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電源評価で用いる代表的な測定器について解説

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 電源評価で用いる代表的な測定器について解説

電子機器が安定して動作するためには、適切な電源評価を実施し、電源の性能や信頼性を確認することが不可欠です。電源評価を適切に行うには、精度の高い測定器を使用し、正確なデータを取得することが重要です。測定器の選定を誤ると、誤った判断につながり、設計や品質面で問題が生じる可能性もあります。本記事では、電源評価の目的や内容、電源評価に使用される代表的な測定器について解説します。

電源評価の概要

電子機器や電源装置が安定して動作することを確認するためには、適切な電源評価を行う必要があります。電源の性能は機器の信頼性や耐久性に直結するため、さまざまな試験を通じてその特性を詳細に分析します。

電源評価では、主に電圧、電流、消費電力、電力変換効率、電源の応答特性などを測定します。入力電圧の変動や負荷条件の違いによる影響を確認し、異常な電圧降下や突入電流、過電圧が発生しないかをチェックします。さまざまな試験を通して評価し、電源が定格の範囲内で安定した動作を維持できるかを評価します。

電源評価では安全性の確認も行います。短絡時の保護機能や過負荷状態での耐久性、瞬時停電時の動作回復能力などを検証します。異常時の挙動を事前に把握することで、適切な保護回路の設計や改善につなげます。

さらに、電源評価は製品が国内外の法規制や業界標準規格(IEC、UL、JISなど)に準拠するためにも必要です。規格に準拠することで、製品が市場で求められる安全基準を満たすことの証明となります。電源評価は単なる技術的な検証ではなく、製品の品質保証や安全性確保にも関わる重要なプロセスです。

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電源評価に用いる主要な測定器

電源評価では、試験内容に応じた適切な測定器を選択することが重要です。以下、代表的な測定器とその役割について解説します。

デジタルマルチメータ

デジタルマルチメータは、電圧、電流、抵抗などの基本的な電気特性を測定するための機器です。高精度な測定が可能で、定格電圧や負荷条件による変化を確認し、電源の安定性を評価する際に活用します。

デジタルマルチメータには、持ち運びが容易なハンドヘルド型と、より高精度な測定が可能なベンチトップ型があります。電源の一次側と二次側の電圧、電流データを取得し、電源の変換効率を評価する際にも使用します。

デジタルパワーメータ

デジタルパワーメータは、消費電力や皮相電力、力率などを測定する機器です。交流電源を使用する機器では、入力電圧や負荷電流が変動するため、単純な電圧、電流測定だけでは消費電力を正確に把握できません。

デジタルパワーメータを使用することで、実際に使用する電力と無効電力の比率を測定し、電源の効率を定量的に評価できます。測定値の時間変化をグラフィカルに表示するタイプもあり、高精度な測定を行うためには、測定範囲や精度を考慮した機器選定が重要です。

オシロスコープ

オシロスコープは、電圧や電流の時間変化を波形として表示する測定器で、突入電流や負荷変動時の電流電圧波形などを解析する際に使用します。ほかにも、電圧リップルの測定や、異常発生時の電圧波形の観測などに用います。

例えば、電源投入時に発生する突入電流の特性を測定し、入力回路用に選定した電解コンデンサやヒューズが適切か確認できます。突入電流は瞬間的な挙動であるため、デジタルの数値を目で追うだけでは把握できず、オシロスコープによる波形表示が有効です。また、高周波ノイズや過渡現象の解析にも役立ちます。

電子負荷装置

電子負荷装置は、電源に対して一定あるいは変動した負荷を与え、電源特性を評価するための機器です。負荷の抵抗値を柔軟にコントロールし、さまざまな負荷条件を作成できます。

電源の安定性を評価するためには、実際の使用環境に近い負荷条件を再現する必要があります。負荷を増減させた際の出力電圧や電流の変動を測定し、電源の適応力を評価できます。また、過負荷時に電源が適切に動作するかを検証するためにも使用します。

交流安定化電源

交流安定化電源は、安定した電圧と周波数を供給するための電源装置で、電源評価において試験条件を一定に保つために使用します。100Vなどの一般的な商用電源では電圧や周波数にわずかな変動があるため、試験環境を整える目的で交流安定化電源を用います。

また、製品の入力電圧範囲が定められている場合、その範囲の上限から下限までの複数の入力電圧ごとに試験を行い、範囲内での動作が問題ないことを確認します。瞬停試験や電圧変動試験では、交流安定化電源を用いて意図的に入力電圧を変化させ、機器の耐性を評価します。

電源評価には適切な測定器選定が重要

電源評価は、電子機器の安定動作を保証し、品質向上や信頼性の確保につなげるために不可欠なプロセスです。適切な測定器を使用し、正確なデータを取得することで、設計の最適化やトラブルの未然防止が可能になります。電源評価を行う際には、試験内容を十分検討した上で適切な測定器を選定し、評価体制を構築していきましょう。

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