ノーコーディング・ローコーディングサービスが2020年頃から注目を集めています。これらのサービスは、高度なスキルを持たない人でもITツールの開発ができるなど、メリットが大きいものです。企業が自社の業務をIT化してDXを推進する上でも、ノーコーディング・ローコーディングサービスが役に立つと考えられています。
本記事では、ノーコーディング・ローコーディングサービスとは何か?という紹介に加えて、主要なサービスの特長や、DXとの関係についても解説いたします。
ノーコーディングとは、プログラミングをせずにITツールを開発することです。通常、システムやアプリケーションを作るには、専門的なスキルを持ったエンジニアがプログラムを書かなければなりませんでした。しかし、ノーコーディングサービスの場合は、あらかじめ用意された機能別のパーツをドラッグ&ドロップしてパズルのように組み立てるだけで、システムやアプリを作り上げることができます。
一方、ローコーディングとは、少しのプログラミングのみでITツールを開発することです。ノーコーディングのようにプログラミングが不要とはいかないまでも、簡単なプログラミングができればシステムやアプリを開発できます。また、あらかじめ用意された機能しか使えないノーコーディングに比べると、プログラミングによって任意の機能を付与しやすいという特長があります。
ノーコーディング・ローコーディングサービスには、次のような優れた特長があります。
現在、ITツールの需要がますます高まっている一方で、世界的にエンジニアが不足しています。そのような背景から、ノーコーディング・ローコーディングサービスが注目を集めているのです。
初心者でも比較的使いやすいサービスをご紹介します。2021年現在、機能性が高く、企業の業務効率化に役立つノーコーディング・ローコーディングサービスが続々と登場しています。
PowerAppsは、Microsoftが提供するローコーディングサービスです。PowerPointのような直感的な操作と、Excelのような関数を入力するだけでアプリを作成できます。MicrosoftのOffice製品を使ったことのある人であれば、操作感も似ており使いやすいです。用途別の豊富なテンプレートが用意されているので、開発の手間も軽減できます。
Zapierは、自動化したワークフローを生み出せるノーコーディングサービスです。2,000以上のアプリに対応しており、それらを連携させて特定の条件下における業務を自動化できます。例えば、メールアプリのGmailと、オンラインストレージサービスのDropboxを連携し、メールが届いたら自動的にファイルを保存するといったような細かい業務の効率化に役立ちます。
Claris FileMakerは、自社に合わせたプロ級のカスタムアプリを開発できるローコーディングサービスです。初心者でも直感的に操作ができ、実現したいことを英語でなく日本語で書いていくことができます。特殊な業務であっても、自分でカスタマイズしながら開発することで、最適なITツールを作れるのが特長です。また、拡張性が高く、IoTとの連携といった高度なシステムを構築することもできます。
ノーコーディング・ローコーディングは、企業がDXを推進するための手助けになることが期待されています。
企業におけるDXとは、IT技術を活用して組織やビジネスモデルを変革することです。DXを実現するためには、業務を効率化するためのシステムやアプリといったITツールの活用が不可欠です。しかし、やみくもにITツールを導入してしまうと、業務フローの見直しが発生したりして現場が混乱し、かえって効率が悪くなる危険性があります。
DXをスムーズに進めるためには、自社の業務プロセスにあったITツールを開発することが求められますが、外注しているとコストも時間もかかります。特に、製造業は企業ごとに独自の業務プロセスが多い傾向にあります。場合によっては、同じ企業内でも、部署が変われば全く違う業務プロセスになっていることもあるでしょう。そのような状況では、希望する要件を整理してITツールの開発を外注するのは大変なことです。
そこで考えておきたいのが、ノーコーディング・ローコーディングサービスを活用して、現状の業務プロセスを理解している人自身が最適なITツールを開発することです。現場で自らITツールを開発して効率化することで、DXをスムーズに進めていけます。
大規模なシステムやアプリをノーコーディング・ローコーディングサービスで開発することは難しいですが、簡単なものであれば十分に開発ができます。例えば、紙の帳票への記録・管理をデジタル化する、電話で問い合わせしなくてもデータベースから情報を検索可能にする、といったアナログな業務の改善によって、生産性は向上するでしょう。
アジャイル開発という開発手法の考え方が、ノーコーディング・ローコーディングサービスを使ったDX推進には最適です。
アジャイル開発とは、小さな機能単位での設計・開発・テストを繰り返して徐々に完成に近づけていく手法のことです。アジャイルは「素早い」「機敏な」という意味の言葉で、文字通り素早く開発できるだけでなく、途中で仕様変更がしやすいという特長があります。
ノーコーディング・ローコーディングであれば、ITツールの開発にかける時間もコストも抑えられます。そのため、最初はざっくり作って実際に運用し、現場の人の声を聞きながら徐々に改善していくというアジャイル開発が適用しやすいです。
また現場の人から見ても、ITツールによって徐々に業務が効率化していく実感が得られることもできます。特に、製造業ではITに疎い人が多い現場でも、ITツールの機能を絞っていれば、比較的使ってもらいやすいでしょう。
アジャイル開発は、人材開発の観点からもメリットがあります。製造業にとっても重要な改善思考を重視した開発手法なので、自社の改善力を高めることにつながります。また、ノーコーディング・ローコーディング学習を行うことで、製造業に不足しているIT人材を育てることができるでしょう。
このように、企業のDX推進に効果的なノーコーディング・ローコーディングサービスではありますが、次のような注意点もあります。
ノーコーディング・ローコーディングのメリットやデメリットを正しく理解した上で、自社のDX推進のために効果的に活用することが必要です。
ノーコーディング・ローコーディングサービスを使いこなすことができれば、業務の効率化によるDX推進に役立ちます。各業界での活用実績や、新たなサービスが次々に登場しています。
また、簡単な機能であれば無料で試せるサービスが数多くあります。まずは自社の業務効率化のために活用できないか、試してみるのがDX推進の第一歩となります。