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設備保護の重要部品、インバーターの役割について解説

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 設備保護の重要部品、インバーターの役割について解説

インバーターと聞くと、「モーターの回転数を制御する装置」というイメージを持つ方が多いかもしれませんが、実は“設備保護”という観点でも重要な役割を果たしています。設備の急な起動や停止による衝撃をやわらげたり、過負荷や異常加熱を検知して自動的に停止させたりと、装置の故障や寿命短縮を未然に防ぐ機能も備えているのです。

本記事では、こうした「守るインバーター」の視点に着目し、基本的な仕組みから具体的な保護機能、そして現場での活用事例までを分かりやすく解説します。

インバーターの基本的な働き

インバーターは、電動機(モーター)の回転速度やトルクを自在に制御するための装置です。交流電源の周波数や電圧を変換することで、モーターの回転数を柔軟に調整します。ポンプや搬送装置などの処理量を用途に合わせて最適化できるため、効率的な運転に貢献します。モーターなどの駆動部品も常に必要な出力で動作させることができるため、無駄なエネルギー消費を抑え、電力コスト削減も可能です。

さらに、インバーターは単なる制御装置にとどまらず、設備保護の面でも重要な役割も果たします。起動や停止を滑らかに行うことで機械にかかる負荷を和らげ、過剰なストレスによる部品の摩耗や損傷を抑えることができます。結果として装置全体の寿命が延び、保守や交換にかかるコストの削減にもつながります。インバーターは効率化と設備保護の両面から、機械に欠かせない重要な役割を担っているのです。

設備保護につながる主な機能

インバーターは設備保護につながるいくつかの機能を備えています。ここでは代表的な三つの保護機能をご紹介します。

ソフトスタート/ソフトストップ

モーターなどの駆動部品を急に起動・停止させると、強い衝撃や振動が発生し、部品に大きな負荷がかかります。インバーターで始動時や停止時の電力をコントロール(ソフトスタート/ソフトストップ)することで、回転を徐々に変化させて衝撃を和らげることが可能です。その結果、ベルトやギアといった駆動部品の摩耗を抑制し、装置全体の寿命を延ばして安定した稼働を実現できます。

過負荷保護/トルク制御

設備が想定以上の負荷を受けた場合、モーターや周辺機器に過大なストレスがかかり、発熱や故障の原因となります。インバーターは過負荷や異常なトルクを検知すると自動的に出力を制限したり停止させたりすることができるため、被害の拡大を防止することが可能です。設備の突発的なトラブルを未然に回避し、メンテナンスコストの削減にもつながります。

制動制御(ブレーキ機能)

搬送装置やコンベアでは、停止位置を正確に制御することが求められます。インバーターでコンベアの制動を制御することで回転を滑らかに加速・減速させ、狙った位置で安定して停止することが可能です。荷崩れや接触事故のリスクも軽減され、安全性と作業効率の両立が実現します。

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具体的な活用事例

インバーターによる設備保護の効果はさまざまな産業で活用されています。ここでは代表的な三つの事例を取り上げて解説します。

クレーン・搬送ライン

クレーンや自動倉庫の搬送装置では、インバーターのソフトスタート・ソフトストップ機能が効果を発揮します。荷物の急激な揺れや荷崩れを防ぐことで、作業者の安全確保と製品の保護の両方に貢献しています。結果として作業や設備稼働状況の安定性が高まり、作業効率の改善にも直結するのです。

ポンプ設備

ポンプを起動した際に発生するウォーターハンマー現象は急激な水圧の変化によって生じる現象で、配管の破損やバルブの早期劣化を招く要因です。インバーターを導入することでポンプの立ち上がりを緩やかに制御でき、ウォーターハンマーによる突発的な衝撃を抑えられます。結果的に配管など設備全体の寿命延長につながり、メンテナンス負担の軽減に寄与しています。

空調設備

ビルや工場の空調設備では、インバーターによる風量制御が効果を発揮します。必要に応じてモーターの出力を調整できるため、モーターの摩耗を抑えて効率的な運転が可能です。騒音の低減や消費電力の削減効果も発揮し、長期的な運用コスト削減にも貢献します。

インバーターは設備の安全を守る“縁の下の力持ち”

インバーターといえば省エネや効率化の効果に注目されることが多いですが、“設備保護”という重要な役割も担っています。急な起動や停止による機械への衝撃を抑え、過負荷や異常を検知して自動的に出力を制御するなど、設備の安全性と安定稼働を支えているのです。近年は材料費やエネルギーコスト高騰などの背景から、設備の長寿命化やメンテナンス負担の削減が大きな課題となっています。インバーターによる設備保護機能はますます重要性を増しているといえるでしょう。設備を導入・更新する際には、制御性能だけでなく保護機能にも目を向けることが長期的な設備運用では重要です。まさにインバーターは、設備を陰で支える“縁の下の力持ち”といえるでしょう。

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