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フロン計測の必要性や測定方法

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight フロン計測の必要性や測定方法

フロンは化学的・物質的な特性から、エアコンや冷蔵庫などの冷媒として広く使用されてきました。フロンは常温付近で液体から気化するため、気化熱を奪って冷却する用途に適しています。また化学的な安定性があり、毒性や可燃性がないことから工業用・家庭用で広く普及しました。

しかし、オゾン層の破壊を起こすガスとして規制されるようになり、近年は温室効果ガスとしての側面から排出量の計測が必要となっています。本記事ではフロン計測の必要性、計測方法、計測機器などを解説します。

フロン計測の必要性

フロンは漏洩するとオゾン層を破壊するため、使用する企業には重大な責任があります。そのため地球環境への対策を企業に求める、国際的・国内的な法令が設定されるようになりました。

国際的な法令では、1987年のモントリオール議定書でCFC(クロロフルオロカーボン)とHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)の段階的な廃止が取り決められました。さらに、2016年のキガリ改正ではHFC(ハイドロフルオロカーボン)も削減対象に追加されました。

国内法では、経済産業省によりフロン類の機器取引の制限や回収などを義務付けるフロン排出抑制法が定められています。また、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)において、計測の対象ガスに指定されています。温対法では排出したフロン類を二酸化炭素換算した地球温暖化係数と呼ばれるものによる報告が必要となります。

フロン計測の基本的な方法

フロン計測は、目視・聴覚での点検や、検知器を用いる方法などがあり、用途や目的により異なります。

目視・聴覚での検査では簡易的にフロンの漏洩がないかを確認します。フロン排出抑制法では3か月に1回以上の点検が義務付けられており、フロンを使用したエアコンや冷蔵機器が対象とされています。配管や機器の錆や付着を目視で確認したり、運転中に異音がないかを調査したりします。

検知器を用いた計測は、漏洩の有無だけではなく定量的に漏れ量を計測します。計測した結果は、フロン排出法や温対法の報告に用いられます。検知器にはポータブルや定置型があり、使用環境により使い分けが必要です。計測した濃度結果を記録して設備の修繕や更新計画を立てるなどに利用します。

フロン計測機器の種類

フロン計測機器は計測精度や測定範囲、応答時間などに違いがあるため、用途や目的に合わせて選択する必要があります。ここでは測定方式の異なる二種類の計測機器を解説します。

半導体式センサー

半導体式センサーは金属酸化物半導体を用いてフロン濃度を計測します。金属酸化物に測定対象のガスが触れると、ガス濃度により抵抗値が変わるためその変化を基に濃度を計測する手法です。

低濃度のガスの検出に用いられ、約500〜10,000ppmの範囲が計測可能です。センサー本体が小型で、長寿命でありコストが安価な点がメリットです。

赤外線式センサー

赤外線センサーは非分散型赤外線吸収法(NDIR)を利用したセンサーです。電磁波の一種である赤外線を計測対象のガスに照射したときに、特定の波長が透過するかによりガス濃度を計測します。

赤外線センサーの特徴はフロン以外にも幅広いガス種が測定できる点です。精度や応答性などは優れていますが、半導体式センサーに比べて大掛かりで高価な装置です。測定範囲は低濃度から高濃度まで広範囲に対応しています。

フロン計測の必要性や測定方法 挿絵

フロン計測の測定結果報告義務

フロン排出抑制法や温対法に基づき、(対象の)事業者はフロンの計測結果を国や県などに報告する義務があります。対象となる事業者は、フロンの漏洩量がCO2換算で年間1,000t-CO2以上の事業者や、業務用冷凍冷蔵空調機器を扱う事業者、フロン機器の回収・廃棄などを取り扱う事業者です。

測定結果の報告は、専用システム(EEGS)を用いると、温対法、省エネ法、フロン排出抑制法の報告を一括で管理できます。既定の様式に従い報告を行いますが、報告義務を怠った事業者は指導・勧告・罰則の対象となる可能性があります。さらにその内容は公表されるため、企業イメージに影響をおよぼします。

最近ではフロンの点検記録をデジタル化して一元管理するアプリやIoTデバイスが登場しています。こうしたサービスではフロン機器の情報を登録し、その点検結果を記録することで報告書の作成を効率化できます。

フロンガスは温室効果ガスとして計測が義務化される

近年、企業はサステナビリティ報告を投資家や消費者に対して求められる時代になりました。特に気候変動対策はこれから法令による開示要求などにより、温室効果ガスの排出量の計測が義務付けられることが予想されます。そうなるとフロンガスを実測値で報告が必要となる可能性があり、今後の社会動向や法規制など情報収集して対応が必要となります。

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