今後、カーボンニュートラル社会の実現に向けてGXリーグでは水素やアンモニアなど危険なガスの利用が必要になると考えられています。万が一のガス漏れ時に必要となる、軽量で持ち運びできるハンディガス濃度計が必要となります。
この記事ではハンディガス濃度計について概要や用途、種類などを解説します。
ハンディガス濃度計はポータブルなガス濃度計です。持ち運んで使えるため、環境モニタリングや工場排ガス測定、研究開発など幅広い用途で使用されています。ハンディガス濃度計にはいくつかのタイプがあり、用途に合わせて選ぶ必要があります。 ガス濃度計には固定式とハンディ式があり、使用用途や目的により選択が必要です。固定式は定点観測でガス濃度変化の記録をとる目的や、特定の場所でリアルタイムにガス漏れを監視する用途などで使われます。一方でハンディ式は測定場所とタイミングを自由に選ぶことが可能で、ガス漏れ箇所の特定や屋外測定などで使われます。
ハンディガス濃度計は計測プローブ、表示部、電源などから構成されています。プローブはサンプルガスに当てて測定するプローブで、その測定結果を液晶画面などに表示します。電源のタイプとしては電池タイプのものや充電式のバッテリータイプのものがあります。
ハンディガス濃度計は幅広い目的で使用されています。ガス漏れ時の濃度測定や、官公庁への届出作成、生産工程管理などで具体的な使用用途は以下の通りです。
・プラント工場、家庭、事業所のガス漏れ箇所の特定
・研究施設のガス濃度の測定
・建物、輸送機器の環境測定
・半導体製造の工程における材料ガスの測定
ガス漏れ点検は可燃性ガスや有害ガスが漏れたときに、災害が起きないようにするために工場や家庭で使われます。一方で環境測定では、法律で規定された特定成分が既定濃度以下であることを官公庁へ報告するために使われます。また、半導体製造工程では材料ガスの漏れ検査のように生産工程の不具合を見つけるために使用されています。
ハンディガス濃度計は測定方式や測定ガス種、測定環境などで種類分けされています。拡散式と吸引式、単成分型と複合成分型、防爆型と非防爆型についてご紹介します。
拡散式は漏洩したガスが拡散した雰囲気下で濃度を測定するために使用されます。例えばプラント設備などで作業者が携帯し、ガス漏れを検知したときに警報を鳴らし危険を知らせます。一方で吸引式は測定者が立ち入ると酸欠などの危険がある場所の測定を行う場合、吸引ホースを測定場所に投入して濃度を測定します。例えばタンク内やマンホール内など密閉容器内のガス濃度測定で有害ガス成分を測定するときに使用します。
単成分型は特定の一つの成分を測定するために使われる濃度計で、内部に1種類のセンサーが内蔵されています。特定の限定された用途でしか使用できませんが、コストが安価というメリットがあります。複合成分型は1台の濃度計で複数種の成分の測定ができます。表示画面で測定ガスを切り替えて任意のガスを測定でき、複数のガス成分を監視する場合などに使用されます。
防爆型の濃度計は火災リスクがある環境で使われます。例えば石油化学プラントのように可燃性ガスを扱う場所や、近年では水素ガスを用いる研究開発機関でも使用されています。そのような可燃性ガスがない環境では一般的に非防爆型の濃度計が使われます。
ハンディガス濃度計にはさまざまな種類のガスに対応したものがあり、用途によって使い分けられています。 ガス漏れから作業者を守る用途では酸素、硫化水素、可燃性ガス、一酸化炭素など複数種のガス成分を測定できるタイプが使われます。化学工場や研究設備では特殊ガスを扱うためアンモニアのような毒性ガスの検知も必要です。
半導体製造工程では30種にもおよぶ材料ガスが扱われるため、漏れ検査で検知器が使われています。アンモニアのような自然界に存在するガスよりも、存在しないガスが多く使われています。可燃性、腐食性がある特殊ガスのため、漏洩防止のため安全性に十分な注意が必要となり濃度計が生かされています。
ハンディガス濃度計を取り扱うメーカーは国内外にあります。例えばヴァイサラはフィンランドに本拠地を持つ産業用測定器メーカーで、ハンディタイプの計測器は環境測定のために湿温度、二酸化炭素などを測るタイプがあります。またGX関連ではメタネーションやバイオガス測定で使われるタイプが登場しています。
コスモス電機は多くの用途・目的に合わせて幅広いラインアップを提供しています。具体的には酸素・一酸化炭素用、硫化水素用、半導体材料ガス用などがあります。そのほかに日本カノマックスはビル管理のためにCO2濃度、CO濃度、温度、湿度を同時計測するタイプがあり、シックハウス症候群の対策で使われる換気率を計測する機能があります。
ハンディガス濃度計は使用目的に合わせて、各社が幅広いタイプのものを用意しています。GXリーグ向けに水素やアンモニアの普及が進めば、作業者や施設の安全管理のためにガス測定が必要となります。その際は測定ガスの種類や応答性などを考慮して適切な計測器を選択することが重要です。