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オシロスコープで押さえるべき性能指標や測定の注意点を紹介

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight オシロスコープで押さえるべき性能指標や測定の注意点を紹介

オシロスコープは、電圧信号の時間的な変化を波形として視覚的に表示する測定器です。時間軸に沿った電気信号の変動をリアルタイムに捉えられるため、信号確認や異常検知、性能評価に欠かせないツールです。本記事では、オシロスコープの基本的な性能や代表的な指標、さらに測定時の注意点について解説します。

オシロスコープの基本性能

オシロスコープは、時間と電圧の関係を波形として表示する測定器です。オシロスコープの画面は、横軸に時間、縦軸に電圧を取り、リアルタイムで電気信号の変化をグラフ化します。アナログ型では、電子ビームがブラウン管上を走査することで波形を描いていました。一方で、現在主流のデジタル型は、電気信号を高速でサンプリングしてデジタル処理し、ディスプレイに表示します。

また、オシロスコープには「トリガ」と呼ばれる機能があり、上昇エッジや所定の電圧レベルなど波形の特定の条件に基づいて測定を開始できます。これにより、一瞬しか現れないような信号の変化も安定して観測できます。ほかにも、複数の信号を同時に表示してタイミングを比較したり、波形を平均化してノイズを除去したりするなど、柔軟な解析が行えます。

オシロスコープの代表的な性能指標

オシロスコープを用いて信号を正しく観測するには、周波数帯域、立ち上がり時間、サンプルレート、レコード長、垂直分解能といった複数の指標を押さえることが重要です。

周波数帯域

周波数帯域は、オシロスコープが正確に測定できる周波数の範囲を示します。測定対象の信号が高周波になるほど、この帯域の広さが重要になります。仕様上の周波数帯域は、入力信号が3dB減衰する点を基準に定められており、これは「エネルギーが約半分になり、電圧が約30%低下した信号」として表示されます。そして、一般に測定対象の3倍以上の帯域幅を持つオシロスコープが推奨されます。例えば、100MHzの信号を測定したい場合は、少なくとも300MHzの帯域幅を持つ機種が必要です。

立ち上がり時間

立ち上がり時間は、急激な変化を持つパルス波形などを観測する際に、波形の形状をどれだけ正確に捉えられるかを示す指標です。周波数帯域幅との間には反比例の関係があり、「立ち上がり時間 ≒ 0.35 / 帯域幅」で近似的に計算できます。帯域幅が広いほど立ち上がり時間は短くなり、高速な変化を精細に再現できるようになります。

サンプルレート

サンプルレートは、時間軸方向におけるサンプリングの頻度を示し、1秒間に何回信号を記録できるかを表します。この値が低すぎると、本来の波形を正確に再現できず、誤った形で表示されてしまいます。ナイキストの定理では、観測する信号の2倍以上のサンプルレートが必要とされますが、現実にはより余裕を持った設定が望ましいとされています。

レコード長

レコード長は、どれだけ長時間にわたって信号を詳細に記録できるかを示す指標で、「サンプルレート × 測定時間」によって決まります。瞬間的に発生する異常や、周期が長い波形の確認には、単に高いサンプルレートを持っているだけでなく、それに見合った十分なレコード長も必要です。多チャネル同時測定では、各チャネルのレコード長にも注意を払う必要があります。

垂直分解能

垂直分解能は、電圧方向の解像度にあたり、A/D変換時に信号を何段階に分割できるかを表します。一般的なオシロスコープは8ビット(256段階)ですが、より高精度な測定が必要な場面では12ビット(4096段階)やそれ以上の機種を使用します。これにより、ノイズの中に埋もれた微小な信号の識別や、電源の変動といった細かな電圧変化の検出が可能になります。

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測定時のポイントや機能

正確な波形を観測するためには、適切なオシロスコープの選定やプローブの取り扱い、さらにはオシロスコープの解析機能の活用が重要です。

異常信号やノイズへの対応

測定したい信号の特性に合ったスペックを持つオシロスコープを選定することが、正確な観測の第一歩となります。例えば、サンプルレートが足りていないと、「エイリアシング」と呼ばれる現象が起こり、本来高周波成分であるはずの信号が、見かけ上は低周波に見えてしまうことがあります。

また、外部からのノイズの混入にも注意が必要です。例えば、測定プローブのグランドリードが長すぎると、不要な共振が生じ、波形に振動が現れることがあります。これを防ぐためには、グランド線を短くしっかり接続することが重要です。さらに、プローブの補正機能を使ってプローブの特性を校正しておくことで、測定の再現性と信頼性を高められます。

実用的な解析機能

オシロスコープは、単に波形を見るだけでなく、さまざまな解析機能を備えています。例えば、グリッチなどの瞬間的な異常を検出する際には、「パーシスタンス表示」と呼ばれる重ね書き機能が有効です。これにより、まれにしか現れない異常信号でも、繰り返しの測定を通じて視覚的に確認できます。

また、FFT解析機能を用いることで、波形に含まれる周波数成分をリアルタイムで確認でき、ノイズ源や共振点の特定に活用できます。さらに、スイッチング回路の評価や、電源ラインに含まれる高調波成分の確認など、高精度な電力測定にも対応可能な機種が登場しており、オシロスコープの役割は従来以上に広がりを見せています。

オシロスコープで詳細な信号解析が可能になる

オシロスコープは、単に信号を表示するための道具ではなく、信号の品質や動作状態を多角的に解析するための強力なツールです。帯域幅、サンプルレート、分解能といった性能指標を理解し、測定目的に応じて適切な機器を選定しましょう。それにより、精度と信頼性の高い測定結果が得られ、設計品質の向上やトラブル解析の迅速化につながるでしょう。

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