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消費電力を測定するパワーアナライザの基礎知識

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 消費電力を測定するパワーアナライザの基礎知識

環境問題への意識や光熱費の高騰といった背景から省エネ技術や製品が求められる中で、電力を測定するパワーアナライザの需要が高まっています。パワーアナライザ自体は以前から存在する測定器ではありますが、昨今では高機能化が進み、非常に利便性の高い機種がメーカーから提供されるようになりました。本記事では、パワーアナライザの基礎知識として、概要や仕組み、用途などをまとめて解説します。

パワーアナライザとは?

パワーアナライザは、電子機器で発生する電力を測定する装置です。メーカーによっては電源アナライザと呼ぶこともあります。パワーアナライザは消費電力や待機電力を測定する電力計(パワーメータ)の機能をベースにしつつ、さまざまな機能を備えた機種が提供されています。

パワーアナライザを使って電力を測定することで、エネルギーの変換効率を分析したり、電子機器の異常を検知したりできます。単純な電力計とは異なり、電圧・電流・有効電力・無効電力といったさまざまなパラメータを測定できるのが、パワーアナライザの強みの一つです。

パワーアナライザの原理と種類

パワーアナライザは電子機器で発生する電力を測定しますが、直流(DC)機器と交流(AC)機器では少し計算式が異なります。直流の場合、測定した電圧(V=ボルト)と電流(A=アンペア)を掛け合わせると電力(W=ボルト)になり、これだけで消費電力などを計算可能です。一方、交流の場合は電流値が一定ではないため、交流周波数のサイクルを検出して平均を出し、実効値を計算しなければなりません。交流では、直流相当の値を算出するために2乗平均平方根で実効値を表現します。

上記は基本となる電力測定の方法ですが、昨今のパワーアナライザではオシロスコープの機能を統合したことで電力と波形の両方を1台で測定したり、位相角・力率・電力積算値・電流積算値・周波数などのさまざまなパラメータを同時に測定したりできます。また、電力測定の精度自体も向上しており、高価格帯の機種であれば電力基本確度±0.05%程度の測定や100kHz以上や1Hz以下を含む周波数の測定も可能です。

パワーアナライザは持ち運びが可能な小型の機種から高度な測定を行える機種までさまざまな種類があるため、測定対象や目的に応じて適切なモノを選定する必要があります。日本では日置電機、横河計測、岩崎通信機、共立電気計器などのメーカーがパワーアナライザを開発・販売していますが、各メーカーごとに特色があるため比較検討するとよいでしょう。

消費電力を測定するパワーアナライザの基礎知識 挿絵

パワーアナライザの用途

パワーアナライザを活用すれば、電子機器の電力に関するさまざまな情報を素早く、簡単に測定できます。昨今では環境問題への意識や光熱費の高騰といった背景から電力の重要性が増しているため、電力を使って稼働する電子機器の管理が重視されるようになりました。現在では、パワーアナライザは次のような目的で使用されています。

・電子機器の性能やエネルギー効率の向上
・国内外のさまざまな規格に準拠しているかの検証
・電子機器および作業者に対しての安全性向上

具体的には、電気自動車(EV)や太陽光発電・風力発電といった再生可能エネルギー、空調機器、産業用機器などの研究開発においてよく活用されています。特に、電気自動車で重要なモータやインバータの制御状態を評価するために活用されるシーンが増えており、エネルギー効率を向上させることで航続距離の延長が目指されています。

また、工場などで消費される電力を測定し、ムダの削減や最適化によってより少ない電力で生産ラインを安定稼働させる取り組みも見られるようになりました。具体的には、生産設備の消費電力をリアルタイムに監視してムダなエネルギー消費を削減する、電力消費量が多い時間帯から少ない時間帯に稼働時間をずらしてピーク時電力を抑える、といった手法がとられています。

省エネとパワーアナライザは密接に関わる

昨今では、パワーアナライザは単に電力を測定する以上に重要な役割を担いつつあります。今後は環境問題への関心がさらに高まっていくと考えられるため、パワーアナライザの需要も高まっていくことでしょう。省エネと密接に関わるパワーアナライザについて、興味を持っていただければ幸いです。

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