入力や負荷の変動に左右されず安定した直流を供給し、試験や製造現場の信頼性を高めます。現場の安全性と品質を支えるため、さまざまな機能を備えています。

安定した電源供給

直流安定化電源の最大の目的は、入力電圧や負荷の変動に関わらず、一定の直流電圧や電流を供給することです。例えば、電子回路や半導体の特性評価では、入力電圧がわずかに変動するだけでも測定結果に誤差が生じ、製品の性能を正しく評価できなくなる可能性があります。また、LED駆動やモーター制御、二次電池の充放電試験などでは、安定した電圧、電流供給が実験結果の再現性や安全性に直結します。

直流安定化電源は電圧や電流値を自由に設定できる点も特徴です。さまざまな試験環境を作り出せるため、試作機の動作確認、量産前の品質試験、国内および国際市場に向けた品質保証の場面などで利用されています。

製品の保護と信頼性向上

直流安定化電源には、過電流保護(OCP)や過電圧保護(OVP)といった安全機能が組み込まれています。これにより、誤った設定や予期せぬ負荷変動が起きた場合でも、接続している試作品や部品を損傷から保護できます。特に新規開発中の回路は不安定で、思わぬ電流暴走や発熱が起こりやすいため、電源側で安全機能を備えていることは大きな安心材料です。

また、リモートセンシング機能を持つモデルでは、配線による電圧降下を検知して補償し、実際に負荷が接続されている部分に正確な電圧を供給できます。これにより、試験や製造で求められる信頼性を確保でき、製品の品質保証にもつながります。

直流安定化電源の方式と特徴

直流安定化電源には大きく分けて「シリーズレギュレータ方式」と「スイッチング方式」の2種類が存在します。使用環境や用途に応じて、いずれかの方式を選択します。

シリーズレギュレータ方式

シリーズレギュレータ方式は、入力と出力の間に直列に配置した制御素子で電圧を制御します。この方式の大きな特徴は、出力に含まれるノイズが非常に少なく、負荷変動に対しても応答が速いことです。そのため、精密なアナログ回路や医療機器、計測機器、半導体の特性評価など、わずかなノイズが測定結果に影響を与える場面でよく使われます。

ただし、この方式は効率が低く、入力電力の一部が熱として失われてしまいます。そのため放熱設計が重要となり、大電力用途には不向きです。また、変換効率の制約から装置が大きく重くなる傾向もあります。

スイッチング方式

スイッチング方式は、交流を直流に変換した後、トランジスタを高速でオンオフすることで電圧を制御し、整流や平滑回路を通して所望の直流を得る仕組みです。変換効率が高く、装置を小型化かつ軽量化できるのが大きな強みです。さらに、入力電圧の許容範囲が広く、出力電圧も柔軟に変更できるため、多様な条件での試験やシミュレーションに適しています。

ただし、スイッチング動作によって高周波ノイズが発生しやすいため、ノイズに敏感な計測では注意が必要です。近年はフィルタ回路やシールド技術の進歩により、ノイズ特性も改善されており、多くの用途で主流となっています。

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直流安定化電源を使用する際のポイント

直流安定化電源は定電圧モードと定電流モードを切り替えて運用でき、負荷や試験条件に応じた安定供給を可能にします。出力範囲の考え方を理解すると、用途に対して最適な電源を選定できます。

定電圧モードと定電流モード

直流安定化電源には「定電圧モード(CV)」と「定電流モード(CC)」の二つの動作モードがあります。定電圧モードでは電圧を一定に保つため、電子回路や機器の動作確認に適しています。一方、定電流モードは電流を一定に維持するよう制御でき、LEDの駆動や二次電池の充放電試験などに利用されます。多くの電源装置はCVとCCを自動で切り替える機能を備えており、異常電流が流れた場合には保護機能としても働くため、安心して使用できます。

出力範囲の考え方

直流安定化電源を選ぶ際には出力範囲にも注目する必要があります。シングルレンジ方式は電圧と電流の定格が固定されており、決まった条件での測定や実験に適しています。シンプルな構造で価格が比較的安価ですが、柔軟性には欠けます。一方、現在普及しているワイドレンジ方式は、消費電力の範囲内で電圧と電流の組み合わせを自由に設定できます。1台でさまざまな試験に対応可能で、複数の電源をそろえるより効率的であるため、研究開発や多品種生産の現場では重宝されています。

直流安定化電源が支える安定稼働と品質保証

直流安定化電源は、商用電源の不安定さを補い、機器に最適な直流を安定供給するための装置です。シリーズレギュレータ方式とスイッチング方式の特徴、CV/CCモードや出力範囲の考え方を踏まえて選択することで、最適な電源を導入できます。研究開発や製造の現場で高い信頼性と品質を確保するためには、直流安定化電源の特性を理解した上で運用することが求められます。

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