サービスソリューション事業本部 営業統括部 第二営業部 副部長 島田 雄次氏
長期化するコロナ禍の中、テレワークが定着するなど新しい生活様式に変わりつつあります。withコロナの時代を迎え、安心して過ごせる環境作りが求められるようになりました。コロナ禍に発生するさまざまな課題を解決するには、ICTをどのように活用すればよいのでしょうか。日本システムウエア株式会社 サービスソリューション事業本部 営業統括部 第二営業部の島田 雄次氏にお話を伺いました。
日本システムウエア社は、1966年に株式会社事務計算センターとして設立されました。ソフトウエア開発やシステム運用に加えて1978年からはデバイス系の開発にも携わっています。
2013年からは日本ではまだ普及していなかったIoT事業に進出。デバイス系の開発とシステム運用の知見を活かしIoTのパイオニアとして事業を展開しています。
2010年代から多くの企業がICTを活用してビジネスに革新を起こす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組むようになりました。そこで同社では「DXFIRST」を掲げ、顧客のデジタル革新の支援に力を入れています。
現在は、ニューノーマルの時代に向けて各企業のDXの取り組みが活発になったと島田氏は語ります。ただDXという概念が非常に幅広く、漠然としたイメージで相談に来る企業も多いそうです。「『とにかくIoTを取り入れてDXを実現したい』といったようなお客様が多いですね」(島田氏)。その場合にはまずはDXで実現したいことを明確にした上で、IoTやAIといった技術を選択することが大切だと島田氏は解説します。
DXの取り組みによって、情報システム部門はICTでビジネスを革新するという役割の比重が高くなっていますが、一方で増え続けるデバイスの管理に追われているのも実情です。DXではビジネスの革新に取り組む「攻めのDX」と業務の効率化を図る「守りのDX」に分けて語られますが、同社は守りのDXは徹底的にアウトソースすることを提案しています。「情報システム部門は攻めのDXに専念し、システム管理などの守りのDXについてはアウトソースするべき、というのが当社の考えです」(島田氏)。
そこで同社ではPC運用のアウトソースに力を入れています。このサービスではPC展開時にまとめてキッティングをするだけではなく、故障に備えて予備機をお預かりし、必要に応じてキッティングし、提供しています。PCについてはレンタルでも提供が可能です。PCをサブスクリプション化して、ソフトウエアのライセンスと併せてサービスとして管理することで、情報システム部門などの作業負荷を低減していくのが効果的だと島田氏は語ります。「同じくDaaS(Device as a Service)を提唱しているオリックス・レンテック社と協業してサービス展開を進めています」(島田氏)。
PCの調達からキッティング、配送、テクニカルサポート、返却まで一括でアウトソース
コロナ禍の影響で、自宅用に利用するPCの調達や自宅の利用者に対するテクニカルサポートの問題があると島田氏は指摘します。「情報システム部門の方が出社しなければならない仕事があるというのが一番の問題です。調達やサポートをアウトソースできれば、出社する回数を減らすことができます」(島田氏)。
コロナ禍での新たなオフィス環境作りで注目されているのが、同社が展開する環境監視ソリューション「Around Now!」です。もともとは熱中症やインフルエンザ対策として開発されたIoTソリューションで、温度、湿度を検知するセンサーから情報を収集し、閾値を超える場合にPCやスマートフォンに通知します。温度湿度を適度に保つことで、熱中症やインフルエンザなどに感染しにくい環境を作ります。
IoTデバイスのデータをクラウドに収集することで「環境の見える化」を実現
標準セットでは温度・湿度のみを検知しますが、オプションではCO2、照度、UV、気圧、騒音といった要素が検知可能なため、幅広い用途に対応可能です。「ある大型書店では、広い店舗のため場所によって暑かったり寒かったり、あるいは明るかったり暗かったりということが発生します。そのためどの場所でも快適な空間にするために活用いただいています」(島田氏)。
Around Now!は新型コロナウイルス対策としても活用できます。最近ではコロナ禍によりソーシャルディスタンスが推奨され、オフィス環境だけでなく施設や店舗など人が集まる場所の環境作りがより重視されるようになりました。新型コロナウイルスには、「人の密集」「低湿度」「高CO2濃度(空気の滞留)」という感染しやすい条件があります。Around Now!はこのような状況をセンサーで検知し可視化することで、環境改善の指標とすることが可能です。
今後は感染に気を付けながら日常を取り戻していくことになるでしょう。その中で、安全に過ごせる場所の価値が高まると考えられます。「今はどのお店でもアルコール消毒や飛沫飛散防止のパーテーションといった感染対策を取り入れており、それだけで差別化はできません。Around Now!を導入することで、ワンランク上の感染対策を訴求し、店舗や施設のブランディングが可能になります」(島田氏)。
アフターコロナの時代に、展示会やスポーツイベントにおいて、ソーシャルディスタンスを保てる環境を作る事の重要性を島田氏は指摘しています。「展示会やイベントも苦戦している状況だと思います。来場者に安心を与える環境を作れるように貢献したいと考えています」(島田氏)。
1デバイス月額3000円~(環境構築12万円)というリーズナブルな価格でスタートできるため、気軽にお試しができるのも魅力です。「DXのPoC(実証実験)にもご活用いただいています。」(島田氏)。
同社では、社内における濃厚接触者の特定を支援する「無線LAN位置測位ソリューション」も展開しています。Wi-Fi環境の構築を提供する際に、顧客の「せっかく環境を作ったので何か活用できないか」という要望から生まれました。
このサービスでは、社員の持つPCやスマートフォンのMACアドレスをWi-FiやBluetoothで検知し、滞在エリアと滞在日時の履歴を蓄積します。Wi-Fiのアクセスポイントや必要に応じて設置するBluetoothのデバイスをクラウドサービスと連携することで、社員が感染してしまった場合に、行動履歴から濃厚接触者を特定できます。「1メートル~5メートルほどの誤差は出てしまいますが、おおよそ社員がいた場所がわかります」(島田氏)。
コントローラーが検知したデバイスのMACアドレスにより、近くにいた人を特定
またフリーアドレス対策への活用も考えられます。特に最近ではテレワークが普及したためオフィスを縮小し、フリーアドレスに切り替えるケースも珍しくありません。その場合、誰がどこにいるかがわかりにくくなりますが、無線LAN位置測位ソリューションを活用すれば、その人がいる場所を特定できます。「将来的にはグループウェアと連携して誰がどこにいるのかがマップでわかるようにすることを検討中です」(島田氏)。
そしてwithコロナの時代においては人の動きを分析できるツールにもなると島田氏は語ります。「ある一定の基準以上の人が集まるとどういった現象が起きるといった分析を行い、感染防止対策だけでなく、新たなビジネス創造への気づきになると考えています」(島田氏)。
今後、同社はアフターコロナに向けて付加価値の高いサービスを検討していく予定です。「PC運用のアウトソースについても、テレワークを効果的に行える付加価値をつけていくためにラインアップを広げていきたいと考えています」(島田氏)。
テレワークにまつわる直近の課題としては、PCの棚卸です。今までは社内を見回ればチェックができましたが、オフィスにいる人の方が少ない状況でどのように棚卸をするかが問題となっています。また、自宅用に社内で使うPCとは別のPCを持ち帰っている、つまり2台持ちの社員も増えてきています。「新たな管理手法をシステムとして提案し、PC運用を完全な形でアウトソースするサービスに発展していければと考えています」(島田氏)。
今後もDXの取り組みとして「攻め」「守り」双方のソリューションを提供していきたいと島田氏は語ります。「攻めの部分では新型コロナウイルスと戦っていくためのソリューションを、守りの部分に関してはwithコロナ時代に合ったシステムの運用を効率化するソリューションを提供し、企業の総合的なDXに貢献していきたいですね」と島田氏は締めくくりました。