1943年に創立された株式会社SCREENホールディングス(京都市上京区)は、主力の半導体洗浄装置をはじめ、ディスプレイやプリント基板市場などで確固たる地位を確立しています。特に、薬液をスプレーしてウエハーを1枚ずつ洗浄する枚葉式洗浄装置では、世界シェア№1となる45%のシェアを誇っています。創立80周年を機に改定した存在意義「人と技術をつなぎ、未来をひらく」に立脚し、高成長が見込まれる半導体市場を中心にさらなる発展を目指しています。
同社は石田旭山印刷所(現在の株式会社写真化学)で開発された写真製版用ガラススクリーンの研究部門が独立するかたちで設立されました。当初から表面処理をコア技術として持ち、製版装置を経てCRT向け部品の製品化でエレクトロニクス分野へ進出し、半導体やディスプレイ、プリント基板製造装置へ展開していきました。いずれもコア技術を用いて付加価値を生み出し、社会課題の解決に訴求するという精神に根差しています。
同社は自社の社風を「実直」と表現し、頼んだことを最後まで粘り強くできるパートナーだと顧客から評価されています。例えば、半導体洗浄装置で高いシェアを有していたバッチ式製品に安住せず、将来的に枚葉式が必須になると予測し、先行的な技術開発とプラットフォーム化を達成。これが顧客ニーズに合致したことで先端半導体領域における現在の地位につながりました。これこそ、同社の実直な社風があればこそ成し得た成果といえます。
2014年の持株会社制度への移行に伴い、長年の大日本スクリーン製造からSCREENホールディングスに商号を改めました。これは各事業部門を独立させて意思決定を迅速化し、成長加速につなげることを目的としたものでしたが、2019年ごろには個別最適の行き過ぎが課題となりました。このため2020~2023年度を期間とする中期経営計画では、グループで景気に左右されないものづくり体制を構築し、キャッシュを生み出せる企業に転換を推進。また、コロナ禍を契機に顧客への付加価値を意識し、成長投資を重視するように意識変革も進んできました。
今後も半導体分野を成長の柱に据え、2030年に予測される市場規模に対応するには、洗浄装置の生産能力は現状の30~40%の増強が必要となります。また、これには自社だけでなくパーツや材料などサプライチェーン全体での体制強化も必要になります。そこで同社は、サプライヤーと中長期でフォーキャストを共有し、安定的な供給体制の構築に取り組んでいます。
技術的には最先端プロセス向けの洗浄技術を着実にキャッチアップしていくとともに、省エネ化で必須になると見込まれるチップレットなどの先端パッケージにフォーカスしています。各事業会社のコア技術を用いた直接描画装置や塗布装置などをラインアップし、グループ横断プロジェクトとして取り組んでおり、プリント基板製造装置部門においても、基板微細化や先端パッケージ向けの取り組みを強化しています。
SCREENホールディングスは、2025年6月の定時株主総会を経て専務執行役員の後藤正人氏が代表取締役 取締役社長兼CEOに就任しました。後藤氏は1990年に当時の大日本スクリーン製造に入社し、半導体製造装置事業でキャリアを重ねてきました。装置の製造やフィールドエンジニアリングに携わり、大手デバイスメーカーや海外の研究機関と密接な関係を構築。同社が持株会社制となって以降はSCREENセミコンダクターソリューションズの常務や社長執行役員を歴任し、主力生産拠点である彦根事業所での生産増強や収益改善でも成果を上げてきた人物です。
生産面では、彦根事業所(滋賀県彦根市)で2024年1月に新棟「S3-5」(エス・キューブ ファイブ)が竣工し稼働を開始しました。彦根事業所は、主力の枚葉式洗浄装置をはじめとする半導体製造装置およびディスプレイ製造装置の主力製造拠点です。既存のS3-3(エス・キューブスリー)ならびにS3-4(エス・キューブフォー)、そしてS3-5の3棟で一体的な生産体制を構築しています。
最新棟であるS3-5は、自動化による高効率化を重視して設計され、さまざまな自動化設備が導入されています。例えば、部品の仕分けや搬送にはデジタルピッキングや無人搬送システムを採用しています。ほかにもスマートデジタル屋台システム(セル生産方式において、ITで作業を支援するシステム)を導入することで効率化を図っています。従来S3-3で担っていた部品の仕分け作業などがS3-5に移管されており、S3-3の空いたスペースでチャンバーの組立作業を行うことにより生産能力が増加しました。
S3-5は、S造り地上3階建て延べ1万3534㎡(建築面積約5400㎡)の規模を有し、渡り廊下で連結されたS3-3、S3-4と連携して枚葉式洗浄装置「SU-3200」を中心に生産しています。1階では搬入された部品の仕分けを実施。デジタルピッキングの導入でロボット占有エリアが設けられており、無人での部品仕分けと搬送を実現し、自由度が高いレイアウト設計ができる空間となっています。
SCREENはS3-3、S3-4、S3-5を一体的に運用することにより、全体として年間売上高5000億円に対応できる生産能力を構築。そして今後もさらなる効率化や自動化の推進、スペースの有効活用などにより能力の増強を進める予定であるとともに、将来のグループ生産体制の増強に備えて京都府長岡京市に土地と建物を取得しています。
同社は、創業100周年に向けたSCREENのあり方として、「まずはソリューションクリエイターを目指す」といいます。その先は、「自分たち自身で社会を変える物を生み出し、それが社会のあちこちに存在する」という企業像を持っているとし、その実現に向けてイノベーションフレームワークを導入し、選択と集中を図りながら計画的な事業創出を進めていく考えです。