
インバーターは、直流を交流に変換する装置です。代表的なインバーターには、単相インバーターと三相インバーターがあります。単相インバーターは家庭用や小規模電力システムに適しているものの、大容量の安定供給には対応できません。その課題を解決するのが三相インバーターで、大電力を安定して出力できます。
本記事では、単相インバーターと三相インバーターのそれぞれの仕組みや種類、二つの違いや用途について解説します。
単相インバーターは、直流から、位相が一つだけ(単相)の交流に変換する装置です。電圧あるいは電流の出力波形は正弦波であるため、電力が瞬間的にゼロ出力となる期間があります。そのため、電力供給が安定しないというデメリットがあります。
以下では、単相インバーターの仕組みや種類を確認します。
単相インバーターは、いくつかのスイッチを切り替えることで、一つの位相を持つ交流を作り出す仕組みです。使われる部品としては、トランジスタやMOSFET、IGBTといったスイッチング素子があります。
主流の電圧型インバーターでは、電流の逆流を逃がすために帰還ダイオードが組み込まれており、素子に余計な負担がかからないよう工夫されています。こうした仕組みによって、スイッチの高速な動作や装置全体の小型化が実現できます。
単相インバーターの種類としては主に、フルブリッジインバーターとハーフブリッジインバーターの二つが挙げられます。
フルブリッジインバーターは、ブリッジ状に組み合わせた4個のスイッチング素子を用いて、直流を交流に変換します。こうした直流から交流への変換は、4個のスイッチング素子のオン・オフで4種類の動作モードを作り、これらの動作モードを切り替えることで実現されます。フルブリッジ型では直流電圧の利用効率が高いですが、回路や制御が複雑になります。
一方、ハーフブリッジインバーターは、2個のスイッチング素子と2個のキャパシタを用いて、直流から交流へと変換するのが一般的です。フルブリッジインバーターと異なり、2個のスイッチング素子のオン・オフで4種類の動作モードを実現します。そのため、回路や制御が容易になります。その反面、フルブリッジインバーターの半分の出力電圧であるため、直流電圧の利用効率は低くなります。

三相インバーターは、位相差が120度の正弦波を3個(三相)生成し、交流を出力する装置です。電流あるいは電圧が正弦波を3個同時に送電するため、電力がゼロ出力になる期間がありません。結果として、安定した電力供給が可能です。
以下では、三相インバーターの仕組みと種類を確認します。
三相インバーターは、6個のスイッチング素子を使って位相差が120度となる3個の交流を生成し、各交流を三つの電線に送ります。そのため、3個のハーフブリッジ型単相インバーターを応用しているともいえます。こうした位相差を持つ交流は、6個のスイッチング素子のオン・オフで8種類ある動作モードを作り、これらの動作モードを切り替えることで実現されます。
三相インバーターは、変調方式によってパルス幅変調や空間ベクトル変調などに種類分けすることが可能です。
パルス幅変調は、パルス幅を変化させることで電圧を調整し、正弦波に近い波形を出力する変調方式です。制御性に優れており、直流電圧の利用率が高いという特徴があります。
空間ベクトル変調(SVPWMあるいはSVM)はパルス幅変調を応用した方式であり、スイッチングにより出力ベクトルを連続的に回転させるように制御します。モーターの回転を細かく制御できるだけでなく、パルス幅変調よりも直流電圧の利用率が高いため、モーター駆動に適した制御方式であるといえます。
単相インバーターと三相インバーターの違いは、出力電力の安定性や仕組みの複雑さにあります。こうした違いは、電力システムの規模やコストに反映されます。
三相インバーターが安定した電力供給が可能だからといって、単相インバーターの役割のすべてを代替するわけではありません。単相インバーターは、一般家庭での電源用途を想定したパワーコンディショナーや無停電電源(UPS)など、比較的小規模な電力システムに使用されています。一方、三相インバーターは、エアコンのコンプレッサーや電気自動車のモーター駆動など、大規模な電力システムに用いられています。
単相インバーターと三相インバーターは仕組みに違いがあり、その違いは出力の安定性や電力システムの規模、コストなどに反映されています。また、単相インバーター、三相インバーターはともに、いくつかのバリエーションをもちます。それぞれの仕組みや種類を知ることで、用途に見合ったインバーターを活用することが可能です。