ガス分析計はガス中に含まれる成分の濃度を測定するための分析計です。発電所、工場や環境調査などで利用されている他、大学や研究所で技術研究のために使われています。
近年は気候変動が深刻化してCO2排出量の削減が社会的なテーマとなりました。それに伴い化石燃料に代わる燃料として水素やアンモニアの利用技術が進められています。こうした爆発性、有毒性を持つガスを扱うために、応答性の速いレーザー式ガス分析計が求められるようになりました。
この記事ではレーザー式ガス分析計の概要やメカニズム、用途などを解説します。
レーザー式ガス分析計は従来の分析方法に比べて、応答性が早く高精度に濃度測定ができる特徴があります。従来方式では分析器に取り込んだ測定ガスがすべて入れ替わるのを待つ必要がありましたが、レーザー式では測定するガスに光を照射して通過するとすぐに分析結果が分かります。
分析速度の向上は、危険性のあるガスを扱う石油プラントや化学工場などの安全性改善に繋がります。例えば水素と酸素は一定比率で混ざると引火する危険があるため、リアルタイムに検知できれば事故防止できます。また化学反応を起こす研究では、反応速度の把握により技術開発の進展が期待できます。
レーザー式ガス分析計では、ガスに含まれる成分が持つ固有の光吸収特性を利用して対象成分の濃度を測定します。そのため窒素や二酸化炭素などの、異なる光吸収特性を持つ成分が混在するガスでも特定の成分濃度を測定できます。
まずレーザー式ガス分析計から照射するレーザー波長を、測定したい成分の波長に調整して放射します。照射されたレーザーはガスを通過する間に吸収されて減衰して受光部に到達します。その光の強度からガス中の成分濃度を計算します。
レーザー式ガス分析計は、従来の分析計と異なるメカニズムを利用することでいくつかの特徴を持っています。
レーザー式ガス分析計は成分ごとの光吸収特性を利用しているので、幅広い成分が分析可能です。窒素や二酸化炭素など異なる成分はそれぞれ異なる特徴があるためです。また複数の成分が混在していても、測定したい成分だけを分析できます。非常に低濃度のガスであっても測定できる点も従来方式との違いです。
レーザー分析により瞬時に成分濃度を分析できるため他方式に比べて応答性が速い特徴があります。従来の磁気式や電極方式では20~30秒の応答時間がありましたが、レーザー式ガス分析計はほぼリアルタイムです。
レーザー式ガス分析計は非接触で測定可能なため、連続使用しても部品の摩耗など経年劣化が起きません。そのためメンテナンス回数が少なく頻繁にする必要が無いため生産性やコストに貢献します。また従来方式では頻繁に必要だった校正作業が、レーザー式ガス分析計では年一回といった頻度となり作業性が向上します。
レーザー式ガス分析計の主な利用例を解説します。
石油工場では可燃性ガスであるメタンや、有害物質の硫化水素などの監視に使用されています。パイプライン内を常時リアルタイムに分析することで爆発事故を防止します。
プラント設備や工場では、環境汚染に関わる法令順守のために排ガス内の汚染物質を測定しています。微量な濃度測定が可能なレーザー式ガス分析計が役立てられています。
発電所では天然ガスなどの燃料を燃焼させる工程で、レーザー式ガス分析計で燃料ガスや酸素、一酸化炭素の濃度を測定して制御して効率的な運転を実現しています。例えば排ガス中の二酸化炭素と酸素濃度を測定して、バーナーに投入する空気量を制御します。
レーザー式ガス分析計は応答性や高精度測定により、様々な産業や分野で利用が進んでいます。さらにこれから気候変動対策を目的としたGXリーグの活動が開始されると、水素やアンモニアに関わる技術開発のために導入が進む可能性があります。安全な社会基盤や労働環境の構築に加えて、気候変動や温暖化対策を目的とした地球環境に優しい活用が期待されています。