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米国の半導体後工程でカギを握るアムコー

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 米国の半導体後工程でカギを握るアムコー

 世界中で重要性が高まる半導体市場では、自社で製造する半導体の設計・製造・販売など、全工程を自社で行うIDM(Integrated Device Manufacturer)といった垂直統合型デバイスメーカー以外にもさまざまな業種があり、その中の一つとして半導体後工程(組立やテスト)の受託製造を行うOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)という業種があります。そしてそのOSATの中で台湾ASEに次ぐ業界第2位のポジションにある企業が、アムコー・テクノロジー(米アリゾナ州テンピ)です。

 同社の源流には韓国の企業があり、アムコー(Amkor)の社名はアメリカ(America)と韓国(Korea)を組み合わせたものでもあります。事業規模は63億ドル(2024年12月期実績)で、現在11カ国に20カ所の製造拠点を構え3万人を超える従業員を擁します。

アリゾナで大規模工場を整備中

 アムコーは2023年12月に、米アリゾナ州ペオリアに先端パッケージおよびテスト施設を建設すると発表しました。総投資額は約20億ドルを見込み、約2000人を雇用する計画です。新工場の主要顧客の1社に米アップルが名を連ね、アップルが半導体製造を委託するTSMCが2024年末から稼働させたアリゾナ工場が前工程を担当し、アムコーのアリゾナ新工場が後工程を担います。

 アムコーは現地に約55万エーカーの用地を取得し、50万平方フィートを超えるクリーンルームを備えた最先端工場を建設する計画で、早ければ2026~2027年の稼働を目指しています。同工場が稼働すれば、OSATによる米国最大の後工程拠点となる見通しです。米国では、半導体の研究開発や製造を支援するCHIPS法が2022年に制定され、アムコーのアリゾナ新工場もその支援を受けています。その規模感を見ると、アムコーが米国の半導体後工程でカギを握る存在となることは間違いありません。

欧州や日本でも体制を強化

 アムコーは欧州での事業体制も強化しており、その一つとして、独インフィニオンテクノロジーズと複数年にわたる長期パートナーシップを2024年に締結しました。その一環として両社は、アムコーのポルトガルの製造拠点でパッケージングとテストの専用センターを運営することで合意しており、運営開始は2025年前半を予定しています。アムコーはポルトガルの施設を拡大しており、生産ラインを稼働させ、専用のクリーンルームスペースを提供。一方、インフィニオンはエンジニアリングと開発サポートを行うチームを派遣する予定です。この協業により、欧州の半導体サプライチェーンはより強化され、特に自動車および産業機器業界の顧客への安定供給に貢献したい考えです。

 日本においては、日系OSAT企業であるジェイデバイス(現・アムコー・テクノロジー・ジャパン)を2016年に完全子会社化したことを機に事業を拡大しています。ジェイデバイスは、国内のOSAT企業である仲谷マイクロデバイスが前身。2009年に東芝およびアムコーと資本提携を結んだのち、東芝のLSI後工程部門などを買収しました。設立当初からアムコーはジェイデバイスに対して30%出資する大株主で、グループ企業の一つとして位置付けられていました。2012年には富士通、2013年にルネサスの後工程拠点を次々と買収し、国内最大のOSAT企業に成長。アムコーは2013年に第三者割当増資のかたちで、当初の30%から60%に出資比率を引き上げ、さらに2015年1月に東芝から株式の買い増しを行い、67.5%にまで高めました。そして2016年に100%子会社化しました。

 こうした中、直近の動きとして、福岡市内に国内初の研究開発拠点となる「R&Dセンター」を設立。拠点の場所は、福岡市博多区中洲中島町1-3 福岡Kスクエア4階(1063㎡)。関連製品の組み立て、解析、分析などが行える装置やクリーンルームなどを導入し、必要に応じて順次拡張することも検討します。センターでは、半導体先端パッケージング技術の研究開発ならびに先端半導体プロセスの研究、量産に貢献可能な技術開発、材料に関する基礎開発および新規材料用設備の検討などを行います。また、アムコーグループ内で韓国のR&Dチームと連携し、フィリピンやマレーシアなどアムコーが有する工場との開発分野におけるハブとしての役割などが期待されています。

 旧ジェイデバイスの生産拠点などに所属している開発人員の集約も進めながら、当面は50人体制を目指して増員。車載用パワーモジュールやイメージセンサーのパッケージングなど国内需要の高い製品群の開発を中心に展開しています。韓国の開発拠点とはすみ分けを図り、効率的な開発体制を構築する方針です。日本には後工程材料・装置の有力企業が集積しており、日本の強みを活かした次世代パッケージ開発の拠点として育成します。このように、アムコーは米国、欧州、日本で展開を強化しており、重要性が増す後工程にて、存在感をさらに増していくことになるでしょう。

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