
UPS、EPSはいずれも電力供給の信頼性を支える装置である一方、発揮できる強みは明確に異なります。環境や使い方に応じて、最適なものを選べるようになることが大切です。
本記事では、UPSの仕組みや役割を詳しくご紹介し、UPSとEPSとの違いや使い分け、さらにUPS選定のポイントを解説します。
UPS(Uninterruptible Power Supply)は、停電や電圧低下などの電源トラブルが発生した際に、瞬時にバッテリー電源へ切り替えて機器への給電を継続する装置です。日本語では「無停電電源装置」とも呼ばれます。
UPSは主にバッテリー、整流器、インバーター、制御装置で構成されており、通常時には商用電源を通じて機器に電力を供給しつつ、同時にバッテリーの充電も行っています。
異常時には、蓄えた電力を瞬時にインバーターを通じて供給することで、システムのシャットダウンや機器の誤動作を防止するのが特徴です。
EPS(Emergency Power Supply)は、火災や災害時などの緊急時における避難誘導灯や非常照明、非常エレベーターなどへの給電を目的とした装置です。日本語では「非常用電源装置」と呼ばれます。
EPSは、UPSと同様に電源トラブル時に電力供給を行う機能を持ちますが、連続運転を前提とするUPSに対し、EPSは主に非常用運転に特化しているのが特徴です。
また、UPSが無瞬断切替を特徴とするのに対し、EPSは短時間の切替時間が許容される点も大きな違いです。さらに、EPSは主に建築基準法や消防法に基づく設備であるため、安全性の観点から選定・設計されます。
インバーターとは、直流電流を交流電流に変換する装置です。UPSやEPSをはじめとした、電力設備の中核機能として広く用いられています。
UPSにおいては、蓄電池から供給される直流電力を交流に変換し、接続された機器へ安定した出力を届ける役割を果たします。
また、インバーターは電圧や周波数の安定化機能も備えており、電源品質の確保にも役立つ存在です。電力変換効率や応答速度、ノイズ低減性能は、UPSの性能を左右するため、インバーター技術の進化はUPS全体の信頼性向上にもつながっています。

UPSは、主に電力障害が許されない業務や設備に対して導入されます。例えば、サーバーやデータセンターでは、瞬間的な電源遮断でもシステム障害やデータ損失が発生するため、無瞬断のUPSが必須とされます。
また、医療機関では手術中の装置停止を防ぐ目的で、UPSによるバックアップ体制が欠かせません。製造業の生産ラインや金融機関のATM、自動改札、通信基地局など、24時間稼働を求められるインフラにも広く利用されています。
さらに近年では、災害時の事業継続計画(BCP)やレジリエンス強化の観点から、地方自治体や学校などの公共施設にもUPS導入が計画されています。
UPSを導入する際には、まず保護対象機器の合計消費電力を明確にし、それに見合った容量のUPSを選定することが大切です。容量不足はシステム停止や装置破損のリスクを高めるため、想定よりも大きめの容量を目安とするべきでしょう。
次に、必要なバックアップ時間に応じたバッテリー構成を検討します。数分の待機時間で十分なケースもあれば、30分以上の電力保持が必要なシナリオも存在します。
また、常時インバーター給電方式やラインインタラクティブ方式など、運転方式の違いによって、出力の安定性や応答性、効率が異なります。導入目的に応じた方式の選定を進めなければなりません。
実装に際しては、設置スペースや冷却、メンテナンス体制も考慮しながら、長期的な運用コストと信頼性のバランスを見極めることが重要です。
UPS、EPSはいずれも電力供給の信頼性を支える重要な装置です。ただ、それぞれの設計思想や用途には、明確な違いがあります。
UPSは情報システムや精密機器の保護に、EPSは避難誘導など非常用機能に、それぞれの特性が最適化されています。
電源保護の必要性が高まる現代においては、単なる装置の導入ではなく、用途や環境に応じた最適な組み合わせと正しい理解が必要です。
設備選定の段階で専門家の意見を取り入れつつ、自社のニーズに即した信頼性の高い電源保護体制を構築することが、安定した運用と将来の事業継続につながる鍵となるでしょう。