メタンは私たちの日常生活で広く利用されているエネルギー資源で、都市ガスの主成分としても知られています。引火性や中毒性があるため、労働安全衛生規則で濃度管理が定められているなど安全な利用には注意が必要です。
また近年では、GXリーグが見据えるカーボンニュートラルの実現に寄与する、合成メタンやバイオメタンに注目が集まっています。これらの普及のためにはメタン濃度を計測して、既存の都市ガスと同等の濃度であることを確認する必要があり、濃度計の役割が重要となります。
この記事ではメタンガス濃度測定器について、その概要や種類、用途などを解説します。
メタンガス濃度測定器は、サンプルガス内に含まれるメタン成分の濃度を測定する計測器です。メタンは炭化水素の一つで化学式はCH4、無味無臭な気体で可燃性があり、エネルギー資源として利用されています。日常生活で重要なガスですが、漏洩すると中毒や火災のリスクがあるため濃度計で測定し安全を確保する必要があります。
メタンは都市ガスの約9割を構成していて、工業用や家庭用などでさまざまな用途で使われます。工業用では鋼材の溶解や熱処理炉のガスバーナーの燃料に使われ、家庭用では調理や給湯器などで用いられています。燃焼させると酸素と反応し、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を大気中に放出するという欠点があります。
近年は燃焼させても二酸化炭素量が増加しない合成メタンが注目されています。合成メタンは、空気中や排気ガス中から回収した二酸化炭素と水素を反応させて合成した燃料です。燃焼時に発生したCO2は回収したCO2と相殺されるため、大気中のトータルの二酸化炭素量は増加しません。そのためGXリーグで既存のメタンに代わるカーボンニュートラル燃料として注目されています。
メタンガスは通常、パイプラインなどの配管やガスボンベに密閉され、安全に利用されています。ただし、万が一漏洩すると中毒や火災事故に繋がるリスクがあるため、安全確保のために濃度計が利用されています。またメタン自体が温室効果ガスなので、大気への漏洩が起こらないようにするためにも計測することが重要です。
メタンガスは空気中に5〜15%の濃度で存在している時に、着火源があると爆発する可能性があります。例えば、地下坑道の工事など密閉された空間でガスが漏れると、作業中に発生した火花などが引火し、事故につながるおそれがあります。また無臭のため、気付かずにいると窒息や中毒を引き起こすリスクがあります。
メタンガスの安全基準は1.5vol%以下(労働安全衛生規則)と定められており、万が一超えた場合は作業員の退避や火気使用禁止が決められています。メタンガスを計測する濃度計は防爆仕様が必要であり、開始前や作業中の常時監視を行い濃度が超えた場合は警報装置や電源遮断が必要となります。
メタンガス濃度計の測定方法は大きく3種類に分けられます。赤外線吸収方式、ガスクロマトグラフ方式、温度・電気抵抗方式、それぞれの方式の特徴をご紹介します。
赤外線吸収方式はサンプルガスに赤外線を当てて、ガスに含まれる成分ごとのスペクトルから濃度を測定する方式です。ガス濃度が低濃度でも安定した測定ができて前処理が不要な点がメリットです。NDIR(非分散赤外吸収法)という手法を用いた装置が一般的に使用されています。
ガスクロマトグラフ方式は、複数の成分が混在するサンプルガスをイオン化して分離することでそれぞれの濃度を測定する方式です。低濃度でも高精度の測定結果が得られるため、化学や環境、医療の分野などで精密測定が必要な場合に用いられています。
熱伝導方式は、ガスに接触した素子の温度変化や抵抗値変化量からガス濃度を測定する方式です。安価で小型な計測器のため、現場作業に用いられます。ただし、低濃度の検出が難しく、周囲環境の温度変化で測定値が安定しない欠点があります。
メタンガス濃度計は今後、カーボンニュートラルの実現に必要な合成メタンやバイオガスの普及に伴って必要となる機器として注目されています。
合成メタンは「メタネーション」と呼ばれる技術で作られる合成燃料で、大気中の二酸化炭素を分離回収して水素と反応させて生成します。そのため燃焼して二酸化炭素が大気に放出されても二酸化炭素の総量は変わりません。バイオメタンは生ごみなどの廃棄物や、家畜の糞などを発酵させて生成されたガスで、メタンを豊富に含んでいます。本来焼却処分される廃棄物が燃料として利用されることで、資源循環型社会の構築に役立てられます。
合成メタンやバイオメタンの漏洩は既存のメタン同様に危険性があります。安全に利用するには濃度計による管理が重要です。また、合成メタンやバイオメタンにはメタン以外の成分が含まれているため、燃料として利用するためにはメタン含有率が一定以上であることを確認する必要があり、そのためにも濃度計による計測が必要です。
メタンガス濃度計は安全確認で必要な計測器で、今後はカーボンニュートラル達成のために利用増加が予想されています。メタンを安全かつ適切に利用するためには、測定目的に合わせた測定方式を選択して、正しい測定結果を得ることが必要です。