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LCA(ライフサイクルアセスメント)と計測機器の関係

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight LCA(ライフサイクルアセスメント)と計測機器の関係

製品の原材料調達から始まる一連のプロセスでの環境負荷を可視化することは、環境負荷の低減やコスト削減において重要です。この記事では、LCAの重要性や、計測機器の導入によってどんなことが実現するのか、何を導入すれば良いのかを解説します。

LCAとは?脱炭素・SDGs時代に必須の概念

LCAは、SDGsへの注目の高まりとともに重視されるようになってきた概念です。ここではLCAの一般的な知識について、整理しておきましょう。

LCAの4つのステージ

ライフサイクルアセスメント(LCA)は製品の原材料調達から製造、使用、廃棄までの一連のプロセスで投入資源や排出物を定量化し、環境負荷を可視化する手法です。

原材料調達段階では、素材採取や輸送に伴うエネルギー消費と二酸化炭素排出を把握し、製造段階では生産ラインの電力使用量や排ガス量を測定します。 また、使用段階では、使用時の電力・燃料消費とメンテナンス資材を記録し、廃棄段階では有害物質含有量などを評価して、リサイクル可能量や埋立処分量を算出します。

なぜ中小企業でもLCAが必要になるのか

近年、取引先や金融機関によるESG評価で製品ごとの環境負荷データ提出が条件化し、中小企業にもLCAレポートの提出が求められる機会が増えてきました。

LCA対応が後手に回ると、受注機会の損失や信用低下を招くリスクがあることから、早期導入が推奨されています。

また、LCAを実施すると自社の製造コスト構造やエネルギー消費が可視化され、無駄の削減や省エネ改善によるコストダウン効果も享受できます。

LCA(ライフサイクルアセスメント)と計測機器の関係 挿絵

計測機器が担う役割

環境負荷データの信頼性は計測機器の精度に左右されます。LCAでは計測機器がデータ取得の起点となるため重要視されています。

原材料調達から製造、使用、廃棄まで一貫して正確に測定できなければ、LCA評価の信頼性を担保するのは難しいでしょう。

原材料調達段階での計測

原材料調達段階では、取引先から受領する材料サンプルの重量を高精度はかりで測定し、化学成分分析装置で成分比率を解析します。

また、鉱石や樹脂の製造時エネルギー消費量をデータロガーで記録することが重要です。

製造工程での計測

製造工程では、電力ロガーを使い生産ライン全体の電力使用量をリアルタイムで記録し、温度センサーで加熱炉や乾燥機の運転温度をモニタリングします。

これにより、各工程のエネルギー効率の改善点を特定できます。

製品使用段階での計測

使用段階では、製品が稼働中に消費する電力や燃料の使用量を電力計や燃料流量計で測定し、消費パターンを解析します。性能劣化の兆候を早期に検出し、製品寿命中の環境負荷を正確に把握可能です。

廃棄段階のWEEE計測

廃棄段階では、回収された電子・電気製品(WEEE)の重量を計量し、有害物質測定装置で含有量を評価します。

計測によって、再資源化可能量や適切な処分方法を選定し、廃棄による環境リスクを低減できます。

LCA評価に用いられる代表的な計測機器リスト

LCA評価に際しては、以下のような計測機器の導入が求められます。それぞれの違いを確認しておきましょう。

電力ロガー・エナジーモニター

電力ロガーやエナジーモニターは、生産設備やオフィスビルなどの電力消費をリアルタイムで記録し、データを蓄積する装置です。

収集した電力量データを製品ライフサイクル全体のエネルギー投入量として可視化し、各工程の省エネ改善策立案とその効果検証に活用できます。

ガス分析計

ガス分析計は、燃焼装置や排気ガス中の成分を精密に測定し、CO2やNOXの濃度など環境負荷係数算出に必要なデータを提供します。

分析精度の高いセンサー技術により、燃焼プロセスの最適化や排ガス浄化装置の性能検証に役立ち、LCA評価の信頼性を高めます。

質量流量計・流量センサー

質量流量計や流量センサーは、原材料や製造工程で使用する液体・気体の流量を正確に計測します。

投入量が一定でない現場でも高精度なデータを取得でき、材料使用量とエネルギー消費量の定量化が可能です。これにより無駄を削減し、LCA評価のデータ基盤強化につながります。

熱画像カメラ・温度センサー

熱画像カメラや温度センサーは、製造ラインや配管の温度分布を可視化し、隠れた熱損失箇所を発見するために用いられています。

高解像度のサーモグラフィー技術と連携してエネルギーロスを定量評価し、効率の改善点の特定と改善施策の効果の検証を支援することで、LCA実装の精度を向上させます。

LCAを進めるための段階的フロー

LCAの実装に際しては、以下のステップを進めることで、期待している成果を得ることができます。

小規模スコープでの試し算定方法

まずは原材料調達、製造、使用、廃棄の4工程に限定し、各工程の電力使用量と原材料投入量のみを計測してLCAの全体像を把握します。

必要最小限のデータで環境負荷分布を可視化し、詳細調査の優先順位を効率的に絞り込むことで、初期段階から効果的な改善検討が可能です。

データの収集・分析

収集したデータはLCA専用ソフトに入力し、製品ライフサイクル全体の環境負荷を定量化します。原材料投入量や排出量のホットスポットを上位20%で特定し、重点的に改善すべきプロセスを可視化する工程です。

分析結果はグラフ化して関係者へ共有し、具体的な対策立案に役立てます。

スコープ拡張

初期評価で未測定だった使用段階や廃棄段階の計測計画を追加し、対象を製品寿命全体に広げます。フィールド計測を定期化してデータを蓄積し、温度センサーや消費パターンモニタリングを実現します。

こうして得られた詳細データをLCAモデルに反映し、より精緻な環境負荷評価と継続的改善の基盤構築に役立てるプロセスです。

レポート作成・改善施策の提案

解析結果を基にCO2排出削減策や、リサイクル率向上策を具体的に立案し、経営層や取引先向けにレポートを作成します。

レポートではグラフや表を駆使して可視化し、改善施策の実施計画とそのコスト削減効果を明示しましょう。これにより社内合意を促進し、PDCAサイクルを回して継続的な環境パフォーマンス向上を図ります。

LCAと計測はセットで考える

LCAの導入を成功に導くには、計測機器によるデータ取得とその分析を繰り返すことでPDCAサイクルを確立することが大切です。

初期の可視化成果を社内に提示しながら段階的にスコープを拡大し、機器連携による継続的改善を推進することで、環境負荷低減とコスト削減を両立しましょう。

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