
自動車産業や航空産業など多くの製造業では、複雑な形状の部品を高精度に生産することが求められています。三次元測定機はミクロン単位で部品寸法を検査できる測定器で、品質保証における重要な機器として用いられています。
近年では、三次元測定機の活用は部品の寸法測定にとどまらず、測定データのデジタル活用へと広がっています。この記事では三次元測定機とは何か、主な用途や測定方法、活用事例を解説します。
三次元測定機は、測定物の三次元座標を高精度に測定する装置です。三次元測定機には接触式と非接触式があり、接触式では接触子と呼ばれる球形のプローブを、測定物に接触させて座標を取得して寸法を測定します。高精度な測定結果を得るためには、測定物を載せる定盤や、プローブを三次元に移動させるスライドの品質が重要です。
非接触式の三次元測定機は、レーザーや光学的に測定物の形状をスキャンします。素材の材質や、必要な精度などで接触式とどちらを用いるかを選択する必要があります。三次元測定機は主に製造業や医療、航空宇宙産業などで用いられています。
三次元測定機の主な用途は製造業における品質管理です。部品の寸法は簡易的にはマイクロメーターなどで測ることができますが、複雑な形状や3次元的な公差は三次元測定機で測定する必要があります。
例えば精密機械や自動車、航空機などに使われる部品の一部では三次元測定機の活用が必須です。例えばスクリュー形状の部品のように複雑な立体形状では、通常の測定方法では正確に寸法検査ができませんが、三次元測定機は形状をなぞってミクロン単位の測定が可能です。
製造現場の品質管理以外には、リバースエンジニアリングで既存製品を三次元測定機で測定してCADデータ化する用途があります。例えば競合製品の分析や、古い製品で図面がない場合に、CADデータを制作する目的で用いられます。
三次元測定機の使用手順について、代表的な接触式測定機を例に解説します。
まず、測定環境の温度管理が非常に重要です。測定室および測定物の温度を一定に保つことで、測定器や測定物の熱膨張による寸法誤差を最小限に抑えることができます。一般的に、最適な温度は20℃前後とされています。
次に、キャリブレーション(校正)と呼ばれる初期設定を行います。これは、使用するプローブの球径やオフセットを測定機に正しく認識させるための作業です。具体的には、プローブの球径を設定した後、校正球(マスターボール)を測定し、プローブの位置精度を調整します。
続いて、アライメント(位置合わせ)を行います。これは、測定物の基準面や基準点をプローブで測定し、それをもとに三次元測定機上で座標軸(原点や軸方向)を定義する作業です。アライメントを正確に行うことで、測定物の位置情報が測定機に正しく認識され、以降の測定精度が向上します。
その後、実際の測定作業に移ります。測定物を定盤上に安定して固定し、作成した座標軸を基準として、測定対象となる穴や面などにプローブを接触させて寸法を測定します。平面や穴の測定では最低3点、球の測定では最低4点を接触させる必要があり、測定点を十分に設けることで測定精度が向上します。

三次元測定機には、据え置き型と携帯型の2種類があり、用途によって選択する必要があります。据え置き型の測定器は、短時間で高精度の測定結果が得られるメリットがあります。測定物が毎回同じ製品であれば、治具を用意しプログラムを作成することで、自動で効率よく測定することが可能です。一方で、導入にはコストがかかることや、設置スペースが必要なデメリットがあります。
携帯型の測定器はコンパクトで軽量なため、さまざまな場所に持ち込んで使用できます。コストが安く導入のハードルが低いメリットがありますが、測定精度が作業者によりばらつくなどのデメリットがあります。
また、測定方法としては接触式と非接触の2種類があります。接触式は実際に測定物と測定子を接触させるため測定精度が高く、精密部品などの測定で用いられています。一方、非接触式は短時間に測定物の形状をスキャンして3Dモデルを製作できるメリットがあります。
三次元測定機は製造業で幅広く使用されています。例えば、自動車産業では生産ラインで加工されたエンジン部品などの寸法を定時チェックしています。寸法が規格から外れていた場合は、生産設備の設定修正や、不良品の回収などが必要になるため、三次元測定機は重要な役割を果たしているといえます。
そのほかに、医療業界ではインプラントの寸法測定に用いられています。インプラント治療では複雑で高精度な機械加工が求められます。近年では、加工したインプラントを三次元測定機を用いて高精度に測定して管理する方法が標準的になってきています。
三次元測定機は製造業で幅広く使用されています。今後はデジタル活用により、単なる測定器から業務効率化を支えるツールへと進化することが期待されています。導入にはコストがかかり、メンテナンスなども必要になりますが、利用目的や用途を選ぶことで製造業のIoT活用で活躍が期待できます。