高精度で応答性の優れた流体制御は、工業用、医療用、環境用などで製品品質や安全性に貢献する必要な技術です。これからGXが推進されると水素やアンモニアの利用が増え、流量制御は爆発や中毒事故を防ぐために重要なポイントと考えられています。
マスフローコントローラは水素などさまざまな成分の流体を高精度で制御できるため、今後用途の拡大が予想されています。本記事ではマスフローコントローラの基本的な概要、メカニズム、使用方法、メーカー情報などをご紹介します。
マスフローコントローラは、配管内の流体の質量を計測して流量制御する機器です。高精度で安定した測定が特徴で、半導体や液晶パネル製造や燃料電池、バイオ、環境分野、プラント設備など幅広い分野で活用されています。
流量計測にはマスフローコントローラのような質量を計測する方法以外に、体積を計測する方法があります。体積計測は測定する流体の温度や圧力などで影響を受けるため補正する必要があります。一方、質量計測では温度や圧力が変化しても影響がないため、補正が不要で高精度の測定が可能です。
マスフローコントローラはさまざまな種類の流体の流量を計測する機能があります。例えば計測する流体が窒素や二酸化炭素、水素など成分が異なる場合は、成分に応じた補正係数を用いて正しい流量を表示します。
マスフローコントローラは大きく流量センサと流量制御バルブから構成されています。
まず配管に取り付けられたマスフローコントローラ内を流体が流れると、内部のバイパス流路で流量センサが流量を計測し、それを増幅回路・補正回路で処理した数値を外部出力します。流量センサによく使用されるのは熱式センサで、ガス流量に応じて抵抗体が発熱して温度差が生じます。
次に外部から設定された流量設定値と一致するように、流量制御バルブの開度を調整します。流量制御バルブにはピエゾ式、ソレノイド式、サーマル式の3種類があります。それぞれバルブのアクチュエータをPID(比例・積分・微分)制御で微調整して、高精度で安定した流量制御をすることが可能です。
マスフローコントローラの使い方の手順は以下の通りです。それぞれ説明します。
1.配管接続
2.電気配線接続
3.電源入力してリークチェック
4.流量制御確認
マスフローコントローラは本体の接続口径が型式によって異なり、計測部の配管サイズに合わせたものを選定します。1/16インチや1/8インチ、3/8インチなど選択した取り付け部と配管を継ぎ手で接続します。
マスフローコントローラの電源回路や入出力回路で必要な配線を接続します。電源に必要な電圧や、入出力信号ごとのピン番号に注意して間違えないように接続します。
マスフローコントローラに電源を入力した後、実際に流体を流します。配管接続部で漏れが発生していないか、一定の圧力をかけた状態で放置して圧力低下が起きないか確認します。圧力計がない場合などは、継ぎ手に石鹸水などを吹きかけ泡立ちがないか目視でチェックします。
リークチェックが問題なければ、マスフローコントローラが設定した流量で制御できるか確認します。マスフローコントローラの設定値を入力して、流体を流した時に安定して設定値通り流れるかをチェックします。
マスフローコントローラの代表的なメーカーは以下の通りです。
株式会社堀場製作所は自動車用、環境用、医療用など幅広い業種にユーザーを持つ計測機器メーカーです。同社のマスフローコントローラは腐食性ガスや可燃性ガスなど特殊なガスにも対応していて多くの用途で活用が可能です。
アズビル株式会社は圧力計や流量計など、流体計測機器を幅広くラインアップしている計測器メーカーです。小型タイプや液晶画面付きタイプなど製造現場で使いやすいマスフローコントローラを提供しています。
株式会社フジキンは半導体の製造や、宇宙産業、水素関連など厳しい条件下で使われるバルブなどの流体制御機器メーカーです。高精度で応答性の速いマスフローコントローラを用途に応じて幅広く展開しています。
株式会社リンテックは滋賀県に本社工場を持つマスフローコントローラメーカーです。同社のマスフローコントローラは、流量センサの温度上昇を防ぐ低温センシング構造を採用しており、熱ダメージを防止して長寿命化しています。また世界に先駆けて熱式液体マスフローコントローラを開発しました。
マスフローコントローラは高精度な流量測定が求められるさまざまな業種・用途で利用されています。半導体の製造や燃料電池、バイオなど注目されている業界での活用例も多数あり、現在も用途の拡大や高性能化に向けてメーカーによる技術開発が進められています。
今後は2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、水素やアンモニアの社会利用が求められています。そうなるとマスフローコントローラはさらに、企業や研究機関の実証試験で必要とされる可能性があります。