
近年、気候変動による異常気象や自然災害が増加する中で、世界各国は地球温暖化対策を各企業に義務化する取り組みを進めています。日本においても2050年のカーボンニュートラルを目標に掲げ、GXリーグに参加する国内企業にCO2削減目標の開示を求めています。
GXリーグでは工場から排出されるCO2の削減のため、従来の都市ガスなどの化石燃料に代わり、水素やアンモニアといった燃焼時にCO2を排出しないCN燃料への転換を推奨しています。CN燃料の活用に向けては、今後多くの企業や研究機関で技術開発が必要となり、それに伴いCN燃料に対応した流量計が必要となります。
この記事では工場や研究施設で使用される流量計について、概要や用途、種類などを解説します。
流量計は気体や液体が、時間あたりに流れる流量を計測する機器です。流量計は私たちの暮らしの中で身近に使われている計測器です。例えば家庭では、水道やガスの流量計が使用され、その計測値に基づいて使用料金が計算されています。
工業、化学、食品、医薬品など幅広い業種で使用されています。例えば工業炉では都市ガスと空気の流量をそれぞれ計測して、適切な比率で管理することでバーナーの燃焼を安定させています。
流量計にはさまざまなタイプがあり、通過する流体を機械的に直接測定するものや、超音波などを用いて非接触で計測するタイプがあります。非接触式では、配管の外部に設置して計測できるためフレキシブル性が高い特徴があります。
流量計は安全確保や品質管理、エネルギー使用量計測などさまざまな目的で利用されています。
安全目的では装置の故障を防止するために流量を計測する用途があります。例えば装置の過熱防止で冷却水を流す場合、流量計で冷却水の流量を管理して、流量低下時には異常を知らせる方法があります。
品質管理では製造工程の中で、製品の品質確保に必要な流量を計測します。例えば商品を塗装する工程では、塗料の流量を計測管理して塗装不良を防止します。
エネルギー使用量を測定する場合は、都市ガスやガソリンなどの燃料の流量を測定します。それに伴う使用料金の計算や、エネルギー使用に伴うCO2排出量の算出などで利用されます。
流量計には大きく分けて体積流量を計測するものと質量流量を計測するものの2タイプがあります。どちらも同じく単位時間あたりに流れる流量を計測しますが、用途や目的に応じて使い分けが必要です。
体積流量を計測する流量計は、単位時間に流れた流体の体積を計測します。
体積流量は流体が流れる配管などの断面積に、流体の平均流速をかけて求められます。単位は「m3/s」(立方メートル毎秒)で表されますが、そのほかにL(リットル)や毎分、毎時で表示されることもあります。
体積は流体の圧力や温度によって変化するため、通常は流体の標準状態における流量を表示します。標準状態とは大気圧で0℃の状態で、単位はNm3(ノルマル立方メートル)というように区別して表示します。
質量流量を計測する流量計は、単位時間に流れた流体の質量を計測します。多くの場合は体積流量が用いられますが、質量の異なる複数の流体が流れる場合などは質量流量が必要です。その理由は、体積流量だと流体の成分が変化すると、同じ体積でも流れる流量が変わるため計測結果に誤差が発生するためです。
質量流量はガス特有の熱拡散作用により流量を測定します。一般的な質量流量計として挙げられるのは熱式流量計であり、ガスの圧力により変化する熱伝達量を計測して質量流量に換算します。
質量流量計は半導体製造装置や、医療分野、燃料電池など近年成長著しい産業で多く使用されています。特に今後GXリーグで水素やアンモニアの利用が拡大すると、質量流量は従来の都市ガスと水素を同時に計測できるメリットがあります。

脱炭素社会の構築に向けて、GXリーグでは都市ガスなどの化石燃料から、水素やアンモニアなどのCN燃料への切り替えが求められます。CN燃料は燃焼時にCO2を排出しないため、鉄鋼業や自動車産業など多くの業種で必要な技術となります。
水素やアンモニアを工場や研究施設で利用するためには、それらに対応した流量計が必要となります。従来よく使用されてきた体積流量計では、体積当たりの質量が異なる流体を測ると誤差が発生してしまいます。その点、質量流量計であれば流れる成分が変わっても正確に流量を計測できます。
脱炭素社会で必要となる流量計の開発を進めているメーカーを紹介します。
愛知時計では、東京ガスと共同で水素用超音波式流量計を開発しました。特徴は圧力損失が少なく、前後の配管を直管につなぐ必要がない点で、幅広い場所で利用できます。高い耐久性を持ち流量計内に水分が流入しても故障しないため、環境負荷の高い用途での使用も可能です。
オーバルでは、水素やアンモニアを計測可能な各種流量計を通して、カーボンニュートラル実現に向けた製品開発に取り組んでいます。渦流量計やタービン式流量計、コリオリ式流量計、熱式流量計など幅広い製品をラインアップしています。燃料電池自動車向けの水素ディスペンサーなどで実績があります。
地球温暖化は年々深刻化しており、2050年カーボンニュートラルに向けて水素やアンモニアの活用が広がると考えられています。それに伴い、技術開発や生産ラインでの管理のために流量計の需要が拡大することが予想されます。